「それ、フリーランスで良くない?」起業家が絶対に越えるべき”一人稼ぎの壁”

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • これから起業を考えていて、どんな事業を始めるべきか悩んでいる方
  • 個人事業主としてある程度稼げるようになったけど、次のステップが見えない方
  • 小さな会社を経営しているが、結局自分だけが忙しく、事業が大きくならないと感じている方
  • 「自由になりたい」と思って独立したのに、逆に時間に追われ、孤独を感じている方
  • 「起業」という言葉の、本当の意味と可能性について深く考えたい方

「起業して、自由な働き方を手に入れよう!」「SNSコンサルで月収100万円!」。最近、こんな景気の良い話をよく見かけますよね。個人のスキルを活かして、会社に縛られずに稼ぐ。それは本当に素晴らしいことですし、一つの理想的な生き方だと思います。

でも、あえて少し意地悪な質問をさせてください。その働き方、本当に「起業」と呼ぶ必要があるのでしょうか?「それ、優秀なフリーランスで良くないですか?」と。

もしあなたが、会社を辞め、リスクを取り、自分の人生を賭けて「起業」という道を選ぶのであれば、ただ一人で稼げるようになるだけでは、あまりにもったいない。せっかくなら、あなた一人では決して成し遂げられないこと、仲間と一緒だからこそ実現できる、大きな夢を描いてみませんか?この記事では、多くの起業家が陥る「一人稼ぎの壁」の正体と、それを乗り越え、本当の意味で事業をスケールさせるための考え方について、踏み込んでお話しします。

警告:あなたの事業は「高給な自営業」で終わるかもしれない

まず、厳しい現実からお話しします。中小企業庁が発行する「中小企業白書」のデータを見ると、日本の企業の生存率は、設立から5年で約80%と比較的高いですが、10年後には約70%、20年後には約50%と、年々厳しくなっていきます。特に、個人事業主の延長線上で事業を行っているスモールビジネスは、常に不安定さと隣り合わせです。

その最大の理由は、事業構造が「売上 = あなたの労働時間 × あなたの単価」という極めてシンプルな方程式から抜け出せていないからです。あなたがWebデザイナーなら、あなたが手を動かした分しか売上は立ちません。あなたがコンサルタントなら、あなたが話した時間だけが収益になります。

これは、一見すると自分の頑張りが直接収入に反映される、やりがいのある働き方に見えます。しかし、裏を返せば、あなたが病気で倒れたら?事故で怪我をしたら?その瞬間に、売上はゼロになります。家族との時間や、新しいことを学ぶ時間を犠牲にして、ひたすら働き続けないと収入が維持できない。それは、果たして本当に「自由」なのでしょうか。それは会社員という安定を捨てて手に入れた、「高給で、責任だけが重い、不安定な自営業」という状態なのかもしれません。

なぜ、あえて「組織」を作るのか?一人では決して見られない景色

「じゃあ、どうすればいいんだ?」と思いますよね。その答えが、「組織を作ること」です。人を雇い、チームで事業を行うことには、一人で働くのとは比較にならない、3つの強力な「レバレッジ(てこの原理)」が働きます。

1. 時間のレバレッジ

あなた一人の持ち時間は、1日24時間。これは、どんなにお金があっても増やすことはできません。しかし、もしあなたに4人の仲間がいれば、会社として1日に使える時間は、あなたの24時間 + 仲間4人の96時間 = 合計120時間になります。たった5人のチームで、一人の5倍の時間を事業に投下できるのです。これにより、一人では到底無理だった規模のプロジェクトや、複数の事業を同時に動かすことが可能になります。

2. 知恵のレバレッジ

あなたが得意なことは何ですか?営業、開発、デザイン?どんなに優秀な人でも、全ての分野で一流であることは不可能です。組織を作るということは、あなたの「できないこと」を、それを「得意な人」に任せられるということです。エンジニアとマーケター、デザイナーと営業担当。異なる才能や経験を持つ人間が集まることで、知恵が掛け合わされます。イノベーションの多くは、こうした「知と知の新しい組み合わせ」から生まれます。あなた一人では絶対に思いつかなかったような、画期的なアイデアが、仲間との雑談の中から生まれる。これは、組織ならではの最高の興奮です。

3. 資本のレバレッジ

個人事業主のままでは、金融機関からの融資や、投資家からの出資を受けるのは非常に困難です。しかし、法人格を持つ「組織」になることで、社会的信用度は格段に上がります。これにより、外部から大きな資金を調達し、大胆な挑戦ができるようになります。自己資金だけでは10年かかるようなことを、レバレッジを効かせて1年で実現する。これも、組織だからこそ可能なスケールのさせ方です。

「組織でしかできない事業」の3つの着眼点

「組織のメリットはわかった。でも、具体的にどんな事業をやればいいんだ?」という声が聞こえてきそうです。ここでは、あなたが目指すべき「組織でしかできない事業」の具体的な3つの方向性を示します。

1. 労働集約からの脱却モデル

これは、特定の個人のスキルに依存するのではなく、「仕組み」や「システム」で価値を提供する事業です。例えば、あなたが超一流のコンサルタントだとしても、あなたの体は一つです。そこで、あなたのコンサルティングノウハウを徹底的にマニュアル化・体系化し、それを使って他のコンサルタントを育成する。あるいは、そのノウハウをオンライン講座やSaaSツールにして、多くの企業に安価で提供する。このように、「あなたがいなくても価値が提供できる仕組み」を作ること。これこそが、労働集約からの脱却であり、スケールする事業の第一歩です。

2. 複数の専門性の掛け算モデル

これは、一つの分野の専門家では解決できない、複雑な課題に取り組む事業です。例えば、「農業」の知識を持つ人と、「ドローン技術」を持つ人、「AIによる画像解析」の専門家が集まれば、「AIドローンによる農作物の生育状況自動診断サービス」といった新しい事業が生まれます。医療×IT、教育×VR、金融×ブロックチェーン。このように、一人では持ち得ない複数の専門性を掛け合わせることで、これまで誰も解決できなかった問題にアプローチし、圧倒的な競争優位性を築くことができます。

3. 社会的インパクト追求モデル

これは、短期的な個人の利益を追い求めるのではなく、より大きな社会課題の解決を目指す事業です。例えば、フードロス問題、地方の過疎化、環境破壊など。これらの壮大なテーマは、到底一人で解決できるものではありません。しかし、「この社会課題を本気で解決したい」という熱いビジョンは、多くの人の共感を呼び、優秀な仲間や、応援してくれるファン、そして資金を集める強力な磁石になります。自分の人生を賭けてでも成し遂げたい、と思えるほどの社会的な大義。これこそが、組織を一つにする最強のエンジンです。

最初の仲間集め。「ビジョン」という名の、たった一つの武器

組織を作ると決めたとき、最初にぶつかる壁が「採用」です。お金も、知名度も、実績もない。そんなあなたの会社に、一体誰が来てくれるのでしょうか。高い給料を払うことも、豪華なオフィスを用意することもできません。

そんな時に、あなたが持てる武器は、たった一つです。それは、熱く、明確な「ビジョン」。

「私たちは、何のためにこの事業をやるのか」 「この事業を通じて、どんな世界を実現したいのか」 「なぜ、それがあなたとでなければならないのか」

給料や待遇といった条件で惹きつけられた人は、より良い条件の会社が現れれば、すぐに去っていきます。しかし、あなたの語る未来の物語、その「ビジョン」に心を揺さぶられ、共感してくれた人は、簡単には離れません。彼らは単なる「従業員」ではなく、あなたの夢を共に実現するための「共同創業者」になってくれます。最初の仲間を探すときは、スキルや経歴を見る前に、まず、あなたのビジョンを熱狂的に信じてくれるかどうか。その一点に集中してください。

社長の仕事は「やらないこと」を決めること

無事に仲間が集まり、組織が動き出した後、多くの創業者が「プレイングマネージャーの罠」に陥ります。自分が一番、営業もできるし、開発も速い。だから、ついつい自分で全部やってしまう。メンバーに任せるよりも、自分でやった方が早いから、と仕事を抱え込んでしまうのです。

その気持ちは痛いほどわかります。しかし、それでは何のために組織を作ったのかわかりません。事業はあなたの能力の限界を超えられず、あなたは永遠に現場のプレイヤーから抜け出せません。

組織を作った社長の本当の仕事とは何でしょうか?それは、現場で手を動かすことではありません。「ビジョンを示し、その実現のための戦略を立て、必要な資金を調達し、最高の仲間を集め、彼らが120%の力を発揮できる環境を整えること」。そして何より、「自分がいなくても、事業が成長し続ける仕組みを作ること」です。

そのためには、勇気を持って、メンバーを信じて仕事を任せる「権限移譲」が不可欠です。自分が「やらないこと」を決め、現場から意図的に離れる覚悟が必要です。それは、自分の存在価値がなくなるような恐怖を感じるかもしれません。しかし、その恐怖を乗り越えた先にしか、事業の本当の成長はないのです。

フリーランスとして、個人のスキルを極め、自由に生きていく。それも素晴らしい人生です。しかし、もしあなたが「起業」という、もっとエキサイティングで、困難で、しかし大きな可能性を秘めた道を選ぶのなら。ぜひ、あなた一人では決して見られない景色を見るために、「組織」という船を動かす船長になってみてください。その航海は、苦難の連続かもしれません。しかし、仲間と共に嵐を乗り越え、新しい大陸を発見したときの感動は、何物にも代えがたい、人生最高の報酬になるはずです。

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