
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 社員からのIT関連の問い合わせ対応に追われ、本来の戦略的な業務が全くできない方
- 「PCの調子が悪い」「パスワード忘れた」など、同じ質問に何度も答えるのに疲弊している方
- 社内にITサポートの正式な窓口がなく、個人の善意でなんとか回っている状況を変えたい方
- これから社内ヘルプデスクの立ち上げを任されたが、何から手をつけていいか分からない全ての方
「〇〇さん、ちょっといいですか?」 あなたの背後から聞こえる、その声。その瞬間、集中していた思考は中断され、あなたはまた、自分の時間を奪われる。
「パスワードを忘れちゃって…」 「このExcelの使い方が分からなくて…」 「なんか、PCの動きが遅いんだけど…」
親切心で対応すればするほど、感謝されるどころか「やって当たり前」だと思われ、自分の仕事はどんどん後回しになる。この「ありがとう」と言われにくい無限ループこそが、私たち情報システム部門や、ITに詳しい総務担当者が陥る“地獄”の正体です。
今日は、その地獄に終止符を打ち、あなたを本来やるべき戦略的な仕事に集中させるための、綺麗事一切なし、超実践的な「社内ヘルプデスク」立ち上げの3ステップをお話しします。
ステップ1:「何でも屋」を卒業しろ。守備範囲(SLA)を“冷徹”に定義する
あなたのヘルプデスクが失敗する最大の原因。それは、あなたが優しすぎることです。 「困ってるみたいだから…」と、何でもかんでも受け付けてしまう。これが、全ての元凶。
最初にやるべきは、「私たちは、何に、どこまで対応するのか」という守備範囲、つまり「SLA(サービスレベルアグリーメント)」を、“冷徹”に定義し、明文化することです。
例えば、
・対応範囲: 会社貸与のPCと、社内システムに関する問い合わせのみ。私物のスマホや、自宅のWi-Fi設定は対象外。
・対応時間: 平日9:00~17:00。時間外の問い合わせは、翌営業日の対応とする。
・目標回答時間: 一次回答は受付から8営業時間以内。
これを決め、全社員に「これ以外は対応しません」と宣言するんです。 最初は「冷たい」「不親切だ」と反発があるかもしれません。しかし、「これは範囲外です」と“断る勇気”を持つことこそが、ヘルプデスクの品質を維持し、担当者であるあなたが疲弊しないための、最も重要な第一歩なんです。
ステップ2:「電話」と「口頭」を禁止しろ。問い合わせ窓口を“一本化”する
あなたの集中力を最も破壊する「『ちょっといいですか?』攻撃」や、内線電話での問い合わせ。これを、今日から原則「禁止」にしてください。
なぜなら、これらの方法は、問い合わせの履歴が一切残らないから。誰が、いつ、どんな問題で困り、どう解決したのかが、完全にブラックボックス化してしまう。その結果、同じような質問に、あなたが何度も何度も答える羽目になるんです。
ヘルプデスクへの問い合わせ方法は、ただ一つに「一本化」するべきです。 難しく考える必要はありません。最初は無料の「Googleフォーム」で十分。慣れてきたら、「Jira Service Management」や「Backlog」のような、本格的なチケット管理システムの導入を検討しましょう。
窓口を一本化すれば、「誰がボールを持っているか」が明確になり、対応漏れがなくなります。そして、全てのやり取りが記録として蓄積されていく。この「記録」こそが、次のステップで最強の武器になるんです。
ステップ3:“神対応”を目指すな。FAQを育てて“自己解決”させる
勘違いしないでください。ヘルプデスクの究極の目標は、「一件一件に神対応をすること」ではありません。 究極の目標は、「ヘルプデスクへの問い合わせがゼロになること」です。
そのために最も重要なのが、「FAQ(よくある質問とその回答集)」を育てていくこと。 ステップ2で一本化した窓口に溜まった問い合わせ履歴は、「社員が、どんなことで、どのくらい困っているか」を示す、宝の山です。
そのデータの中から、頻出する質問トップ10を洗い出し、誰が読んでも分かる丁寧な回答ページ(FAQ)を作成し、いつでも見られる社内ポータルなどに掲載する。
そして、問い合わせが来た際に、いきなり答えを教えるのではなく、「そのご質問は、こちらのFAQページに解決法が書いてありますよ」と、URLを貼り付けて返す。
そうです。「答え」を教えるのではなく、「答えの見つけ方」を教えるんです。 これを徹底することで、社員の自己解決能力が育ち、結果的にヘルプデスクへの問い合わせ総量が劇的に減っていきます。これこそが、最も賢く、持続可能なヘルプデスクの運用術です。
優れた社内ヘルプデスクとは、親切で優しい「何でも屋」のことではありません。 それは、「冷徹なルール」「一本化された窓口」「自己解決を促す仕組み」という3つの柱で、戦略的に“設計”された機能なんです。
もう、あなたの貴重な善意と時間を、安売りするのはやめにしませんか? 地獄を終わらせるのは、他の誰でもない、あなた自身の覚悟です。
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