
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 中小企業で、一人または少人数でIT関連業務を担っている「ひとり情シス」の方
- 総務や経理と兼務で、よく分からないままサーバー管理などを任されている方
- 過去にサーバーダウンで顧客や社内からクレームの嵐を受け、トラウマになっている方
- お金をかけずに、今すぐ始められる実践的なIT監視の方法を知りたい方
「〇〇さん!会社のサイトが見れなくなってるんだけど!」 「システムにログインできません!至急、対応してください!」 朝、出社するなり鳴り響く電話。休日にお客様から入る、怒りのクレーム。こんな、血の気が引くような経験はありませんか?
大企業なら専門チームが24時間体制で対応してくれるかもしれません。でも、リソースの限られた中小企業では、問題が起きて、誰かが騒ぎ始めてから、ようやく担当者が重い腰を上げる…なんていう、後手後手の対応が現実ですよね。
「IT監視なんて、難しくてお金がかかるものだろ?」 そう思っているあなた。それは大きな間違いです。今日は、高価なツールを導入する前に絶対に知っておくべき、IT監視の本質。そして、あなたの会社と、あなた自身の平穏な夜を守るための、泥臭いけれど超効果的な入門ステップを解説します。
なぜ、あなたの会社はいつも“後手”に回るのか
多くの中小企業の経営者は、IT監視を「何も生み出さない、ただのコスト」だと考えています。これが、全ての悲劇の始まりです。
本当のコストとは何か。それは、監視を怠った結果として発生する「ダウンタイム」、つまり“システムが止まっている時間”が生み出す、莫大な損失です。
考えてみてください。あなたの会社のECサイトが、もしピークタイムに3時間停止したら?仮に、時間あたりの平均売上がたった5万円だとしても、それだけで15万円の売上が消し飛びます。さらに恐ろしいのは、「この会社、いざという時に使えないな」という、お客様からの“信用の失墜”。この見えない損失は、後からお金で取り戻すことはできません。
IT監視は、コストじゃない。会社の信用と売上を守るための「投資」です。それは、人間でいう「健康診断」と全く同じ。ガンになってから慌てて手術するのではなく、定期的な検診で予兆を掴み、病気を未然に防ぐ。この意識改革こそが、最初の一歩なんです。
高価なツールは不要。まず“死活監視”から始めろ
「監視の重要性は分かった。でも、専門知識も金もない」 分かります。だからこそ、完璧を目指すのを、まずやめましょう。中小企業が最初にやるべき監視は、たった一つ。「死活監視」です。
死活監視とは、その名の通り、サーバーやネットワーク機器が「生きているか、死んでいるか」だけを、シンプルに確認すること。一番原始的で、一番重要な監視です。
具体的には「Ping(ピング)監視」という方法を使います。これは、監視したい機器に対して、定期的に「元気ですかー?」と小さな信号(Ping)を送り、「元気だよー!」という返事が返ってくるかを確認するだけ。
これなら、無料の監視ツールや、AWSやGoogle Cloudといったクラウドサービスに標準でついている無料枠の機能を使えば、コストゼロで今すぐ始められます。 まずは、会社のウェブサイトと、社内のファイルサーバー。この2つだけでもいい。5分に1回、Ping監視を設定する。たったそれだけで、「お客様に言われて初めて障害に気づく」という最悪の事態は、100%防げます。
“正常”を知らなければ、“異常”には気づけない
死活監視に慣れてきたら、次のステップに進みましょう。それは「パフォーマンス監視」です。 とはいえ、これも難しく考える必要はありません。見るべき指標は、たったの3つです。
1.CPU使用率(サーバーの脳みその稼働率)
2.メモリ使用率(サーバーの作業机の広さ)
3.ディスク空き容量(サーバーの収納スペースの残り)
これらが、サーバーの健康状態を示す、三大バイタルサインです。 そして、ここで最も重要なのが、障害が起きていない「平時(正常時)」の数値を、きちんと把握しておくこと。
「ウチのサーバーは、普段は大体CPU使用率が20%くらいだな」 この“正常”を知っていれば、「あれ、今日はやけにCPUが80%に張り付いているぞ?何かおかしいな」と、“異常”の予兆に誰よりも早く気づくことができます。
この3つの数値を定点観測し、「CPU使用率が15分以上、80%を超えたら、担当者にメールを飛ばす」といった、簡単なアラート(警告)を設定する。これが、サーバーが完全にダウンする前に、問題を未然に防ぐための鍵になるんです。
中小企業のIT監視は、完璧なものである必要はありません。 重要なのは、意識を変えること。そして、できることから始めること。
障害は、起きてから対処するものではなく、起きる前に予兆を掴むもの。 もう、「サーバーが落ちました」の電話に、あなたの貴重な時間と精神をすり減らすのは、終わりにしませんか? 今日始めるその小さな一歩が、会社の未来を、そしてあなた自身の平穏な日常を守る、最も確実な投資になるんですから。
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