
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 時間をかけて作ったITマニュアルや手順書が、全く読まれず悩んでいる方
- 「マニュアルの〇ページに書いてあります」と、同じことを何度も説明するのに疲弊している方
- 社員のITリテラシーが低いと嘆き、半ば諦めてしまっている管理職の方
- 読まれるマニュアル、本当に“使える”マニュアルの作り方を本気で知りたい方
「渾身のITマニュアルを作ったのに、誰も読んでくれない…」 「結局、みんな『ちょっといいですか?』と直接聞きに来る…」
そんな、報われない悩みを抱えていませんか?そして、「なんで読まないんだ!」「自分で調べる努力をしろ!」と、読まない社員に対して、怒りや失望を感じていませんか?
もし、そうだとしたら…今日は、その甘い考えを粉々に打ち砕きます。 はっきり言います。あなたのマニュアルが読まれないのは、読まない社員が悪いんじゃない。読み手のことを1ミリも考えずに作られた、あなたのそのマニュアルが“ゴミ”だからです。
今日は、社員を責めるという楽な道から脱却し、本当に“刺さる”ITマニュアルを作るための、厳しいですが本質的な3つの鉄則についてお話しします。
罪状その1:読者の“スタート地点”を完全に見誤っている
あなたのマニュアルが読まれない最大の理由。それは、あなたが「ITに詳しい自分」を基準に、つまり作り手の常識だけで書いているからです。
あなたが当たり前に使う「キャッシュをクリアして」「拡張機能を無効にして」といった言葉。それは、ITに苦手意識を持つ一般社員にとっては、意味不明な“外国語”と同じです。彼らがPCの前でどんな画面を見て、どこで指が止まり、何につまずいているのか。その「スタート地点」を、あなたは全く理解していません。
良いマニュアルを作るための最初のステップは、具体的な「ペルソナ」を設定することです。 あなたの部署で、最もPC操作が苦手な「田中さん」を思い浮かべてください。そして、その田中さんが、一切のストレスなく、一人で最後まで操作を完了できるか?という視点ですべての言葉と手順を見直すんです。
「あなたの常識は、他人の非常識」。この言葉を、PCのディスプレイにでも貼り付けておいてください。
罪状その2:親切のつもりで“情報の洪水”を浴びせている
次に多いのが、良かれと思って、情報を詰め込みすぎてしまう罪です。 「丁寧に、網羅的に書かなければ…」その真面目さの結果、辞書のように分厚く、文字だらけの“お経マニュアル”が完成していませんか?
人間は、情報の海を前にすると、思考停止します。開いた瞬間に「うわっ、読むの面倒くさ…」と思われたら、そのマニュアルの負けは確定です。
解決策は、たった一つ。「1ページ、1アクション」の原則を徹底すること。 一つの記事で説明する操作は、一つだけに絞る。そして、文章は極限まで削り、代わりにスクリーンショットや図解、短い操作動画を多用する。「読む」マニュアルから「見る」マニュアルへと、発想を転換するんです。ある調査によれば、テキストだけの情報よりも、視覚情報(画像や動画)を組み合わせた方が、人間の理解度は60%以上も向上すると言われています。
親切とは、情報を盛ることではありません。相手が理解できるように、徹底的に情報を「削ぎ落とす」勇気のことです。
罪状その3:“探せない”マニュアルは、存在しないのと同じ
どんなに分かりやすいマニュアルも、必要な時に、必要な情報が見つけられなければ、それは存在しないのと同じです。 あなたの作ったマニュアル、いざという時に5秒で見つかりますか?
「〇〇システム関連」→「利用者向け」→「操作手順」→「Ver.2.0」… こんな、作り手の都合で整理されたフォルダ階層では、誰も目的のページにたどり着けません。
設計思想を、根本から変えてください。 考えるべきは、「読み手が、どんな言葉で検索するか」です。 マニュアルのタイトルは、「パスワードを忘れた時の再設定方法」「請求書をPDFで出力する手順」というように、社員が実際に困っている「具体的な悩み」そのものにするべきです。
そして、社内ポータルやWikiツール(NotionやConfluenceなど)を活用し、強力な検索機能と、関連ページへのリンクを整備する。「FAQ(よくある質問)」をトップページに目立つように配置するのも、極めて有効な手段です。
社員に本当に刺さるITマニュアルとは、作り手の知識をひけらかすためのものではありません。 それは、ITが苦手な人への「究極の思いやり」の結晶です。
「ITが苦手な田中さんでも、これなら分かるか?」 「情報が多すぎて、読む気をなくさせていないか?」 「いざという時、5秒で探せるか?」
この3つの問いに、自信を持って「YES」と答えられないのであれば、あなたのマニュアルは、まだ改善の余地だらけの“ゴミ”のままです。
社員を責めるな。マニュアルを疑え。 その意識改革こそが、あなたの会社の生産性を向上させる、最も確実な一歩になるんですから。
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