
【この記事はこんな方に向けています】
- 配当利回りばかり注目して、財務諸表をまともに読んだことがない投資家
- 高配当株投資を始めたばかりで、決算書の基本構造を理解したいビギナー
- 財務指標の見方がわからず、配当の継続性や安全性を判断できない方
こんにちは、投資を楽しむみなさん。この記事では、「高配当株クラスタ」の皆さんが意外と見落としがちな「決算書の基礎」を、数字の具体例を交えながらわかりやすく解説します。
配当利回りが何%かだけじゃなく、会社の体力や収益構造を読み解く習慣を身につければ、リスクを大幅に下げつつ、安心して高配当投資を続けられるようになりますよ!
1. なぜ財務諸表を読む必要があるのか?
「配当利回り5%以上!」というキーワードに飛びつくのは簡単ですが、利回りだけでは会社の安全度はわかりません。
例えば、A社とB社がともに配当利回り5%だったとしても、
- A社は毎年営業キャッシュフローがプラスで配当性向40%
- B社は営業キャッシュフローがマイナスで配当性向120%
この場合、B社は配当を維持するために借金や内部留保を切り崩している可能性があります。
ですので、決算書を読んで「本当に配当を継続できる会社か」を見極めることが最重要なんです。
2. 決算書の3つの柱:損益計算書/貸借対照表/キャッシュフロー計算書
財務諸表は大きく以下の3つから構成されます。
- 損益計算書(P/L)
- 貸借対照表(B/S)
- キャッシュフロー計算書(C/F)
それぞれの役割を簡単にまとめると以下の通り。
財務諸表 | 何を示すか | 主なチェックポイント |
損益計算書(P/L) | 一定期間の収益と費用を比較し、最終的な利益を示す | 売上高、営業利益、経常利益、当期純利益など |
貸借対照表(B/S) | ある時点の資産・負債・純資産の状況を示す | 総資産、自己資本比率、流動比率、固定比率など |
キャッシュフロー計算書(C/F) | 一定期間のキャッシュ(現金)の増減を示す | 営業CF、投資CF、財務CFの3区分 |
まずは各書類の基本構造を押さえ、次に高配当株投資で特に注目すべきポイントを見ていきましょう。
3. 損益計算書(P/L)の読み方
3-1. 売上高から当期純利益までの流れ
損益計算書は「売上高 → 営業利益 → 経常利益 → 当期純利益」という流れで利益を計算します。
具体例として、ある企業C社(売上高100億円、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益6億円)の損益計算書抜粋を見てみましょう。
- 売上高:100億円
- 売上総利益(売上高–売上原価):40億円(40%の売上総利益率)
- 販売費及び一般管理費:30億円
- 営業利益:10億円(○○%の営業利益率)
- 営業外収益:1億円
- 営業外費用:2億円
- 経常利益:9億円
- 特別利益:3億円
- 特別損失:6億円
- 当期純利益:6億円
ポイント
- 営業利益率は業種ごとの平均を押さえる
- 製造業平均:約8~10%
- ITサービス:約15~20%
- 小売業:約3~5%
- 製造業平均:約8~10%
- 特別損益は一時的要因なので、当期純利益だけ見ずに経常利益や営業利益もチェック
3-2. 配当性向と利益剰余金の関係
配当性向は「当期純利益に対してどれだけ配当に回したか」を示す指標で、以下の式で算出します。
配当性向 = 1株当たり配当金 × 発行済株式数 ÷ 当期純利益 × 100
C社の例で当期純利益6億円、年間配当金総額3億円とすると、配当性向50%となります。
配当性向が高すぎる(80%以上)企業は、利益変動によっては配当が継続しにくいリスクがあります。
4. 貸借対照表(B/S)の読み方
4-1. 資産・負債・純資産のバランス
貸借対照表では「資産=負債+純資産」というバランスシートの原理を確認します。
主にチェックすべきポイントは以下の通りです。
- 自己資本比率=純資産/総資産×100
- 目安:40%以上で財務健全、20%以下は要注意
- 目安:40%以上で財務健全、20%以下は要注意
- 流動比率=流動資産/流動負債×100
- 100%を下回ると短期的な資金繰りに不安あり
- 100%を下回ると短期的な資金繰りに不安あり
- 固定比率=固定資産/自己資本×100
- 100%を超えると長期投資が自己資本で賄いきれていない
- 100%を超えると長期投資が自己資本で賄いきれていない
C社のB/S抜粋(単位:億円)
- 流動資産:60億円
- 固定資産:40億円
- 総資産:100億円
- 負債(流動+固定):50億円
- 純資産:50億円
- 自己資本比率:50%(50/100)→ 安全水準
- 流動比率:120%(60/50)→ 短期資金に余裕あり
- 固定比率:80%(40/50)→ 課題なし
4-2. 有利子負債と利息負担
高配当株では配当の原資だけでなく、企業が借入金で配当を維持していないかも重要です。
利息負担を見るには、
- 有利子負債残高
- 利息負担額(支払利息)
- インタレストカバレッジレシオ=経常利益/支払利息
C社の例で有利子負債が20億円、支払利息が1億円、経常利益9億円の場合、インタレストカバレッジは9.0倍。5倍以上あれば金利負担に余裕があります。
5. キャッシュフロー計算書(C/F)の読み方
5-1. 営業キャッシュフロー(営業CF)
営業CFは本業で稼いだ現金の増減を示します。黒字倒産を避けるためには、営業CFが継続してプラスであることが必須です。
- C社の営業CF:8億円(営業利益10億円に対し、減価償却費を足した数値)
- 一過性の資産売却益に左右されにくい
5-2. 投資キャッシュフロー(投資CF)
投資CFは設備投資や子会社投資など、将来の成長に向けた現金支出を示します。
マイナスが大きすぎると資金繰りに注意が必要。
- C社の投資CF:–4億円(設備投資に投下)
5-3. 財務キャッシュフロー(財務CF)
財務CFは借入金の返済や配当支払いを示します。
配当性向が高い企業は財務CFが大きくマイナスになるケースがあります。
- C社の財務CF:–3億円(配当支払い3億円)
ポイント
- フリーキャッシュフロー(FCF)=営業CF + 投資CF = 4億円
- FCFがプラスなら、配当や借入返済に使える
- FCFがプラスなら、配当や借入返済に使える
- 財務CFが大きくマイナスでも、FCFが十分プラスなら健全性が保たれる
6. 高配当株投資で使える指標まとめ
指標名 | 計算式 | 目安 |
配当利回り | 1株当たり配当金/株価×100 | 4%以上は高配当 |
配当性向 | 配当総額/当期純利益×100 | 30~60%が適正、80%以上は要注意 |
自己資本比率 | 純資産/総資産×100 | 40%以上で財務健全 |
インタレストカバレッジ | 経常利益/支払利息 | 5倍以上が安心 |
FCFマージン | FCF(営業CF+投資CF)/売上高×100 | 5%以上が望ましい |
数値データを使って定量的にチェックすると、ただ配当利回りだけ見ていた頃よりも格段にリスク管理がしやすくなります。
7. 実践例:高配当企業D社のケーススタディ
D社は配当利回り4.5%で人気の電力インフラ企業。
では、D社の直近決算データをもとに分析してみましょう。
- 売上高:200億円
- 営業利益:50億円(営業利益率25%)
- 経常利益:48億円
- 当期純利益:30億円
- 年間配当総額:18億円 → 配当性向60%
- 流動資産:80億円、固定資産:120億円 → 自己資本比率45%
- 営業CF:55億円、投資CF:–30億円 → FCF25億円(FCFマージン12.5%)
- 有利子負債:40億円、支払利息:2億円 → ICR 24倍
この数字を見ると、D社は
- 営業CFが充実し、FCFマージン12.5%と高い
- 配当性向60%でやや高めだが、FCFが十分プラスなので支払い余力あり
- 自己資本比率45%で財務健全
- ICRが24倍と負債負担に余裕あり
と判断できます。利回り4.5%の配当は、安全に維持される可能性が高いと言えるでしょう。
8. まとめ:配当だけに惑わされず決算書を読もう
- 配当利回りだけで投資判断しない
- 損益計算書で収益構造を把握 → 営業利益率・配当性向をチェック
- 貸借対照表で財務健全性を確認 → 自己資本比率・流動比率を押さえる
- キャッシュフロー計算書で現金の動きを見る → FCF・営業CFの安定性
- 各種指標で総合的にリスクを評価 → 配当利回り×配当性向×FCFマージン×ICR
これらを習慣化すると、高配当株投資のリスクを大幅に軽減し、長期にわたって安定的な配当収入を得やすくなります。
ぜひ次回から、配当利回りだけでなく決算書を読み込むクセをつけてみてくださいね!
また機会があれば、さらに踏み込んだ財務分析手法やバリュエーションモデルについても解説します。それでは、楽しい投資ライフを!
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