グラフのウソを見抜く3つのポイント

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【この記事はこんな方に向けて書いています】
・データを扱うビジネスパーソンやマーケター
・報告書やプレゼンでグラフをよく目にする人
・ニュースやSNSで見かける統計情報を鵜呑みにしたくない方

日々私たちは、業務報告やニュース、SNS投稿などでさまざまなグラフを目にします。
でも、そのグラフ、本当に正しく伝えたいことだけを表しているのでしょうか?調査によると、ネット上で拡散されるグラフのうち約45%が、軸の切り取りやスケール操作など何らかの「誤解を招く表現」を含んでいるとも言われています※1。
そこで本記事では、グラフのウソを見抜くために押さえておきたい3つのポイントを、数値データや具体例とともに深堀りして解説します。


■ポイント①:軸のスケール操作に注意

  1. Y軸の始点を切り取る手法
    • 例:売上推移グラフで、Y軸が「90→100」という狭い範囲で表示されていると、実際は5%の増加でも一目で大幅上昇と錯覚しやすくなります。
    • 実際のデータ:A社の月次売上は1,000万円から1,050万円へ5%増加でしたが、Y軸を900~1,100万円に設定すると、左軸0から描画した場合と比べ視覚的インパクトは約3倍強く感じられます。
  2. X軸の不均等間隔
    • 例:四半期ごとの業績をグラフにする場合、本来は3カ月間隔であるにもかかわらず、ある時点だけスペースを詰めたり広げたりすると、伸び率や急落を誇張できます。
    • 注意点:X軸の目盛り間隔は実際の時系列に合わせ、規則正しく配置されているかチェックしましょう。

■ポイント②:データ範囲の「切り取り」による印象操作

  1. 期間の切り取り(チェリーピッキング)
    • 例:株価チャートで「過去3年分」を示すとわずかな上昇トレンドに見えますが、「過去10年分」を表示すると大暴落や長期停滞が見えてきます。
    • 実データ:日経平均株価は2015年から2020年の5年間でプラス20%の上昇でしたが、2000年から2020年の20年間ではマイナス10%近い横ばいです。
  2. 特異値の除外
    • 例:異常値(コロナショックの急落など)を意図的に除外して「安定成長」をアピールするケースもあります。
    • チェック方法:グラフ掲載元の注釈や脚注を確認し、「除外データ」「補正値」の有無を必ず探しましょう。

■ポイント③:視覚的デザインのトリック

  1. 3Dグラフの立体効果
    • 例:3D円グラフや3D棒グラフは、サイズや奥行きの錯覚で割合や増減を過大評価させやすいデザインです。
    • 実験値:あるアンケート結果を2D円グラフと3D円グラフで比較したところ、3D版は平均18%も大きく見えるという報告があります。
  2. 色やパターンの誇張
    • 例:目立つ赤・オレンジ系のグラデーションを使うと、実際の数値差以上に「危機的」「急激」と印象付けられます。
    • 対策:モノクロ印刷やカラーブラインド配慮モードで見え方をチェックし、本質的な差が強調されすぎていないか確認しましょう。
  3. 面積・円の半径で錯覚
    • 例:円の面積で数値を表すバブルチャートでは、半径の大きさが面積に対して非線形に変化するため、数値の差を過大解釈しがちです。
    • 数値例:10と20を半径で表す場合、面積はそれぞれπ×r²で計算され、倍ではなく面積比4倍など誤解を招きます。

■ウソグラフを見抜くための3つのチェックリスト

  1. 軸の始点と目盛り間隔
    • Y軸の始点は0になっているか?
    • X軸の目盛りは時系列やカテゴリの実間隔を反映しているか?
  2. データ範囲と期間
    • いつからいつまでのデータか明示されているか?
    • 特異値や外れ値を除外していないか?
  3. デザイン要素の影響
    • 3D表現や強いグラデーションは使われていないか?
    • 面積や色の大きさで数値を誇張していないか?

これらをひとつひとつチェックするだけで、意図的な誤解や無自覚な誘導から身を守れます。


■データリテラシー向上のために

  • 複数のグラフと比較:同じデータを異なる切り口で示したグラフがあれば、必ず比べてみる。
  • 元データの確認:公開されているCSVやExcelファイルがあればダウンロードし、自分で簡単なグラフを描いてみる。
  • 信頼できるソースを選ぶ:公式統計や学術論文、専門機関のレポートなど、一次情報を優先して参照する。

データに裏打ちされた情報は強力ですが、同時に「つくられる」こともあります。工具としてのグラフを正しく読み解く力(データリテラシー)を磨くことが、ビジネス判断や意思決定の質を大きく左右します。


グラフのウソを見抜く3つのポイントを押さえて、日々のレポートやニュース、SNS情報を賢く読み解きましょう。これであなたも、無自覚なミスリードからチームや自社を守る“データの達人”です!

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