なぜ経済には“春夏秋冬”があるのか?景気の波『コンジョンクチャー』を読み解く超入門

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「好景気だ」「不景気だ」というニュースが、なぜ繰り返されるのか不思議に思っている方
  • 投資やビジネスのタイミングを、勘や雰囲気ではなく、大きな流れを読んで判断したい方
  • 「景気循環」や「コンジョンクチャー」という言葉は知っているけど、意味はよくわからないという方
  • 難しい経済の仕組みを、理屈っぽくなく、直感的に理解したいと思っているすべての方

給料が上がり、ボーナスが増え、街に活気が溢れる「好景気」。 一転して、リストラの嵐が吹き荒れ、財布の紐を固く締めざるを得ない「不景気」。

私たちの生活は、この「景気」という、まるで気まぐれな生き物のような存在に、大きく左右されています。

多くの人は、この景気の変動を、予測不可能な「運」や「偶然」の産物だと考えているかもしれません。

しかし、もし経済にも、自然界と同じように「春夏秋冬」という、予測可能なサイクル(波)が存在するとしたら、どうでしょう。

この記事では、その経済に隠された波、すなわち「コンジョンクチャー(景気循環)」の正体を解き明かし、あなたが未来を読むための「経済の天気予報」を手に入れるための、超入門ガイドをお届けします。

経済は「生き物」。好景気と不景気を繰り返す“波”の正体

まず、「コンジョンクチャー」という、少し難しそうな言葉。

これはドイツ語で、日本語では「景気循環」と訳されます。その名の通り、経済は、ただ一直線に成長していくのではなく、必ず「波」を描きながら、循環を繰り返すという考え方です。

具体的には、経済は大きく4つの局面を繰り返します。

春にあたる「回復」期。 夏にあたる「好況」期。 秋にあたる「後退」期。 そして、冬にあたる「不況」期。

不況の谷底から、やがて経済は回復し(春)、活気に満ちた好況を迎え(夏)、やがてピークを過ぎて後退し(秋)、そしてまた厳しい不況の時代がやってくる(冬)。

なぜ、こんな波が生まれるのでしょうか。

その原因は、私たち人間の「心理」にあります。

好景気になると、人々は楽観的になり、「もっと儲かるはずだ!」と、企業は設備投資を増やし、個人は消費を活発化させます。しかし、その楽観が行き過ぎると、モノを作りすぎたり(過剰生産)、買いすぎたり(過剰消費)してしまい、やがて「あれ、思ったよりモノが売れないぞ…」という現実に直面します。

すると、今度は一気に悲観的なムードが広がり、企業は投資を手控え、人々は財布の紐を固く締める。こうして、経済は一気に冷え込んでいくのです。

経済は、まるで私たち人間の期待や欲望、不安といった感情を映し出す、巨大な生き物のようなもの。だからこそ、一直線ではなく、浮き沈みの「波」を描くのです。

景気の波には「4つのサイズ」がある

そして、この景気の波は、実は一つだけではありません。

経済学者シュンペーターは、「大きさ(周期)の異なる、複数の波が重なり合って、現実の複雑な景気変動を生み出している」と考えました。

これは、オーケストラで、バイオリンの短い旋律と、チェロのゆったりした旋律、そしてコントラバスの非常に長い旋律が重なり合って、一つの壮大な交響曲を奏でているのをイメージすると、分かりやすいかもしれません。

代表的な波は、以下の4つです。

①キチンの波(在庫循環):約3〜4年の小さな波 企業が抱える「在庫」の増減によって起こる、最も短いサイクルの波です。モノが売れると思って作りすぎ、在庫がダブついて調整する、という小さなサイクルです。

②ジュグラーの波(設備投資循環):約10年の中くらいの波 企業が工場を建てたり、機械を買い替えたりする「設備投資」の変動によって起こる、景気循環の主役とも言える波です。

③クズネッツの波(建設循環):約20年の大きな波 住宅やビルといった「建設物」の建て替えサイクルによって起こる、より大きな波です。

④コンドラチェフの波(技術革新の波):約50年の超巨大な波 蒸気機関、鉄道、電力、自動車、そしてIT革命といった、世の中の仕組みを根底から変えるような「技術革新」によって引き起こされる、最も大きな波です。

私たちは、これら4つの異なるサイズの波が、複雑に重なり合った世界に生きているのです。

「経済の天気図」を読んで、未来に備える

「なるほど、経済に波があることはわかった。でも、それが何の役に立つんだ?」

その知識は、あなたの未来を予測し、備えるための、強力な武器になります。

今、私たちが経済の「春夏秋冬」のどの季節にいるのかを意識するだけで、ビジネスや投資の戦略は、全く違ったものになるはずです。

例えば、内閣府は毎月、「景気動向指数」というものを発表しています。これは、今の景気が拡大しているのか、後退しているのかを示す、いわば「経済の天気図」のようなもの。

この天気図を読み解くことで、「そろそろ景気のピークが近いから、新規投資は慎重になろう」とか、「今は不況のどん底だけど、そろそろ回復期が近いから、仕込みのチャンスかもしれない」といった、先を見越した判断が可能になります。

コンジョンクチャー、すなわち景気循環を理解すること。

それは、気まぐれに見える経済の動きの裏にある法則性を知り、未来の不確実性に、賢く備えるための、現代人必須の教養なのです。

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