
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 今まさに「炎上案件」の真っ只中にいるSIerのPMやPLの方
- プロジェクトの進捗が遅れ、デスマーチの足音が聞こえているエンジニア
- 発注したシステム開発が、なぜか上手く進まないと悩んでいるユーザー企業の担当者
- 将来、修羅場を乗り越えられるPMになりたいと考えている方
終わらない残業、深夜に鳴り響く障害アラート、日に日に険しくなる顧客の表情…。 「このプロジェクト、もしかして詰んでる…?」 そんな絶望的な状況、SIerで働く方なら一度は経験したことがあるかもしれません。
プロジェクトの失敗、いわゆる“炎上案件”には、驚くほど共通したパターンがあります。そして、多くの人がその泥沼の中でもがき苦しんでいます。
しかし、諦めるのはまだ早いです。この記事では、私自身が経験した数々の失敗プロジェクトの実録をもとに、デスマーチ状態からV字回復を遂げるために不可欠な「再構築の3つの鉄則」を、生々しい具体例とともにお話しします。これは机上の空論ではありません。明日からあなたの現場で使える、泥臭くも確実な一歩です。地獄の底から這い上がるための羅針盤としてください。
鉄則1:事実の直視と「損切り」の覚悟。希望的観測を捨てる
炎上プロジェクトを再建する第一歩は、「このままでは絶対に間に合わない」という不都合な真実を、PM自身が認め、チーム全員で直視することです。
「メンバーが頑張れば何とかなる」「週末返上で遅れを取り戻す」といった精神論や希望的観測は、傷口を広げる麻薬でしかありません。プロジェクト失敗の要因を調査したあるデータでは、約3割が当初の計画になかった「要件の肥大化」に起因すると言われています。つまり、根性でどうにかなる問題ではないのです。
ここでPMに求められるのは「損切り」の覚悟です。明らかに品質が低いまま進んでいる機能、採算度外視で追加された要件、チームの士気を下げるだけの無駄な会議…。これらを「今までやってきたから」という理由で続けるのではなく、勇気を持って切り捨てる決断をしなければなりません。痛みを伴いますが、この外科手術なくして再生はありえません。
鉄則2:コミュニケーションの再設計。「言ったはず」を撲滅する
プロジェクトが炎上している時、その現場ではほぼ例外なくコミュニケーションが崩壊しています。「誰が」「何を」「いつまでに」やるのかが曖昧で、「言ったはず」「聞いていない」が飛び交い、メンバー間の信頼関係は失われています。
この状況を打開するには、コミュニケーションを強制的に可視化し、定型化する仕組みが必要です。
- 15分間の朝会・夕会を毎日実施する:進捗、課題、今日のゴールを全員で共有
- 課題管理表の一元化:Excelやスプレッドシートでいい。誰がボールを持っているか明確にする
- WBSの再定義:タスクを半日〜1日単位まで分解し、担当者を明確にする
「週一の定例会で報告」では手遅れです。問題は発生から24時間以内に検知し、全員の共通認識にすること。この情報の鮮度こそが、プロジェクトの生死を分けるのです。
鉄則3:スコープの再定義。「作らないもの」を決める勇気
これが最も難しく、そして最も重要な鉄則です。それは、顧客と腹を割って交渉し、「作らないもの」を決めること。つまり、開発範囲(スコープ)の見直しです。
「このままでは、お約束したすべての機能をご提供することは困難です。しかし、ビジネス上絶対に不可欠なこのコア機能に絞れば、〇月までに安定した品質でリリースできます。どちらを選びますか?」
PMは、このように顧客に誠実に事実を伝え、選択を迫る勇気を持たねばなりません。これは責任転嫁ではありません。プロジェクトを成功に導くための、プロとしての「再提案」です。機能一覧を顧客と一緒に見直し、「MUST(絶対に必要)」「WANT(あったら嬉しい)」に仕分けし、合意形成を図るのです。この厳しい交渉ができるかどうかが、ただの御用聞きと、真のプロジェクトマネージャーを分ける分岐点と言えるでしょう。
炎上プロジェクトは、関わる人すべてにとって地獄です。しかし、その経験はPMやチームを確実に成長させる最高の学習機会でもあります。今日の地獄は、明日のあなたを強くする。冷静に、そして粘り強く、再構築の一歩を踏み出してください。
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