
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 新NISAで投資を始めたけど、たくさんある投資信託から何を選べばいいか分からない方
- 「信託報酬」という言葉は知っているけど、その重要性がいまいちピンとこない方
- 銀行の窓口で勧められたファンドの手数料が、高いのか安いのか判断できない方
- これから長期的な資産形成を始める上で、絶対に損をしたくないと考えているすべての方
新NISAのスタートを機に、投資信託での資産形成を始めた人も多いだろう。
証券会社のサイトを開けば、ずらりと並ぶファンドの数々。その中で、多くの人がリターンや分配金にばかり目を奪われ、片隅に小さく書かれた「信託報酬(手数料)」という数字を、見過ごしてはいないだろうか。
「年率0.1%の違いなんて、誤差みたいなものでしょ?」
もし、君が本気でそう思っているなら、その油断が、30年後の君の未来を大きく変えてしまうことになる。
この記事では、その「たった0.1%」という数字が、長期投資においてどれほど恐ろしい破壊力を持つのか。そして、なぜ賢い投資家たちが、異常なまでにコストにこだわるのか。
その残酷なまでの現実を、具体的なシミュレーションを交えて徹底的に解説する。
手数料は「毎年、元本から引かれる」静かなる刺客
まず、絶対に勘違いしてはいけない、信託報酬の仕組みについて話そう。
信託報酬とは、投資信託を運用・管理してもらうための経費として、私たちが運用会社に支払う手数料のことだ。
多くの初心者は、「利益が出たら、その中から引かれるもの」くらいに思っている。
だが、現実はもっと厳しい。
信託報酬は、君の投資信託が利益を出していようが、損失を出していようが、一切お構いなしに、君の資産(信託財産)全体から「毎日」淡々と差し引かれていく。
そう、毎日だ。
これは、言わば「見えない家賃」のようなもの。君が寝ている間も、遊んでいる間も、チャリンチャリンと君の資産を静かに蝕んでいく、恐るべき刺客なのだ。
そして、この見えない家” “家賃の利率が、ほんのわずかでも違うと、長年の間に複利の効果と相まって、とてつもない差を生み出すことになる。
【衝撃シミュレーション】0.1%の差が30年後に生む「絶望的な格差」
では、実際にどれほどの差が生まれるのか。具体的な数字で見てみよう。
ここに、AさんとBさんがいる。二人は同じように、毎月3万円を、30年間にわたって積み立て投資をすることにした。
運用利回りも、仮に同じ「年率5%」とする。
唯一の違いは、選んだ投資信託の信託報酬だけだ。
- Aさん:信託報酬が年率0.1%の低コストファンドを選択
- Bさん:信託報酬が年率0.2%のファンドを選択
たった0.1%の違い。この二人の30年後の未来は、どう変わるだろうか。
金融庁の資産運用シミュレーションを使って計算すると、結果はこうなる。
(積立総額は、二人とも3万円 × 12ヶ月 × 30年 = 1,080万円)
Aさん(手数料0.1%)の30年後の資産額は… 約2,437万円
Bさん(手数料0.2%)の30年後の資産額は… 約2,374万円
その差額は、なんと約63万円。
どうだろうか。
「たかが0.1%」と笑い飛ばしたその差が、30年という時間をかけて、地方なら十分に軽自動車が買えてしまうほどの金額に化けてしまったのだ。
これは、家族で豪華な海外旅行にだって行ける金額だ。
もし、手数料の差が0.5%や1%だったら…?その差は、数百万、数千万円という、もはや笑えないレベルにまで膨れ上がる。
これが、複利とコストが織りなす、長期投資の残酷な現実なのだ。
あなたが選ぶべきは「未来のスター」ではなく「最低コストの相棒」
このシミュレーションが教えてくれる、たった一つの真実。
それは、投資信託選びにおいて、私たち投資家が唯一、確実にコントロールできる未来は「コスト」だけだ、ということだ。
どのファンドが将来、高いリターンを上げるかなんて、世界最高のプロにも予測はできない。
未来のことは、誰にもわからない。
しかし、信託報酬というコストは、ファンドを選んだその瞬間に、未来永劫あなたの資産にのしかかってくることが「確定」している。
ならば、私たちが取るべき最も合理的で、賢明な行動は何か。
答えは一つ。
特に、S&P500や全世界株式(オルカン)のような、同じ指数への連動を目指すインデックスファンドを選ぶのであれば、「中身はほぼ同じなのだから、最も信託報酬が低いものを選ぶ」ということだ。
eMAXIS Slimシリーズのような超低コストファンドが、なぜこれほどまでに多くの賢明な投資家から支持されているのか。その理由は、まさにここにある。
未来の不確実なリターンを追い求める前に、まず、確実に未来のあなたの資産を蝕む「コスト」という名の敵と、真剣に向き合うこと。
それこそが、資産形成の長い旅路で、決して道を踏み外さないための、最も重要な羅針盤なのだ。
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