【実体験】現場から即アウト！SESエンジニアが知らずにやっている契約終了直結のNG行動5選

SES（システムエンジニアリングサービス）という働き方。それは、技術力を武器に様々なプロジェクトに参加し、スキルを磨く絶好の機会です。しかし、その一方で、私たちの評価が「技術力」だけで決まるわけではない、というシビアな現実も存在します。客先常宿という特殊な環境だからこそ、あなたの些細な行動一つひとつが、常駐先の担当者によって厳しく見定められています。

「スキルは問題ないはずなのに、なぜか契約が更新されなかった…」 「いつも頑張っているのに、評価が上がらない…」

もしあなたがそんな経験をしたことがあるなら、その原因は、自分では気づいていない「NG行動」にあるのかもしれません。最悪の場合、そのたった一つの行動が引き金となり、「来月で契約終了です」と非情な宣告を突きつけられることすらあるのです。

この記事では、SES業界で長年エンジニアを見てきた筆者の実体験に基づき、多くの人が知らず知らずのうちにやってしまっている「契約終了に直結する5つのNG行動」を、具体的な事例と共に徹底的に解説します。これは単なる脅しではありません。あなたのエンジニア生命を守り、市場価値の高い人材へと成長するための、いわば「生存戦略の教科書」です。ぜひ、最後まで読んで自分自身の働き方を振り返ってみてください。

技術力だけでは生き残れない！SES評価のシビアな現実

本題に入る前に、なぜ私たちが「やってはいけない行動」を学ぶ必要があるのか、その背景にあるSES評価の構造を理解しておきましょう。ここを理解しているかどうかで、現場での立ち回りが180度変わってきます。

最大のポイントは、SESエンジニアの評価者は、自社の人間ではなく、客先の担当者（多くはPMやチームリーダー）であるという事実です。彼らはお金を払って、自社の課題を解決してくれるプロフェッショナルを求めています。そして、彼らが見ているのは、あなたの書くコードの美しさや、知っている技術の数だけではありません。

独立行政法人情報処理推進機構（IPA）が発行する「IT人材白書」などの調査を見ても、企業がIT人材に求める能力として、技術力と並んで、あるいはそれ以上に「コミュニケーション能力」「主体性」「協調性」といったヒューマンスキルが常に上位に挙げられています。

考えてみれば当然です。どんなに優れた技術を持っていても、チームの輪を乱したり、指示をしないと動かなかったり、報告がなくて進捗が分からなかったりする人と、一緒に仕事をしたいと思うでしょうか？答えは明白に「No」です。

客先は、あなたの技術力、そして人間性の両方を天秤にかけ、「この人にこの金額を払い続ける価値があるか？」を常に判断しています。技術力という土台の上に、「信頼」という名の付加価値を積み上げていくこと。それこそが、SESエンジニアとして生き残るための唯一の道なのです。これから紹介する5つのNG行動は、この「信頼」を一瞬で地に落とす、まさに地雷のような行為なのです。

【契約終了レベル1】“指示待ち”で思考停止する「言われたことだけやるマシーン」

まず一つ目は、若手エンジニアが最も陥りがちな罠、「指示待ち」の姿勢です。

どんな行動か

これは、与えられたタスクや指示された範囲のことはきっちりこなすものの、それ以上のことは一切しない、考えないというスタンスを指します。例えば、自分の作業が早く終わっても、次にやるべきことを聞かずにボーッとしている。開発中に「もっとこうした方が良いのでは？」という改善点に気づいても、何も言わない。仕様書に疑問があっても、質問せずにそのまま実装してしまう。これら全てが「指示待ち」の行動です。

なぜダメなのか

客先がSESエンジニアに期待しているのは、単なる「作業員」ではありません。もし、言われたことを言われた通りにこなすだけの人が欲しいなら、もっと単価の安い人材や、場合によっては自動化ツールで十分だからです。お客様は、自社のリソースだけでは解決できない課題を、専門知識を持つ「プロの助っ人」に解決してほしいのです。

主体性のない「指示待ちマシーン」は、お客様から見れば「成長意欲のない、思考停止した人」と映ります。これでは、あなたの価値は上がりません。むしろ、「この程度の作業なら、もっと安くて意欲のある若手に替えよう」と判断されるリスクが非常に高くなります。貴重な時間とお金を投資している客先からすれば、当然の判断と言えるでしょう。

陥りがちな心理的背景

「契約の範囲外のことは、やるべきではない」「余計なことを提案して、もし失敗したら責任を取れない」といった、SES特有の遠慮や自己防衛本能が、この指示待ちスタンスを生み出すことがあります。真面目な人ほど、この思考に陥りやすい傾向があります。しかし、その遠慮が、結果的に自分の首を絞めることになるのです。

具体的な事例

Aさんは、真面目で実装スキルも高いエンジニアでした。与えられたタスクはいつも納期通りに完璧にこなします。しかし、彼はそれ以上のことを一切しませんでした。自分の担当範囲のテストが終わると、隣のチームが炎上していても手伝おうとせず、ネットサーフィンをして定時を待つだけ。ある日、客先のリーダーから「Aさんって、本当に言われたことしかやらないよね。もう少し周りを見て、積極的に動いてくれると助かるんだけど…」と自社の営業にフィードバックが入りました。結局、次の契約更新のタイミングで、Aさんよりもスキルは少し劣るものの、積極的に改善提案をしてくれる若手のBさんに交代となってしまいました。

どうすれば防げるか

指示待ちマシーンから脱却するには、まず「目的意識」を持つことが重要です。目の前のタスクが「何のために行われているのか」「プロジェクト全体のどの部分に貢献するのか」を理解しようと努めましょう。目的が分かれば、自ずと「もっとこうすれば良くなるのに」という改善点が見えてきます。

そして、勇気を出して「質問」と「提案」をすること。仕様書に疑問があれば、「この部分の背景を教えていただけますか？」と聞く。非効率な作業があれば、「このようなツールを使えば、効率化できるかもしれません」と提案してみる。その小さな一歩が、あなたを「マシーン」から「課題解決のパートナー」へと昇華させるのです。

【契約終了レベル2】自社や現場の悪口を言う「不満のスピーカー」

二つ目は、人間関係の基本中の基本ですが、特にSESの立場では致命傷となりかねない行動です。

どんな行動か

文字通り、ネガティブな発言を公の場で撒き散らす行為です。具体的には、「うちの営業、本当に使えなくて…」と客先で自社の愚痴をこぼす。「前の現場は最悪で…」と過去の悪口を言う。そして最も危険なのが、「この現場の進め方、おかしくないですか？」と、現在の常駐先の不満を、そこの社員や他のSESメンバーに吹聴して回ることです。

なぜダメなのか

理由は3つあります。第一に、チームの士気を著しく下げるからです。不満や愚痴は、伝染病のように周りに広がり、プロジェクト全体の雰囲気を悪化させます。第二に、あなたの人間性が疑われるからです。「この人は、どこへ行っても文句ばかり言う人なんだな」「私たちのことも、他の場所で悪く言っているんだろうな」と思われた瞬間、誰もあなたを信頼しなくなります。

そして第三に、コンプライアンス意識を疑われるからです。特に自社の内部情報や他の現場の話を軽々しく口にする人は、「情報管理ができない危険な人物」と見なされます。客先は、自社の機密情報を扱う可能性のある人間として、あなたを絶対に評価しません。

陥りがちな心理的背景

ストレスのはけ口として、あるいは「同じ不満を共有して、仲間意識を深めたい」という歪んだ承認欲求から、つい愚痴をこぼしてしまうことがあります。特に、客先で孤立していると感じる時に、手っ取り早く誰かと繋がりたくて、共通の敵（例えば、自社の営業や客先の上司）を作るような会話をしてしまうのです。

具体的な事例

Bさんは、非常に優秀なインフラエンジニアでした。しかし彼には、喫煙所などで「うちの会社は給料が安くてさ…」「ここのプロパー社員って、全然技術のこと分かってないよね」と愚痴を言う癖がありました。最初は同調してくれる人もいましたが、次第に周りはうんざり。その噂は客先の担当者の耳にも入り、「Bさんのスキルは認めるが、彼のネガティブな言動がチームに与える悪影響が看過できない」として、契約終了が決定されました。自社の営業も、客先で自社の悪口を言うBさんをかばうことはできませんでした。

どうすれば防げるか

プロフェッショナルとして、現場でのネガティブな発言は絶対にしない、と心に誓ってください。仕事に対する正当な不満や改善してほしい点がある場合は、それをぶちまける相手と場所を間違えてはいけません。相談すべき相手は、客先の同僚ではなく、あなたの味方であるべき「自社の営業担当」や「信頼できる上司」です。彼らに正式なルートで相談し、解決を図るのが正しいビジネスパーソンの作法です。

【契約終了レベル3】勤怠・報告・連絡を軽視する「信用ゼロの幽霊部員」

三つ目は、技術スキル以前の、社会人としての根幹を揺るがす問題です。

どんな行動か

これは、いわゆる「報連相（報告・連絡・相談）」と「勤怠管理」の軽視です。常習的な遅刻や、始業時間ギリギリの勤怠連絡はもちろんNG。それに加えて、「聞かれるまで進捗を報告しない」「問題が発生したのに、抱え込んで報告しない」「相談なく、勝手な判断で仕様を変えて実装する」といった行動も含まれます。リモートワークが普及した今、この問題はより顕在化しやすくなっています。

なぜダメなのか

一言でいえば、「信頼を失うから」です。勤怠がルーズな人は、自己管理能力がないと見なされます。報連相を怠る人は、チームで仕事をする上で最も危険な存在です。あなたの状況がブラックボックス化すると、チームリーダーは適切なタスクの割り振りや、プロジェクト全体のリスク管理ができません。

「あの人に仕事を任せると、今どうなっているか分からなくて不安だ」「彼が休むと、引き継ぎがなくて業務が止まる」こんな状態は、プロジェクトにとって癌でしかありません。どんなに技術力が高くても、管理コストが異常にかかる人材は、真っ先に契約終了の候補に挙がります。スキルが高いから許される、という考えは絶対に通用しません。

陥りがちな心理的背景

「これくらい、言わなくても分かるだろう」「実装で忙しいから、報告は後でいいや」「悪い報告をしたら、怒られるから言いたくない」といった、自分本位な考えや甘えが根底にあります。特に、悪いことほど報告を後回しにしたいという気持ちは誰にでもありますが、それが取り返しのつかない事態を招くのです。

具体的な事例

リモートワーク中心のプロジェクトに参加したCさん。彼は優秀なプログラマーでしたが、報連相に大きな問題を抱えていました。朝会で「順調です」と報告した後、夕方までチャットに何の音沙汰もない。夕会で進捗を聞くと「実は午前中からエラーで詰まっていて、1ミリも進んでいませんでした」と報告。リーダーは「なぜ詰まった時点ですぐに相談しなかったんだ！」と激怒。そんなことが何度か続き、チームの進捗は大幅に遅延。Cさんは「コミュニケーションコストが高すぎる」という理由で、契約を打ち切られました。

どうすれば防げるか

まず、勤怠は「信用そのもの」と心得え、5分前行動を徹底しましょう。連絡は、決められた時間、決められた方法で必ず行う。そして、報連相は「仕事の一部」ではなく「仕事そのもの」と考える意識改革が必要です。

特に重要なのが「悪い報告ほど、早く、正直に」です。問題が発生したら、隠さずに即座にリーダーに報告し、指示を仰ぐ。それがあなたの被害を最小限に食い止め、逆に「正直で信頼できる」という評価に繋がることさえあります。進捗報告も、自分なりのフォーマットを決めて、毎日決まった時間に送るなど、「仕組み」で解決するのが有効です。

【契約終了レベル4】客先のルールを無視する「無法地帯の一匹狼」

四つ目は、チーム開発の根幹を破壊する、非常に危険な行動です。

どんな行動か

これは、プロジェクトやチームで定められたルールを、自己判断で無視する行為です。例えば、定められたコーディング規約を守らずに独自のスタイルで実装する。Gitのブランチ運用ルールを無視してコミットする。コミュニケーションはTeamsを使うというルールなのに、一部の人とだけSlackでやり取りする。定められた手順を踏まずに、本番環境を操作するなど、その範囲は多岐にわたります。

なぜダメなのか

チーム開発において、ルールは全体の生産性と品質を保つための生命線です。あなた一人がルールを無視すると、コードの可読性や保守性が著しく低下し、将来的に大きな技術的負債となります。また、他のメンバーがあなたの書いたコードを修正するのに余計な時間がかかったり、あなたの勝手な行動によって、プロジェクト管理が混乱したりします。

これは、サッカーの試合で一人だけ手を使ってボールを運ぶようなものです。その個人プレーが、チーム全体のパフォーマンスを破壊し、敗北に導きます。客先は、組織の和を乱し、プロジェクトを危険に晒す「一匹狼」を、チームに置いておくわけにはいきません。

陥りがちな心理的背景

「俺のやり方の方が、絶対に効率的だ」「こんな古いルールは、守るだけ無駄だ」といった、自分のスキルへの過信や、根拠のないプライドが原因であることが多いです。また、単純にルールを軽視していたり、キャッチアップを怠っていたりするケースもあります。

具体的な事例

Dさんは、経験豊富なベテランエンジニア。しかし、彼は新しい現場のルールに従うのが苦手でした。「こんな非効率なやり方はやってられない」と、彼はチームで決められた共通ライブラリを使わず、自分が使い慣れた別のライブラリを無断で導入して実装を進めました。その結果、他のメンバーが彼の担当箇所をメンテナンスできなくなり、属人化が深刻化。レビューでの指摘にも「こっちの方が良いんで」と反発し、チーム内で完全に孤立。彼の高いスキルは、チームにとっては「扱いにくい厄介者」でしかなく、契約は更新されませんでした。

どうすれば防げるか

郷に入っては郷に従え。これが鉄則です。新しい現場に入ったら、まずはそのプロジェクトのルール（コーディング規約、ツール、コミュニケーション方法など）を誰よりも深く理解し、完全に遵守することに全力を注いでください。

もし、そのルールに改善すべき点を見つけたとします。その時は、絶対に独断で行動してはいけません。ルールを熟知し、遵守しているあなたが、「このルールにはこういう課題があり、このように改善すれば、チーム全体の生産性がこれだけ上がると思います」と、客観的な根拠を持って正式な場で提案するのです。そうすれば、あなたの提案は「ただの文句」ではなく、「価値ある改善提案」として受け入れられるでしょう。

【契約終了レベルMAX】知ったかぶりで嘘をつく「時限爆弾エンジニア」

そして、最後にして最大級のNG行動。それは、技術的な「嘘」です。

どんな行動か

これは、自分の実力や状況を偽る行為全般を指します。面談時にスキルシートを「盛って」話をし、できないことを「できます」と答える。技術的な質問をされて、分からないのに適当に答えて「知ったかぶり」をする。そして最も罪深いのが、自分が犯したミスを隠蔽したり、できていないのに「終わりました」と嘘の進捗報告をしたりすることです。

なぜダメなのか

これは、もはやスキルや態度の問題ではなく、人としての信頼を根底から覆す行為です。一度「嘘つき」のレッテルを貼られたら、その信頼を回復することはほぼ不可能です。

特に、安請け合いしたタスクが期日になっても全くできていなかったり、隠蔽したミスが後工程で発覚したりした場合、その影響はあなた個人にとどまりません。プロジェクト全体のスケジュールを狂わせ、他のメンバーに多大な迷惑をかけ、最悪の場合、会社に損害を与える大問題に発展します。あなたは、いつ爆発するか分からない「時限爆弾」を抱えたエンジニアと見なされ、即刻プロジェクトから排除されることになるでしょう。技術的な失敗は取り返せますが、信頼を失う嘘は取り返しがつきません。

陥りがちな心理的背景

「できない奴だと思われたくない」「無能だと評価されたくない」という、過剰なプライドや、評価を失うことへの恐怖心が、この最悪の行動を引き起こします。分からないことを「分からない」と言うことに、強い抵抗を感じてしまうのです。

具体的な事例

若手のEさんは、客先との面談で「このミドルウェアの構築経験、豊富です」と見栄を張ってしまいました。その言葉を信じた客先は、彼に環境構築の重要なタスクを任せます。しかし、実際にはほとんど経験のなかったEさん。誰にも相談できず、ネットの情報を頼りに作業を進めますが、案の定トラブルが多発。彼はそれを報告せず、「順調です」と嘘をつき続けました。結果、期日になっても全く環境は完成せず、プロジェクトの開始が1ヶ月遅延する大惨事に。嘘が発覚したEさんは即日契約終了。自社にも大きな損害を与え、彼のエンジニアとしてのキャリアに深い傷を残しました。

どうすれば防げるか

今すぐ、その無駄なプライドを捨ててください。そして、「分かりません。教えていただけますか？」と正直に言う勇気を持ってください。プロの世界では、知ったかぶりをする人より、正直に自分の無知を認め、学ぼうとする人の方が、よほど高く評価されます。

できないことを頼まれたら、「その技術は経験が浅いですが、〇〇を調べればキャッチアップできると思いますので、少しお時間をいただけますか」と、正直な現状と前向きな姿勢をセットで伝えましょう。そして、万が一ミスを犯してしまったら、即座に、正直に、全てを報告する。それが、被害を最小限に抑え、あなたの信頼を守る唯一の方法です。

まとめ：あなたの価値は「技術力 × 信頼」で決まる

ここまで、SESエンジニアが絶対にやってはいけない5つのNG行動をご紹介してきました。

1. 指示待ちで思考停止する「言われたことだけやるマシーン」
2. 悪口を言う「不満のスピーカー」
3. 勤怠・報告・連絡を軽視する「信用ゼロの幽霊部員」
4. ルールを無視する「無法地帯の一匹狼」
5. 知ったかぶりで嘘をつく「時限爆弾エンジニア」

これらに共通しているのは、すべて「信頼」を失う行為である、という一点です。SESエンジニアとしてのあなたの市場価値は、「技術力」と「信頼」の掛け算で決まります。どんなに高い技術力を持っていても、信頼がゼロなら、あなたの価値もゼロなのです。

この記事を読んで、もし一つでも「自分もやってしまっているかも…」とドキッとしたなら、それが変わるチャンスです。今日から、いや、今この瞬間から、自分の行動を見直し、信頼されるエンジニアとは何かを考え、実践してみてください。その小さな意識改革の積み重ねが、あなたを契約終了の恐怖から解放し、どこへ行っても必要とされる、価値あるエンジニアへと成長させてくれるはずです。