「頑張ります」は無能の証。なぜあなたのプロジェクトはいつも遅れるのか、残酷な真実を語ろう

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • いつも締切に追われ、プロジェクトの遅延が常態化してしまっている方
  • 「進捗どう?」と聞くたびに「順調です」という返事しかなく、疑心暗鬼になっているリーダーの方
  • 完璧な計画を立てたはずなのに、なぜかプロジェクトが炎上した経験のある方
  • これからプロジェクトを率いる上で、失敗の本質を学び、同じ轍を踏みたくないと考えている方

完璧なWBS(作業分解構成図)。美しいガントチャート。関係者全員が合意した、綿密なスケジュール。

これだけ準備したのだから、今度こそプロジェクトは予定通りに進むはずだ。

あなたも、一度はそう固く信じたことがあるのではないだろうか。

そして、その期待は無残にも裏切られる。気づけばスケジュールは破綻し、チームは疲弊し、デスマーチが始まる。

なぜ、これほどまでに、プロジェクトは予定通りに進まないのか。

はっきり言おう。問題は、計画の精度や管理ツールの性能ではない。

この記事では、小手先のプロジェクト管理術などという気休めは一切語らない。

あなたのプロジェクトを必ず失敗に導く、人間の「弱さ」と組織の「病」という、誰もが目を背けたい残酷な真実を、容赦なく突きつける。

犯人は「希望的観測」という名の自己欺瞞

プロジェクトが遅延する最大の原因は、その計画段階に、すでに埋め込まれている。

犯人の名は、「希望的観測」だ。

「このタスクは、まあ3日で終わるだろう」 「今回は、たぶん仕様変更は起きないはずだ」 「あの担当者は優秀だから、きっとうまくやってくれるだろう」

心当たりはないだろうか。

これらの「だろう」「はずだ」「きっと」で塗り固められたスケジュールは、もはや計画ではない。それは、ただの「お祈り」だ。

心理学には「計画の錯誤(Planning Fallacy)」という言葉がある。人間は、自分の能力を過信し、物事の完了に必要な時間を不当に短く見積もってしまう、という認知バイアスだ。

つまり、楽観的に計画を立ててしまうのは、人間の本能なのだ。

プロジェクトマネジメント協会(PMI)の調査でも、予算やスケジュールを超過するプロジェクトは後を絶たない。それは、計画の初期段階で、起こりうるリスクや不確実性を意図的に(あるいは無意識に)無視しているからに他ならない。

トラブルが起きない前提、手戻りがない前提、全員が100%のパフォーマンスを発揮する前提。そんな非現実的なおとぎ話をベースにした計画が、予定通りに進むわけがないのだ。

それは自己欺瞞であり、チームメンバーに対する裏切り行為ですらある。

「順調です」は、無能と無関心のサイン

そして、プロジェクトは中盤に差し掛かる。

あなたがチームメンバーに「進捗どう?」と尋ねると、決まってこう返ってくる。

「順調です。問題ありません」

この言葉こそ、プロジェクトが破滅に向かっている、最も危険なサインだ。

断言するが、この世に「問題のないプロジェクト」など、一つも存在しない。

問題が起きていないのではない。問題が見えていないか、あるいは、見えているのに隠しているかのどちらかだ。

「順調です」という言葉の裏には、2つの悪魔が潜んでいる。

一つは、「問題を報告して、自分の無能さを晒したくない。怒られたくない」という、担当者の自己保身という悪魔。

もう一つは、「面倒なことには関わりたくない。波風を立てたくない」という、チーム全体の無関心という悪魔だ。

この2つの悪魔が蔓延したチームでは、小さな問題は誰にも報告されず、水面下で静かに、しかし着実に成長していく。

そして、もはや誰の手にも負えなくなったモンスターとして、締切直前に姿を現すのだ。

これが、「炎上」の正体だ。

リーダーが聞くべきは「順調か?」ではない。「今、一番困っていることは何か?」「想定外の事態は起きていないか?」という、問題を発見するための具体的な問いだ。

そして、チームが持つべきは「悪いニュースほど、早く共有した者が評価される」という文化だ。

必要なのはスキルじゃない。「不都合な真実」と向き合う覚悟だ

ガントチャートの引き方、WBSの作り方。そんなものは、本を読めば誰でも学べる。

だが、プロジェクトを本当に成功に導くのは、そんなスキルやテクニックではない。

それは、プロジェクトに関わる全員が、目の前にある「不都合な真実」から目を背けずに、正面から向き合う「覚悟」だ。

計画段階で、安易な楽観論を排し、「もし最悪の事態が起きたら?」と問い続けることができるか。

問題が発生した時に、「順調です」という嘘でごまかさず、すぐに「助けてください」と声を上げることができるか。

そして、誰かが上げたSOSに対して、犯人探しをするのではなく、チーム全員で「どうすれば解決できるか」と知恵を絞れるか。

安易に「頑張ります」と精神論で乗り切ろうとするのではなく、具体的なリスクと対策をセットで語る誠実さ。

これら全ては、小手先のスキルではなく、プロフェッショナルとしての「あり方」そのものだ。

プロジェクトは、計画通りに進まないのが当たり前。

その前提に立ち、予期せぬ変化や困難を乗り越えるプロセスそのものを楽しむ。

その覚悟を持ったチームだけが、最終的に成功という果実を手にすることができるのだ。

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