
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 「SaaSは成長の星だ!」と信じて投資したのに、株価下落で塩漬け状態になっている方
- ニュースで「金利が…」と聞くたびに、自分の持っているハイテク株が下がる理由を知りたい方
- これからSaaS銘柄に投資したいけど、ベストなタイミングがわからず悩んでいる方
- PERやPBRでは測れない、SaaS企業の本当の価値評価(バリュエーション)について学びたい方
数年前まで、株式市場のスターといえば、間違いなくSaaS(Software as a Service)企業だった。
毎年のように売上を倍増させ、株価は青天井。誰もがその輝かしい未来を信じて疑わなかった。
しかし、その後の「金利上昇」という名の長い冬の時代に、多くのSaaS株は見る影もなく暴落。投資家の夢は、無残にも打ち砕かれた。
なぜ、これほどまでにSaaS株は金利の動きに翻弄されるのか?
「景気が悪くなるから?」いや、それだけでは本質を説明できない。
この記事では、多くの投資家が意外と理解していない「金利」と「SaaS株の価値」の間の、切っても切れない残酷な関係について、そのカラクリを徹底的に解説する。
SaaS株は「未来の利益」を食べて生きている
まず、SaaS企業という生き物の特性を理解しよう。
彼らの多くは、今の時点では赤字か、ほとんど利益が出ていない。
売上から得たキャッシュのほとんどを、広告宣伝費や開発費に再投資し、今はとにかくシェアを拡大することに全力を注いでいるからだ。
彼らの株価を支えているのは、現在の利益ではない。
「今は赤字でも、このまま成長し続ければ、10年後、20年後にはとんでもなく莫大な利益を生むだろう」という、投資家の強烈な「期待」だ。
つまり、SaaS株は「未来の利益」を食べて生きているのだ。
ファイナンスの世界では、企業の株価は「その企業が将来にわたって生み出すであろう利益(キャッシュフロー)の合計を、現在の価値に割り引いたもの」と定義される。
難しく聞こえるかもしれないが、要は「未来に得られるお金は、現在の価値に換算すると、少し目減りしますよ」ということだ。
SaaS株の価値は、この「遠い未来の莫大な利益」を、現在の価値に換算して計算されている、と覚えておいてほしい。
宿敵「金利」が登場。未来のお金の価値が目減りする
ここで、SaaS株の宿敵である「金利」が登場する。
金利とは、カンタンに言えば「お金のレンタル料」だ。
そして、この金利こそが、「未来のお金を現在の価値に割り引く」際の“割引率”として、絶大な力を持っている。
考えてみてほしい。
金利がほぼゼロの世界なら、1年後にもらえる100万円も、今ある100万円も、価値はそれほど変わらない。
だが、もし金利が5%の世界ならどうだろう。
今ある100万円を銀行に預けておけば、1年後には105万円になる。
つまり、金利が高い世界では、1年後にもらえる100万円の現在の価値は、100万円よりもずっと低くなるのだ。
この理屈が、SaaS株を直撃する。
金利が上昇すると、SaaS企業が10年後、20年後に稼ぐはずだった「遠い未来の莫大な利益」を、現在の価値に割り引く際の割引率が大きくなる。
その結果、未来の利益の“現在価値”が大幅に目減りしてしまう。
たとえ企業の業績見通しが何も変わっていなくても、金利が上がるという、ただそれだけの理由で、理論上の株価は大きく下落してしまうのだ。
これが、金利上昇局面でSaaS株が真っ先に、そして最も激しく売られた、本当の理由だ。
再び輝くための条件とは?投資家が本当に見ているもの
では、金利が高いままでは、SaaS株はもう浮かび上がれないのか?
答えは、NOだ。
投資家は、金利の動向だけを見ているわけではない。
金利という逆風が吹く中で、彼らがより一層、厳しくチェックしているポイントがある。
それは、「成長の持続性」と「収益性への意識」だ。
金利上昇という逆風を吹き飛ばすほど、圧倒的なスピードで売上を伸ばし続けることができるか。
いつまでも「将来への投資」と言い訳して赤字を垂れ流すのではなく、コストをコントロールし、黒字化への具体的な道筋を示すことができるか。
例えば、SaaS業界で重要視される「ルール・オブ・40」(売上高成長率 + 利益率 ≧ 40%)という指標がある。これは、企業の成長性と収益性のバランスを示すものだ。
どんなに外部環境が悪くとも、この基準をクリアし続ける企業は、「本物の成長企業」として投資家からの信頼を勝ち取ることができる。
金利の上げ下げに一喜一憂するだけでは、本当の投資はできない。
その逆風の中でも力強く成長し続けられる、本物の優良企業を見極める。
それこそが、SaaS株投資で成功するための、唯一の道なのだ。
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