
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 会社のダイバーシティ推進に、どこか胡散臭さや違和感を感じている方
- 「女性活躍」という言葉のもと、能力と関係なく抜擢されたり、逆に過小評価されたりしていると感じる方
- ダイバーシティを「数合わせ」で終わらせず、本当に強い組織を作りたいと考えている経営者・人事担当者の方
- 多様な人材が、なぜあなたの会社から静かに去っていくのか、その本当の理由を知りたい方
「女性活躍推進!」「多様性のある組織を目指して!」 あなたの会社の壁にも、こんな美しいスローガンが、デカデカと貼られていませんか?
女性管理職の比率目標を掲げ、見栄えのいい育休制度を整え、採用サイトでは多様性をアピール。しかし、その裏側で、本当に優秀な女性社員や、多様なバックグラウンドを持つ尖った人材が、次々と会社を静かに去っていく…。
その恐ろしい現実に、あなたは気づいていますか? 今日は、多くの日本企業が陥っている、形骸化したダイバーシティ施策…すなわち「ダイバーシティごっこ」が、なぜ逆に優秀な人材の流出を加速させてしまうのか。その残酷なメカニズムを、一切の忖度なく解き明かします。
「数合わせ」のダイバーシティが生む、新たな“差別”
多くの企業が犯す、最初の、そして最も致命的な過ち。 それは、ダイバーシティの推進を「女性管理職の比率を30%にする」といった、単なる“数合わせ”のゲームにしてしまうことです。
その結果、何が起きるか。 本人の能力や実績、意欲とは無関係に、「女性だから」という理由だけで、管理職の“席”が与えられる。いわゆる「下駄を履かされた」昇進です。
これは、誰にとっても不幸な悲劇しか生みません。 抜擢された本人は、実力不足に苦しみ、周りからの嫉妬に晒される。 周りの社員は、「どうせ女性は優遇されるんでしょ」と、会社への不公平感を募らせる。 そして、本当に実力のある女性社員は、「私も“女性枠”だと思われるんじゃないか」と、自らのキャリアに誇りが持てなくなる。
これは、ダイバーシティの名の下に行われる、新しい形の“差別”であり“分断”です。帝国データバンクの調査などを見ても、女性管理職の割合はまだまだ低いのが現状ですが、問題は数ではありません。その登用が、全社員が納得できる、公平な基準で行われているか。その「質」こそが、問われているんです。
「インクルージョン」なき多様性は、ただの“動物園”である
次に、理解しておくべき本質的な問題。 それは、多様性(ダイバーシティ)と、受容・一体化(インクルージョン)は、必ずセットでなければ何の意味もない、ということです。
あなたの会社は、世界中から様々な動物を集めてきておきながら、全員を同じ「ライオンの檻」に押し込んでいるような状態になっていませんか? これを、僕は「動物園」状態と呼んでいます。
例えば、 ・子育て中の時短勤務社員がいるのに、重要な会議は18時以降に設定するのが当たり前。 ・外国籍の社員がいるのに、社内の重要文書は日本語のみで、翻訳サポートもない。 ・若手社員が新しいツールの導入を提案しても、ベテラン勢が「昔からのやり方が一番だ」と一蹴する。
これでは、集められた多様な人材は、自らの能力を全く発揮できません。「この会社は、私という個人を理解し、活かす気がないんだな」と感じ、もっと自分らしく輝ける場所を求めて、去っていくだけです。 優秀な人材ほど、自分を殺してまで、居心地の悪い“動物園”に留まってはくれないのです。
優秀な人材が見捨てるのは、“無意識の偏見”にまみれた上司
そして、人材流出の最後の引き金を引く、最も根深い原因。 それは、制度ではなく「人」、特にマネジメント層にこびりついた“無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)”です。
「女性だから、感情的になりやすいだろう」 「子育て中だから、責任のある仕事は任せられないな」 「若いから、まだまだ経験が足りない」
口には出さずとも、上司がこうした無意識の偏見に基づいて、日々の仕事の割り振りや評価を行っているとしたら?それは、部下の可能性の芽を、毎日少しずつ踏み潰しているのと同じことです。
パーソル総合研究所などの調査でも、転職理由の上位には常に「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」が入っています。会社がいくら立派なダイバーシティ方針を掲げても、現場の管理職が旧態依然とした価値観のままでは、全てが絵に描いた餅。
優秀な人材は、会社ではなく、「この上司の下では、自分の未来はない」と、直属の上司個人に見切りをつけて、辞めていくんです。
ダイバーシティとは、採用サイトを飾るための、耳障りのいい“お題目”ではありません。 それは、多様な背景を持つ一人ひとりの社員が、その能力を最大限に発揮できる「環境」と「文化」を、本気で、そして愚直に作り上げるという、極めて高度な経営戦略です。
「数合わせ」のごっこ遊びをやめ、真の「インクルージョン」を追求する。そして何より、管理職であるあなた自身が、自らの内に潜む「無意識の偏見」と向き合う。
それができなければ、あなたの会社は、これからも優秀な人材に、静かに、そして確実に見捨てられ続けるでしょう。 多様性を、会社の“コスト”と見ますか。それとも、“未来への投資”と見ますか。 その答えが、5年後、10年後のあなたの会社の姿そのものになるのですから。
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