
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 地方で製造業や建設業などを営み、新卒採用に本気で困っている経営者の方
- 大手ナビサイトに掲載しても、学生からのエントリーがゼロで心が折れそうな人事担当者の方
- 学生に「地味」「古臭い」「何をしている会社かわからない」と思われていると感じる方
- 新卒採用の具体的な成功事例と、学生の心に響くアプローチ方法を知りたい方
- そろそろ本気で、会社の未来を託せる新卒社員を確保したいと考えている方
今年も新卒採用の季節がやってきましたね。都会のキラキラしたIT企業や、誰もが知る大手メーカーには、何千、何万という学生がエントリーし、華やかな採用イベントが繰り広げられる。その一方で、地方で地域経済を懸命に支えているあなたの会社には、説明会にすら人が集まらない。「ウチは、社会に必要な、真面目でいい仕事をしているのに…」。そんな悔しさと、言いようのない焦りを感じていませんか?
その気持ち、痛いほどわかります。学生にとって、地方の、特にBtoBの「正業」は、残念ながら認知度ゼロに等しい。彼らの視界にすら入っていないのです。だから、給料や待遇、働きがいといった「中身」で勝負する以前に、土俵にすら上がれていないのが現実です。
しかし、もう「地方だから」「地味な仕事だから」と諦めるのは終わりにしましょう。戦い方を180度変えれば、あなたの会社は、学生にとって「何千社の中の一社」ではなく、「私のための、特別な一社」に変わります。この記事では、綺麗事を一切抜きにして、地方の”お堅い”会社が、学生の心を鷲掴みにし、『給料よりも、この会社で働きたい』とまで言わせる新卒採用を成功させた、具体的な戦術のすべてをお話しします。
なぜ学生はあなたの会社を見つけられないのか?残酷すぎる”認知の壁”
まず、新卒採用における最も残酷な真実をお伝えしなければなりません。それは、学生は「あなたの会社を知らない」ということです。株式会社ディスコの調査によると、2025年卒の学生が就職活動で最も役立った情報源は「就職情報サイト(ナビサイト)」がダントツですが、彼らはそこで、自分が知っている企業名や、興味のある業界から検索を始めます。
あなたの会社が、どれだけ優れた技術を持ち、安定した経営を続けていたとしても、学生の検索キーワードに引っかからなければ、その存在は「ない」のと同じです。特に、消費者向けの商品を持たないBtoB企業や、地域のインフラを支えるような「縁の下の力持ち」企業は、学生の日常生活に登場しないため、この”認知の壁”は絶望的なまでに高いのです。
「一度、工場を見学してくれれば、ウチの仕事のすごさがわかるのに」「社員と話してくれれば、人の良さが伝わるのに」。その想いは、学生に届く前の、あまりにも分厚い壁に阻まれてしまっています。新卒採用の第一歩は、この「認知の壁」をどうやって突破し、学生の視界に”登場”するか。ここに全てがかかっています。
「仕事の魅力」を翻訳せよ。学生の心に刺さる言葉の作り方
認知の壁を突破するために、まず取り組むべきは、自社の仕事の魅力を、学生に伝わる言葉に「翻訳」することです。私たちは、無意識のうちに業界の専門用語や、内輪の常識で自社の仕事を語ってしまいがち。しかし、それは学生にとって、まるで馴染みのない外国語のように聞こえてしまいます。
例えば、あなたの会社が精密な金型を作っているとします。求人票に「高精度な金型設計・製造。マシニングセンタのオペレーター募集」と書いて、学生の心が躍るでしょうか?おそらく、ほとんどの学生は「よくわからないけど、難しそう…」と感じてスルーしてしまうでしょう。
これを、学生向けに翻訳してみましょう。 「みんなが毎日使っているスマートフォン。実はその滑らかなボディや、押しやすいボタンを作るために、”魔法の型”が必要なんだ。私たちの仕事は、その魔法の型、つまり超精密な金型を、世界に送り出すこと。君が作った型から、何百万台もの人気商品が生まれるかもしれない。そんなワクワクする仕事をしてみない?」
社会インフラを支える建設会社なら、こうです。 「昨日の大雨、停電も断水もなかったよね?それは、当たり前のことじゃない。みんなが安心して暮らせる”当たり前”を、陰で守っているヒーローたちがいるからだ。私たちの仕事は、決して派手じゃない。でも、この町の未来と、人々の毎日を守る、誇り高い仕事なんだ」
ポイントは、「自分たちの仕事が、学生の日常や、彼らが知っている世の中の出来事と、どう繋がっているか」という視点で語ることです。社長やベテラン社員だけでなく、学生と年齢の近い若手社員に「この仕事の面白いところって、友達にどう説明してる?」と聞いてみるのも、素晴らしいヒントに繋がります。この「翻訳」作業こそが、学生の興味を引くための、最初の、そして最も重要な一歩なのです。
大学キャリアセンターとの「ズブズブな関係」が最強の武器になる
魅力的な言葉が用意できたら、それを届けるための「道」を作る必要があります。新卒採用において、ナビサイト以上に強力な道となるのが、大学のキャリアセンターです。ただし、ただ求人票を送るだけの間柄では、その他大勢の企業の一つとして埋もれてしまいます。目指すべきは、キャリアセンターの職員さんと「ズブズブ」と言われるくらいの、強固な人間関係を築くことです。
まずは地元の大学から。しかし、ターゲットはそれだけではありません。あなたの会社の事業内容と親和性の高い学部(例えば、製造業なら工学部、建設業なら建築学部など)を持つ、近隣県の大学にも積極的に足を運びましょう。
訪問の目的は、単なる求人のお願いではありません。「うちの会社は、こういう想いで、こんな面白いことをやっているんです」「去年、そちらの大学から入社した〇〇君が、今こんなに活躍していますよ」。そうやって、自社の「物語」を熱心に伝え、定期的に情報提供を続けるのです。大学側が主催する合同説明会には必ず参加し、可能であれば、出張講座やOB・OGとの座談会をこちらから提案してみましょう。
これを粘り強く続けることで、キャリアセンターの職員さんは、あなたの会社の「ファン」になってくれます。そうなれば、しめたもの。「君のやりたいことなら、あの会社が面白いよ」「すごく熱心な社長さんがいる、いい会社があるんだけど、話を聞いてみないか?」。職員さんや、時には教授から、学生に直接、あなたの会社を推薦してくれるようになります。これは、どんな広告よりも信頼性が高く、確実な学生との出会いを生み出す、最強のパイプラインです。
インターンシップを「文化祭」にしろ!学生が主役の参加型イベント戦略
大学とのパイプを通じて、学生が興味を持ってくれたら、次はインターンシップです。しかし、ここで退屈な会社説明や、単純作業の体験をさせてはいけません。学生の心を完全に掴むためのインターンシップは、もはや「イベント」であり「お祭り」です。キーワードは、「学生を主役にすること」。
例えば、こんなプログラムはどうでしょう。 「我が社の技術を使って、この地域の課題(例えば、高齢化、観光客減少など)を解決する新商品を企画せよ!」
学生をいくつかのチームに分け、このテーマに取り組んでもらいます。社員は、指示を出す上司ではなく、彼らの挑戦をサポートする「メンター」に徹します。学生たちは、自分たちで地域を調査し、アイデアを出し合い、時にはぶつかり合いながら、企画を練り上げていきます。そのプロセスは、真剣で、熱くて、まさに「文化祭の準備」のような一体感に包まれます。
最終日には、社長や役員、そして地域住民も招いて、盛大なプレゼンテーション大会を開催。最も優れた企画には、豪華な賞品(地元の特産品詰め合わせなどでもOK!)を用意します。
この体験を通じて、学生が得るものは何でしょうか?それは、会社の事業内容への深い理解だけではありません。「この仲間たちと、何かを成し遂げるのは、最高に楽しかった」「この会社は、若者の挑戦を本気で応援してくれる場所なんだ」という、強烈な原体験です。この「楽しかった思い出」こそが、他のどの企業にもない、あなただけの会社を選ぶ、揺るぎない動機となるのです。
内定辞退は「親ブロック」を崩せば防げる。究極の家族巻き込み術
数々の工夫を重ね、ついに学生から内定承諾の返事をもらえた。しかし、ここで安心するのはまだ早い。新卒採用には、「親ブロック」という最後の関門が待ち構えています。特に、お子さんのことを心配する親御さんにとって、聞いたことのない地方企業への就職は、「その会社、本当に大丈夫なの?」という不安の種になりがちです。実際に、株式会社リクルートの調査でも、就職先決定に「親の意向が影響した」と回答する学生は、決して少なくありません。
この最後の砦を崩すための究極の技が、「親御さんをファンにする」ことです。内定者向けの懇親会や、入社前の会社説明会に、ぜひ「ご家族同伴可」の機会を設けてみてください。
そして、その場では、社長であるあなたが、自らの言葉で、親御さんたちに語りかけるのです。「私たちが、どのような想いで会社を経営しているか」「会社の財務状況がいかに健全であるか」、そして何よりも「皆様が大切に育ててこられたお子さんを、私たちが責任をもって、一人前の社会人に育て上げます」と。誠心誠意、その想いを伝えてください。
さらに、実際に社員が働く工場やオフィスを見学してもらい、職場の雰囲気や、先輩社員たちの顔を見てもらうことも、絶大な効果があります。言葉で説明されるよりも、百倍の安心感を与えることができるでしょう。
親御さんが、あなたの会社の最大の「応援団」に変わったとき、内定辞退の可能性は劇的に低減します。学生本人へのフォローはもちろん重要ですが、その背後にいるご家族まで巻き込んでファンにする。これこそが、地方企業が実践できる、最強の内定辞退防止策なのです。
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