
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- SESや二次請け、三次請け企業で「このままでいいのか…」と将来に漠然とした不安を感じているエンジニアの方
- 元請けや自社開発企業への転職を夢見ているが、何から手をつけていいか分からず行動できずにいる方
- 自分のスキルや貢献が、給与という形で見合っていないと怒りや無力感を覚えている方
- 「指示された作業をこなすだけ」の受け身の毎日から脱却し、自分の意思でキャリアを切り拓きたいと本気で願う方
毎日、お疲れ様です。今日も、誰かが作ったよく分からない仕様書通りに、ひたすらコードを書き続ける一日だったでしょうか。自分の書いたその機能が、最終的に何の役に立ち、ビジネスにどう貢献しているのか、あなたは知っていますか?おそらく、知らないでしょう。知らされることもない。
給料はなかなか上がらない。新しい技術を学ぶ時間も機会もない。気づけば、今の現場でしか通用しないスキルばかりが身につき、年齢だけを重ねていく。そんな言いようのない焦燥感に、あなたは苛まれているはずです。
その全ての元凶は、この国のIT業界に深く、そして醜く根を張る「多重下請け構造」という名のシステムです。それは、もはや身分制度と言ってもいい。一種の「カースト」です。そして、残念ながら、あなたはそのカーストの下層にいます。
嘆いても、会社のせいにしても、何も変わりません。この構造から抜け出すか、それとも飼い殺しのままエンジニア人生を終えるか。その選択は、環境ではなく、100%、あなた自身の「意思」と「戦略」にかかっています。
この記事は、綺麗事や理想論を一切排除した、極めて泥臭く、現実的な「下剋上」のための戦略書です。読むには覚悟がいるでしょう。しかし、本気で現状を変えたいと願うなら、目を背けずに最後まで読み進めてください。
まずは認めろ。あなたは「カースト」の底辺にいるという事実を
最初に、残酷な現実を直視するところから始めなければなりません。あなたは、自分が置かれている状況を正しく認識していますか?
経済産業省の調査を見ても、日本のIT業界がいかに異常な多重下請け構造に依存しているかは明らかです。元請けとなる大手SIerが顧客からプロジェクトを丸ごと受注し、その実作業を二次請け、三次請け、ひどい時には四次、五次請けの会社に切り分けて流していく。この構造は、まるで上流から下流に水が流れるように、お金と情報を堰き止めながら進んでいきます。
具体的に想像してみましょう。顧客が元請けに支払うエンジニア一人あたりの単価が月額150万円だったとします。元請けはマージンを抜き、二次請けに100万円で仕事を発注する。二次請けもマージンを抜き、三次請けであるあなたの会社には70万円で話が来る。そして、会社はそこからさらに利益と経費を差し引き、あなたの給料が決まる。
この金の流れを見れば、いかに馬鹿げているか分かるはずです。あなたの給料を決めているのは、あなたのスキルや努力ではありません。所属する会社が、この巨大なピラミッドの「何階層目にいるか」という、ただそれだけの事実です。あなたがどれだけ素晴らしいコードを書こうと、夜中まで頑張ってバグを修正しようと、商流の壁を超えて報酬が上がることは、絶対にありません。
「いや、うちは顧客と直接話せているから大丈夫だ」
本当にそうですか?では、あなたに問います。 「そのシステムの仕様を決める会議に、あなたは呼ばれていますか?」 「なぜその機能が必要なのか、ビジネス上の背景を説明できますか?」 「あなたが作った機能がリリースされた後、売上や業務効率がどれだけ改善したか、具体的な数値を知っていますか?」
これらの問いに一つでも「ノー」と答えるなら、あなたは間違いなくカーストの住人です。顧客の担当者と話せていたとしても、それはただの「御用聞き」であり、あなたは便利な「作業要員」として扱われているに過ぎないのです。まずは、この不都合な真実を、心の底から認めてください。そこが全てのスタートラインです。
なぜ、あなたの市場価値は“買い叩かれる”のか
では、なぜあなたはこのカーストから抜け出せないのでしょうか。環境のせいにするのは簡単ですが、原因はあなた自身にもあります。厳しいですが、その原因を直視しなければ、永遠に同じ場所をループするだけです。
原因1:思考停止の「作業者」でいることを受け入れている
あなたは、いつからか「考えること」を放棄していませんか?上から降ってくる指示書やチケットを、ただ黙々とこなすだけの毎日。なぜこの機能が必要なのか、もっと良い実装方法はないのか、この仕様にはどんなリスクが潜んでいるのか。そうした問いを立てることをやめ、ただ言われた通りの「作業」をこなすだけの存在になっていないでしょうか。
残念ながら、その状態のあなたは、市場から見れば「プログラマー」ですらありません。ただの「コーダー」です。あなたの価値は、プログラミングという専門スキルではなく、「いかに安く、いかに従順に、言われたことをこなせるか」という労働力としてしか評価されていません。だから、買い叩かれるのです。
原因2:陳腐化する「ガラパゴススキル」に安住している
今の現場で数年働いて、業務知識も身につき、特定の技術にも詳しくなったかもしれません。しかし、一歩その現場の外に出たとき、そのスキルは果たして通用するでしょうか。
何年も前のレガシーなフレームワーク、その会社独自の開発ルール、Excel方眼紙で管理される設計書、バージョン管理されていないソースコード…。心当たりはありませんか?これらは、あなたをその現場に縛り付けるための「呪い」です。あなたは、その閉じた環境(ガラパagos)でしか生きられないように、少しずつ飼いならされているのです。その居心地の良さに安住した瞬間、あなたの市場価値は暴落を始めます。
原因3:「情報」と「人脈」が致命的に欠如している
カーストの上層にいるエンジニアたちは、常に新しい技術情報をキャッチアップし、勉強会やカンファレンスで知見を交換し、キャリアの指針となる人脈を築いています。一方、下層にいるあなたのもとには、質の高い情報は流れてきません。流れてくるのは、商流のフィルターを通して歪められ、古くなった断片的な情報だけです。情報格差は、そのままキャリア格差に直結します。あなたは、自分が知らないうちに、どんどん世界から取り残されているのです。
脱出計画。カーストを破壊する3つの武器
絶望的な気分になりましたか?それでいいのです。その絶望こそが、現状を破壊するための最初のエネルギーになります。ここからは、そのエネルギーを具体的な行動に変えるための「3つの武器」について話します。精神論は終わりです。
武器1:「ポートフォリオ」という名の“実力証明”
「職務経歴書に〇〇システムの開発経験(3年)と書けば、評価されるはずだ」 そんな甘い考えは今すぐ捨ててください。採用担当者から見れば、その一文からは何も分かりません。あなたが本当に「作業者」だったのか、それとも主体的に動ける「エンジニア」だったのか、判断のしようがないのです。
言葉は無力です。あなたに必要なのは、コードによる「実力証明」。すなわち、誰の指示も受けずに、あなた自身の意思で作り上げたポートフォリオです。
今すぐGitHubアカウントを作り、個人でアプリケーションを開発し、公開してください。ありきたりのToDoアプリやブログアプリでは意味がありません。重要なのは「Why(なぜ作ったか)」「What(どんな課題を解決するか)」「How(どう作ったか)」の3つを、あなた自身の言葉で語れることです。
そして、ただコードを置くだけでは不十分。READMEに、そのアプリケーションの概要、使い方、アーキテクチャ図、そして「なぜその技術を選んだのか」という設計思想を、これでもかというくらい詳細に記述してください。例えば、「なぜDBにMySQLを選んだのか」「なぜフロントエンドのフレームワークにVue.jsを採用したのか」を、他の選択肢との比較やトレードオフを交えて説明するのです。これができるだけで、あなたはその他大勢の「作業者」から一気に抜け出し、「設計と思考ができるエンジニア」として認識されます。
武器2:「外部発信」という名の“市場価値の可視化”
あなたがどれだけ優秀でも、誰にも知られなければ存在しないのと同じです。あなたのスキルと知識を、積極的に外部に発信してください。これは、あなたの市場価値を「可視化」するための極めて戦略的な行為です。
最も手軽で効果的なのが、技術ブログです。QiitaでもZennでも構いません。あなたが現場で直面したエラーとその解決策、新しく学んだ技術のまとめなど、どんな些細なことでもいいのです。重要なのは「継続」すること。最初は誰にも読まれないでしょう。しかし、あなたの発信はインターネットの海に記録として残り続けます。そして、ある日、あなたの記事に救われる誰かが現れ、あなたの知見を評価する採用担当者の目に留まるのです。
その記事のURLを、あなたの職務経歴書やWantedlyのプロフィールに貼り付けてください。それは、あなたが「業務時間外にも主体的に学習し、得た知識を他者に還元できる貢献意欲の高い人材である」ことを示す、何より雄弁な証拠となります。
武器3:「戦略的転職活動」という名の“情報戦”
準備が整ったら、いよいよ戦場に出ます。しかし、闇雲に転職サイトに登録し、来るスカウトを待つような受け身の姿勢では、また同じカーストの別の階層に移動するだけです。転職活動は「情報戦」です。あなたは、能動的に情報を獲りに行くハンターにならなければなりません。
まず、転職エージェントを「使う」という意識を持ってください。キャリアの相談相手ではありません。彼らは、あなたが普段アクセスできない企業の内部情報や、非公開求人を持っている「情報源」です。複数のエージェントに登録し、同じ質問をぶつけてみてください。彼らの回答の質や角度の違いから、業界のリアルな動向や、あなたの客観的な市場価値が見えてきます。彼らにキャリアパスを委ねるのではなく、あなたが主導権を握り、彼らを駒として使うのです。
そして、少しでも気になる企業があれば、選考を受けるつもりがなくても「カジュアル面談」を申し込んでください。これは、合法的なスパイ活動です。企業の内部に入り込み、現場のエンジニアから開発体制、技術的課題、チームの雰囲気といった生々しい情報を引き出す絶好の機会です。この情報戦を制する者が、転職を制します。
面接官はここを見ている。あなたを「不要」と判断する瞬間
最終関門は面接です。ここで多くの下請けエンジニアは砕け散ります。なぜなら、彼らは面接官が何を知りたがっているかを、根本的に理解していないからです。
面接官が知りたいのは「あなたが過去に何をしてきたか」ではありません。彼らが知りたいのは「あなたが未来に、自社の課題をどう解決してくれるか」という、ただ一点です。
「どんなお仕事をされていましたか?」という質問に対し、 「〇〇というシステムの詳細設計から実装、テストまでを担当していました」 と答えた瞬間、あなたは「不要」の烙印を押されます。それはただの事実の羅列であり、あなたの価値を何も伝えていないからです。
正解は、常に「課題解決」の視点で語ることです。 「前職では、〇〇という手作業が多く発生し、開発生産性が低いという課題がありました。そこで私は、その作業を自動化するスクリプトをPythonで作成し、導入を提案しました。結果として、チーム全体の作業時間を月間で約20時間削減することに貢献しました。この経験は、御社の△△という課題に対しても活かせると考えています」
このように、「課題の特定」「自身の行動」「得られた成果」「未来への貢献」をセットで語るのです。ポートフォリオについて問われた際も同様です。「なぜこの技術を選んだのですか?」という質問は、あなたの思考プロセスと課題解決能力を試すための、最高のチャンスなのです。
最後に問う。あなたは現状維持という“安楽死”を選ぶのか
ここまで、カーストから脱却するための、厳しく、そして具体的な戦略を話してきました。正直、楽な道ではありません。ただでさえ疲弊する日々の業務に加え、個人開発やブログ執筆、情報収集に時間を費やすのは、相当な覚悟と努力が必要です。
しかし、その苦しみから逃げ、今の居心地のいい(と錯覚している)場所に安住すること。それは、エンジニアとしての「安楽死」を選ぶのと同じです。技術は無情なスピードで進化し、あなたは何もしなければ、その価値を刻一刻と失っていきます。気づいた時には、スキルは陳腐化し、年齢だけが高くなり、どこにも行く場所がない「飼い殺し」のエンジニアが完成しているでしょう。
環境や会社のせいにして、不平不満を言うだけで一生を終えるのは簡単です。しかし、あなたの居場所は、あなた自身の行動で変えることができる。カーストの分厚い壁を内側から破壊し、搾取される側から、自らの価値を自分で決める側に移ることは、可能なのです。
その一歩を踏み出すか、それとも踏み出さないか。 決めるのは、他の誰でもありません。あなた自身です。
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