
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 会社のIT予算を獲得するため、日々、経営層と戦っている情報システム部門の方
- 自分が導入したいツールの価値を、上司や役員にうまく説明できず悩んでいる方
- つい技術的な話ばかりしてしまい、「で、結局何なの?」と言われてしまう方
- “コストセンター”から脱却し、攻めのIT投資を実現したい全ての担当者の方
「この最新ツールを導入すれば、セキュリティが強化され、業務効率も飛躍的に向上します!」 あなたが、自信満々にそうプレゼンした瞬間、会議室の空気が凍りつく。役員の一人が、心底うんざりした顔で、こう呟く。 「…で、それはウチの会社にとって、いくらの売上になるの?」
この“悪魔の質問”に、言葉を失った経験はありませんか?
安心してください。それは、あなたの説明が下手だからじゃありません。そもそも、あなたが話している「言語」が、経営層には全く通じていないだけなんです。 今日は、技術の話を一切せずに、あなたの要求を「ただのコスト」から「絶対にすべき投資」へと昇華させる、悪魔的なプレゼン資料の作り方をお話しします。
あなたのプレゼンが“秒殺”される理由。それは「言葉」が違うから
まず、大前提として理解してください。 あなたたちIT担当者と、会社の金庫を握る経営層とでは、使っている「言語」が根本的に違います。
あなたは「機能」「スペック」「効率化」「セキュリティ」という“技術語”で話している。 一方、彼らが理解できるのは「売上」「利益」「コスト削減」「ROI(投資対効果)」という“経営語”だけです。
あなたのプレゼンは、英語しか話せない人に、日本語で必死にシステムの素晴らしさを説いているのと同じ。通じるはずがありません。Gartnerの調査などを見ても、CEOがIT部門に最も期待するのは、いつの時代も「ビジネスの成長への貢献」です。
だから、今日からあなたの辞書から、全ての技術用語を追放してください。そして、全ての主張を「これは、いくらの金になるのか?」という“経営語”に翻訳する。これが、予算交渉のスタートラインです。
予算を通す資料は「3つの箱」で考えろ
では、具体的にどんな資料を作ればいいのか。 難しく考える必要はありません。資料の構成は、たった「3つの箱」を用意するだけで十分です。
1:『現状の痛み』を、金額でえぐり出す 「このままだと、あなたの会社はこれだけ損してますよ」という事実を、具体的な金額で突きつけます。 「現在、手作業によるデータ入力に毎月200時間かかっています。時給3,000円と換算すると、これは年間720万円の“損失”です」 「システムの非効率さが原因で、毎月5件のクレームが発生。その対応コストと機会損失は、年間1000万円に上ります」 このように、現状の「痛み」を、誰が見ても分かる「金額」に変換して、危機感を煽るんです。
2:『解決策』が、どう金を生むかを示す 次に、あなたが提案するIT投資が、箱1で示した痛みをどう癒し、それがいくらの「利益」または「コスト削減」につながるのかを明示します。 「このツールを導入することで、データ入力の作業時間は90%削減され、年間648万円のコストカットが実現できます」 「これにより、クレーム件数はゼロになり、年間1000万円の損失を防ぐことができます」 投資額と、それによって得られるリターンを並べ、明確なROI(投資対効果)を示す。経営者が一番見たいのは、このページです。
3:『なぜ今か』を、恐怖で煽る 最後に、「なぜ来年度ではダメで、今すぐこの投資が必要なのか」を、ロジカルに説明します。 「今この投資をしなければ、競合のA社に市場シェアを5%奪われ、年間3000万円の機会損失が発生するリスクがあります」 「このまま旧システムを使い続けた場合、来年には大規模な情報漏洩が起きる確率が20%高まります。その際の想定損害額は、最低でも1億円です」 「やらないことのリスク」を金額で提示し、「今決断しないと、もっと大きな損をしますよ」と、相手の背中を押す(あるいは崖から突き落とす)のです。
「もし失敗したら?」という最後の砦を突破する殺し文句
どんなに完璧な資料を作っても、必ず賢い役員からこう突っ込まれます。 「計画通りにいかなかったら、どうするんだ?」
この最後の砦を突破する、最強の殺し文句があります。 それは、「スモールスタート」と「明確な撤退基準」の提示です。
「おっしゃる通り、リスクはございます。そこで、まずは営業第一部だけで3ヶ月間、試験的に導入します。この期間で、コスト削減効果が目標の80%に満たない場合は、このプロジェクトは即時、中止・撤退します」
どうですか? これを言われれば、経営層も「リスクは限定的か。それなら、試してみる価値はあるな」と考えざるを得ません。あなたがリスクを冷静に分析し、コントロールできる人間であることを証明する、最高のフレーズです。
IT予算を通すプレゼンとは、技術のデモンストレーションの場ではありません。 それは、「いかにして会社の金を増やせるか」という、あなたの事業計画を問う場なんです。
資料の全てのページに、「¥」のマークが透けて見えるか? 言葉を「技術語」から「経営語」に翻訳できているか?
それができれば、あなたの要求は「コストセンターのお願い」から、「プロフィットセンターの戦略的提案」へと変わります。 そして、役員たちは喜んで、あなたの提案書にハンコを押すでしょう。
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