「フリーランスは楽」←これ、信じたら地獄を見ます。現役フリーランスが語る自由の裏側にある”本当の厳しさ”

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 満員電車や、理不尽な上司、面倒な社内政治にうんざりし、「フリーランスって自由でいいよな…」と憧れている会社員の方
  • SNSで、カフェや旅先でノートパソコンを開く「キラキラしたフリーランス」の投稿を見て、自分もそうなりたいと夢見ている方
  • 「自分のスキルなら、独立すればもっと稼げるはずだ」と、安易に考えてしまっている方
  • すでにフリーランスになったものの、想像していた生活とのギャップに苦しみ、「こんなはずじゃなかった」と感じている方
  • これからフリーランスを目指す上で、成功事例だけでなく、リアルな失敗談や厳しさも知っておきたい、慎重な方

好きな時間に起きて、好きな場所で仕事をする。嫌な人間関係からは解放され、自分の努力がすべて収入に直結する。そんな「自由な働き方」の象徴として、フリーランスという選択肢は、かつてないほど魅力的に映っています。内閣官房の調査でも、日本のフリーランス人口は数百万人規模に達し、その数は年々増加傾向にあると言われています。

しかし、その輝かしいイメージの裏側で、多くの人が語りたがらない「不都合な真実」が隠されているとしたら、あなたはどうしますか?

先に結論から申し上げます。 巷で囁かれる「フリーランスは、会社員より楽だ」という言葉は、真っ赤な嘘です。

こんにちは。私は、会社員を辞めてフリーランスになり、今年で5年目を迎えます。この5年間、自由という名の荒波の中で、天国も地獄も味わってきました。この記事では、そんな現役フリーランスの私が、多くの人が独立前に抱く「甘い幻想」を、一つひとつ、現実という名のハンマーで叩き割っていきます。

これは、あなたの夢を壊すための記事ではありません。あなたが安易な幻想に騙されて再起不能な失敗をしないために、そして、本当の意味で「自由」を勝ち取るために、必ず知っておくべき、リアルな現実の話です。

大嘘①:「時間の自由」という名の、24時間営業の呪い

多くの人がフリーランスに憧れる最大の理由、それは「時間の自由」でしょう。「朝はゆっくり寝て、平日の昼間からカフェでのんびり仕事。満員電車とは無縁の生活…」素晴らしい響きですよね。しかし、現実は全く異なります。

【理想】 自分の采配で、働く時間を自由にコントロールできる。

【現実】 フリーランスになった瞬間から、あなたは「年中無休・24時間営業」の看板を掲げることになります。会社員であれば、勤務時間が終われば、基本的には仕事から解放されます。しかし、フリーランスに「オン」と「オフ」の境界線は存在しません。

クライアントからのメールやチャットは、土日や深夜にも容赦なく飛んできます。「すぐに対応してくれる、レスポンスの速いフリーランス」という評判を勝ち取るためには、常に即応体制を敷いておく必要があります。結果として、心は片時も休まらず、プライベートの時間も常に仕事のことが頭の片隅にある、という状態に陥りがちです。

また、「働かなければ、収入はゼロ」という厳しい現実が、あなたを休みなく働かせます。会社員であれば、有給休暇を使えば、休んでいる間も給料が支払われます。しかし、フリーランスが1日休むということは、1日分の売上が消えることを意味します。病気やケガで働けなくなれば、その瞬間に収入は途絶えるのです。この「休めない」というプレッシャーから、会社員時代よりも長時間労働になってしまうフリーランスは、決して少なくありません。

大嘘②:「人間関係の自由」という名の、全方位外交の始まり

「もう、あの嫌な上司の顔を見なくて済む!」 「面倒な社内政治や、意味のない会議から解放される!」 これもまた、多くの人がフリーランスに抱く、大きな魅力の一つでしょう。しかし、これもまた、大きな勘違いです。

【理想】 嫌な人間関係から解放され、一人で気楽に仕事ができる。

【現実】 会社員時代、あなたの「上司」は、良くも悪くも、社内にいる特定の一人か二人でした。しかし、フリーランスになった瞬間、あなたが出会う「クライアント」は、すべてがあなたの上司、つまり「お客様」となります。

あなたは、もはや単なる作業者ではありません。自社の「営業部長」であり、「プロジェクトマネージャー」であり、「カスタマーサポート担当」であり、時には「経理担当」として、請求書未払いのクライアントに、頭を下げて支払いの催促をしなければならないことさえあります。

会社員時代であれば、営業が取ってきた仕事を、あなたは自分の持ち場でこなしていれば良かったかもしれません。しかし、フリーランスは、仕事を取ってくる段階の「自分を売り込む交渉」から、納品後の「トラブル対応」まで、すべてを一人でこなさなければならないのです。その過程で出会う人々の多様性と、求められるコミュニケーション能力の高さは、社内の人間関係の比ではありません。

そして、多くのフリーランスが直面するのが、「孤独」という名の壁です。仕事の悩みを気軽に相談できる同僚も、共にプロジェクトの成功を喜び合える仲間もいません。すべてを一人で抱え込み、一人で解決しなければならない。この精神的なプレッシャーは、想像以上に重くのしかかります。

大嘘③:「お金の自由」という名の、見えないコスト地獄

「会社に中抜きされず、働いた分がすべて自分のものになる。だから、会社員時代より稼げるはずだ」 これもまた、非常に危険な幻想です。フリーランスの「売上」と、会社員の「給料」を、同じ土俵で考えてはいけません。

【理想】 自分のスキル次第で、青天井に収入を増やせる。

【現実】 フリーランスの「売上(額面)」から、会社員では天引きされていた、ありとあらゆる「コスト」を自分で支払う必要があります。その結果、手元に残る「手取り(可処分所得)」は、同じ額面でも、会社員時代より大幅に少なくなることがほとんどです。

【フリーランスが自分で支払う、見えないコストの数々】

  • 税金: 所得税、住民税に加えて、年間売上が1000万円を超えれば、消費税の納税義務も発生します。これらはすべて、確定申告をして自分で納めなければなりません。
  • 社会保険: 会社員時代の「厚生年金」「健康保険」から、「国民年金」「国民健康保険」に切り替わります。会社の折半負担がなくなるため、保険料の自己負担額は、一般的に2倍近くに跳ね上がります。
  • 経費: パソコンやソフトウェアの購入費、インターネット回線費、事務所の家賃、打ち合わせの交通費や交際費など、仕事に関わるすべての経費は、当然ながら自己負担です。
  • 各種手当・福利厚生の消滅: ボーナス、退職金、住宅手当、家族手当、有給休暇、慶弔休暇、健康診断の補助など、会社が提供してくれていた、あらゆるセーフティネットが、一夜にしてすべて消え去ります。

具体的なシミュレーション: 仮に、会社員時代の年収が500万円だったとします。各種保険料や税金が引かれ、手取りは約400万円ほどでしょう。 一方、フリーランスになって、年間の売上が「500万円」だったとします。ここから、国民健康保険料・国民年金(年間約80万円)、経費(年間50万円と仮定)、そして所得税・住民税などを差し引くと、手元に残る金額は、良くて300万円〜350万円程度になるでしょう。

つまり、会社員時代と同じ手取りを確保するためには、最低でも、年収の1.5倍以上の売上を、毎年、安定して稼ぎ続ける必要があるのです。この厳しい現実を知らずに独立し、資金繰りに窮するフリーランスは後を絶ちません。

では、会社員に戻るべきか?いや、そうではない

ここまで、フリーランスの厳しい現実ばかりをお話ししてきました。「じゃあ、フリーランスになるなんて、やめた方がいいじゃないか」と思われたかもしれません。

しかし、私が言いたいのは、そういうことではありません。

フリーランスという働き方は、「楽」なのではなく、会社員とは全く「ルールの異なるゲーム」である、ということです。

会社員というゲームが、組織という船に乗り込み、船長や航海士の指示のもと、自分の持ち場(役割)を全うすることで、安定した給料と安全な航海が保証されるものだとすれば、

フリーランスというゲームは、たった一人でイカダに乗り、コンパスと星だけを頼りに、大海原に漕ぎ出すようなものです。天候を読み、食料を確保し、時には嵐を乗り切り、新大陸(新しい仕事)を、自力で見つけなければなりません。

どちらが「楽」か、という問いは、そもそも無意味なのです。 そこにあるのは、「安定」と引き換えに「自由(裁量)」が制限される生き方か、「すべての責任」と引き換えに「自由(自己決定権)」を手に入れる生き方か、という、根本的な価値観の選択です。

フリーランスの本当の「自由」とは、「好きな時間に起きられる」ことではありません。 それは、「自分の人生のハンドルを、自分自身で握る」という、厳しくも、何物にも代えがたい自己決定権のことです。

誰の指示も受けず、自分の信じる価値を提供し、その対価を直接受け取る。クライアントを選び、仕事の内容を選び、自分の成長の方向性を、すべて自分で決めることができる。このスリリングで、創造的な生き方に、最大の価値を見出せる人。そして、その自由に伴う、すべての責任とリスクを引き受ける覚悟がある人。

それこそが、フリーランスという名の、孤独で誇り高い航海者たり得る資格を持つ人間なのです。

「フリーランスは楽そうだ」という甘い幻想は、今すぐ捨ててください。その上で、あなたの人生にとって、どちらの「ゲーム」が、より自分らしく、エキサイティングだと感じられるか。もう一度、真剣に、ご自身の心に問いかけてみてください。

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