なぜ、あのエンジニアは最終面接で落ちたのか?技術力だけでは超えられない、内定を勝ち取る思考法の違い

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • コーディング試験や技術面接は通過するのに、なぜか最終面接でいつも落ちてしまうエンジニアの方
  • 「自分の技術力は通用するはずなのに、何がダメなんだろう…」と、面接結果に納得がいかない方
  • 最終面接が「役員との顔合わせ」程度のものだと思っている、あるいは、そう信じたい方
  • これから最終面接を控えており、どんな準備をすればいいか、具体的な対策を知りたい方
  • 技術的なスキルだけでなく、ビジネスパーソンとしての市場価値を高めたいと考えている、向上心のある方

書類選考を突破し、鬼門とも言えるコーディング試験や、現場のエンジニアとの技術問答をくぐり抜け、ついにたどり着いた最終面接。「ここまで来れば、ほぼ内定だろう」そんな淡い期待を抱いたのも束の間、数日後に届いたのは、非情にも「お祈りメール」…。

そんな、悔しい経験をしたことはありませんか? 自分の技術力は、面接の過程で十分に示せたはず。では、一体何が評価されなかったのか?

多くの転職エージェントや採用担当者の間では、最終面接の合格率は「およそ50%」と言われています。つまり、最終面接まで進んだ候補者のうち、実に2人に1人は、この最後の関門で涙をのんでいるのです。

この記事では、多くのエンジニアが気づいていない、最終面接という「ゲームのルール」を解き明かします。そして、「落ちるエンジニア」と「内定を勝ち取るエンジニア」とを分ける、決定的な「思考法の違い」について、具体的な事例を交えながら徹底的に解説していきます。この記事を読めば、あなたが最終面接で本当にアピールすべきことが分かり、自信を持って最後の扉を開けることができるようになるはずです。

大いなる勘違い。最終面接は「技術力の最終確認」ではない

まず、最も重要なことからお話しします。 多くのエンジニアが抱いている「最終面接は、これまでの評価に問題がないかを確認する、ほぼ顔合わせのようなものだ」という認識は、完全な誤りです。

一次・二次面接の面接官が、現場のリーダーや同僚となるエンジニアだったのに対し、最終面接であなたの前に座っているのは誰でしょうか。多くの場合、それはCTO(最高技術責任者)やVPoE(技術部門のトップ)、あるいは事業部長や社長といった、経営の意思決定に深く関わる人物です。

彼らが知りたいのは、「あなたが書けるコードの美しさ」や「知っているフレームワークの数」ではありません。それらのスキルは、すでに現場のエンジニアがお墨付きを与えています。

彼らが見ているのは、たった一つのこと。 「あなたは、会社に投資するに値する『将来性のある人材』か?」 ということです。

彼らは、あなたを「プログラマー」としてではなく、将来、会社の事業成長に貢献してくれる「ビジネスパートナー」候補として見ています。この視点の違いを理解できないまま面接に臨むことが、最初の、そして最大の失敗原因なのです。最終面接は、これまでの面接とは全く異なるルールの、全く新しいゲームだと認識してください。

「落ちるエンジニア」の思考法:ひたすら「What(何をしたか)」を語る

では、具体的に「落ちるエンジニア」は、最終面接でどのように振る舞ってしまうのでしょうか。彼らの思考の中心は、常に「What(何をしたか)」にあります。

面接官:「これまでのご経歴で、最も成果を出したプロジェクトについて教えてください」

落ちるエンジニアの回答例: 「はい。前職では、ECサイトの決済機能のリニューアルを担当しました。バックエンドはGoを使い、マイクロサービスアーキテクチャを採用しました。フロントエンドはReactで、状態管理にはReduxを導入しました。インフラはAWSを使い、コンテナ技術としてDockerとKubernetesを活用して…」

この回答は、一見すると素晴らしいスキルセットをアピールできているように見えます。しかし、最終面接の面接官の頭の中は「?」でいっぱいです。

(…で、その技術を使った結果、会社や顧客にとって、どんないいことがあったの?)

彼らは、技術スタックの羅列を聞きたいのではありません。「What」に終始する回答は、「私は、これだけのことができます」という、過去のスキル報告に過ぎません。それは、すでに書類選考や技術面接で評価済みの情報です。これでは、面接官に「で、うちの会社で何をしてくれるの?」という、最も知りたい問いへの答えを、全く与えることができないのです。

「内定を勝ち取るエンジニア」の思考法:「Why」と「How」で未来を語る

一方、内定を勝ち取るエンジニアは、思考の軸が全く異なります。彼らは「What(何をしたか)」を起点としながらも、必ず「Why(なぜ、それをしたのか)」と「How(どのように貢献できるか)」へと話を展開させます。

思考のシフト①:「What(何をしたか)」から「Why(なぜ、それをしたのか)」へ

彼らは、自分の仕事が、ビジネス上のどんな「目的」のために行われたのかを理解し、自分の言葉で語ることができます。

面接官:「これまでのご経歴で、最も成果を出したプロジェクトについて教えてください」

内定を勝ち取るエンジニアの回答例: 「はい。前職のECサイトでは、カゴ落ち率の高さがビジネス上の大きな課題となっていました。(Why)その課題を解決するため、決済機能のリニューアルを担当しました。(What)技術的にはGoやReact、AWSなどを採用しましたが、(Why)最も重視したのは、ユーザーがストレスなく決済を完了できるUXの実現と、将来の決済手段追加にも柔軟に対応できる拡張性です。**結果として、プロジェクトリリース後、カゴ落ち率を15%改善し、月間の売上に約500万円の貢献をすることができました」

どうでしょうか。同じプロジェクトの話でも、伝わる価値が全く違うことにお気づきでしょうか。 「なぜ、そのプロジェクトが必要だったのか」というビジネス課題から語り始めることで、単なる技術者ではなく、ビジネス課題を解決できる人材であることを、鮮烈に印象付けることができるのです。

思考のシフト②:「自分のスキル」から「相手の事業」へ

内定を勝ち取るエンジニアは、面接を「自分を売り込む場」ではなく、「相手の課題を解決する提案の場」と捉えています。そのために、彼らは徹底的に企業研究を行います。

彼らが見ているのは、採用ページの技術スタックだけではありません。その会社の中期経営計画やプレスリリース、社長のインタビュー記事まで読み込み、「この会社は、今、どこへ向かおうとしているのか」「どんなビジネス課題を抱えているのか」という仮説を立てて面接に臨みます。

面接官:「当社のサービスについて、何かご意見はありますか?」

落ちるエンジニアの回答例: 「はい、拝見しました。とても素晴らしいサービスだと思います。特に〇〇の技術を使われている点に惹かれました」

内定を勝ち取るエンジニアの回答例: 「はい。先日発表された、〇〇事業への進出というプレスリリースを拝見しました。(相手の事業)その上でサービスを拝見し、ユーザー認証の仕組みが今後の事業拡大のボトルネックになる可能性があると感じました。(課題の指摘)前職で、まさに同様の課題をマイクロサービスの導入によって解決し、認証基盤のスケーラビリティを向上させた経験がありますので、その知見は必ず貴社の今後の事業展開に貢献できると考えております」(貢献の提案)

自分のスキルセットが、相手の「未来」にどう貢献できるのかを具体的に語ることで、面接官は「この人を採用すれば、うちの会社はもっと良くなる」という、具体的なイメージをありありと描くことができるのです。

思考のシフト③:「個人の成果」から「チームへの貢献」へ

最終面接官は、あなたが一人で黙々と優れたコードを書くことだけを求めてはいません。あなたがチームに加わることで、チーム全体の生産性がどう向上するのか、という「組織への貢献」を見ています。

  • コードレビューで、どんなことを意識しているか?
  • 後輩のエンジニアを、どうやって育成してきたか?
  • 他のエンジニアと技術的な意見が対立した時、どうやって合意形成を図ったか?
  • チーム全体の開発プロセスを改善するために、どんな提案をしたか?

これらの質問に対して、自分の経験を基に語れるエンジニアは、「個人のプレイヤー」としてだけでなく、「チームをスケールさせられるリーダー候補」として、極めて高く評価されます。

「内定思考」をインストールする、今すぐできる3つの準備

では、この「内定を勝ち取る思考法」を、どうすれば身につけることができるのでしょうか。最後に、最終面接の前に必ずやっておくべき、3つの具体的な準備をご紹介します。

1. 自分の「実績」を「Why-What-Result」で再翻訳する 職務経歴書に書いた、これまでのプロジェクト経験を、もう一度見直してみてください。そして、それぞれのプロジェクトについて、「なぜ、その仕事が必要だったのか(Why)」「具体的に、自分は何をしたのか(What)」「その結果、ビジネスにどんな貢献ができたのか(Result)」の3点セットで語れるように、整理し直しましょう。特にResultは、「〇%改善」「〇〇万円のコスト削減」のように、可能な限り定量的に語れるように準備しておくことが重要です。

2.「企業の健康診断書」を読み解く 企業のIR情報(投資家向け情報)や決算説明資料は、まさに「企業の健康診断書」です。難しいと感じるかもしれませんが、これらの資料には、会社の現状の課題や、今後の戦略が、数字と共に赤裸々に書かれています。すべてを理解する必要はありません。「この会社は、今、何に悩み、どこを伸ばそうとしているのか」という大きな方向性を掴むだけで、あなたの質問の質は劇的に変わります。

3. 面接官の「課題」を解決する質問を用意する 面接の最後に必ず聞かれる「何か質問はありますか?」という時間は、最大のアピールチャンスです。 「福利厚生について教えてください」といった自分本位な質問ではなく、相手の課題に寄り添う質問を準備しましょう。

良い質問の例: 「〇〇という課題を解決するために、現在、技術部門ではどのようなアプローチを取られているのでしょうか?もし私が入社させていただけた場合、どのような形で貢献できる可能性があるとお考えですか?」

このような質問をすることで、あなたは「評価される側」から、相手の課題解決を共に考える「ビジネスパートナー」へと、立場を逆転させることができるのです。

技術力は、あなたを最終面接の舞台まで連れて行ってくれる、大切なパスポートです。しかし、その先の扉を開けるのは、技術力だけではありません。あなたの技術が、いかにビジネスを加速させ、会社の未来に貢献できるのか。その物語を、あなた自身の言葉で熱く語ること。

それこそが、最終面接を突破するための、唯一にして最強の鍵なのです。

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