【市場価値2.0】PL/BSが読めないエンジニアは“ただの作業者”で終わる。給料を上げる最終兵器としての会計思考

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「自分の技術力が正当に評価されていない」と給料に不満を抱いているエンジニアの方
  • 技術的な正しさを主張しても、ビジネスサイドの人間になぜか話が通じないと感じている方
  • いずれはテックリードやCTOを目指したいが、何を学ぶべきか分からない方
  • コードを書くだけの「駒」から脱却し、事業の意思決定に関わる人材になりたい全ての方

「財務諸表? PL/BS? そんなの経理や経営企画の仕事だろ。俺たちエンジニアには関係ない」。もし、あなたが本気でそう思っているなら、はっきり言ってあなたの市場価値は“頭打ち”です。そして、そのキャリアは「ただの作業者」として、誰かに使われるだけで終わることが確定しています。

なぜ、こんなに頑張ってコードを書いているのに、給料は上がらないのか。なぜ、あの人の提案はすんなり通るのに、自分の技術的な提案は却下されるのか。その答えは、あなたが「会社の言語」を理解していないからです。そして、その言語こそが、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)に代表される「会計」なのです。

この記事は、小難しい会計の教科書ではありません。技術の世界で生きるあなたが、なぜ財務諸表という「事業の設計図」を読むべきなのか。それを理解し、自らのキャリアをハックするための「思考のOS」をインストールする、極めて実践的な戦略書です。自分の価値を根底から見直し、その他大勢から抜け出す覚悟があるなら、読み進めてください。

なぜあなたの給料は上がらないのか?PLが教える不都合な真実

「今月は深夜まで頑張って、大規模なリファクタリングをやり遂げた」「あの難解なバグを一人で解決した」。素晴らしい。エンジニアとして誇るべき仕事でしょう。しかし、その“頑張り”は、会社の利益に1円でも貢献したのでしょうか?そして、あなたの給料は、その利益から支払われているという、あまりにも当然の事実を理解していますか?

PL(損益計算書)は、会社が一定期間にどれだけ儲けたかを示す「成績表」です。構造は至ってシンプル。

売上高 – 売上原価 = 売上総利益(粗利) 売上総利益 – 販管費 = 営業利益

そして、あなたの給料や、あなたが使っているPC、ライセンス費用といったエンジニアリング組織にかかるコストのほとんどは、「売上原価」か「販管費(販売費及び一般管理費)」に含まれています。つまり、あなたは会社にとって「コスト」なのです。

この冷徹な事実から目を背けてはいけません。会社があなたに支払う給料を上げるためには、その原資となる「利益」を増やすしかありません。そして、利益を増やす方法は、突き詰めれば「売上を上げる」か「コストを下げる」かの二択です。

あなたがやり遂げたその仕事は、このどちらかに貢献していますか?

「リファクタリングによって、サーバー費用が年間300万円削減できた」 「決済処理の改修によって、コンバージョン率が0.5%向上し、売上が月間50万円増加した」

このように、自分の技術的な成果を「円」という全社員共通の単位で語れますか?もし語れないのであれば、あなたの頑張りは、経営層から見れば「よく分からないけど、何かやっている人」という評価で終わってしまいます。自己満足のマスターベーションと判断されかねません。

PLの視点を持つとは、自分の仕事が、事業のどの数字にインパクトを与えるのかを常に意識することです。その意識が芽生えた瞬間、あなたは単なるコストセンターから、利益を生み出すプロフィットセンターへと変貌を遂げるのです。

その投資、本当に必要?BSが暴く「自己満技術」の虚しさ

「このシステムはもう古い。技術的負債が溜まっているから、最新のGo言語とマイクロサービスアーキテクチャで全面的に作り直すべきです!」

エンジニアであれば、一度はこんな衝動に駆られたことがあるでしょう。技術的な好奇心、より美しい設計への探求心。それ自体は尊いものです。しかし、ビジネスの世界では、それは時として「最も危険な病」となります。

ここで登場するのが、BS(貸借対照表)です。BSは、ある時点での会社の財産状況を示す「健康診断書」のようなもの。左側(資産)に「会社が持っている財産」、右側(負債・純資産)に「その財産をどうやって調達したか」が書かれています。

あなたが「システムを全面的に作り直したい」と提案することは、会社に対して「この事業に、追加で数千万円の”投資”をしてください」と要求しているのと同じです。経営者は、BSを見ながら常に考えています。「限られた資金(負債・純資産)を、どの資産に投下すれば、将来最も大きなリターン(利益)を生むだろうか?」と。

あなたの「作り直したい」という提案は、この経営者の問いに答えられますか?

「技術的にクールだから」「個人的にスキルアップしたいから」という動機は、経営者にとってはノイズでしかありません。彼らが聞きたいのは、「その投資によって、具体的にいつ、いくらの現金が会社にもたらされるのか」という一点だけです。

「この改修に2,000万円投資すれば、開発スピードが3倍になり、競合より半年早く新機能を市場に投入できます。それによる機会損失の防止額は5,000万円です」 「サーバーアーキテクチャを見直すことで、現在のクラウド費用という資産を年間800万円圧縮でき、その分を新規事業のマーケティング費用に振り向けられます」

このように、BSの視点、つまり「投資とリターン」という視点で語ること。これができなければ、あなたの技術的欲求は「自己満」のレッテルを貼られ、却下され続けるだけです。ビジネスの世界では、技術的な正しさだけでは、1円の価値も生まないのです。

「事業の航海図」を読めば、あなたの次のキャリアが見える

財務諸表は、会社の過去の成績表や健康診断書であると同時に、未来の行き先を示す「航海図」でもあります。これを読み解く能力は、あなた自身のキャリアの羅針盤となります。

上場企業であれば、四半期ごとにIR情報として決算短信や有価証券報告書を公開しています。この中に、宝の地図が隠されています。

例えば、PLの「研究開発費」の項目を見てみましょう。この数字が年々増加しているのであれば、会社は将来のために、新しい技術やプロダクトへ積極的に投資している証拠です。ここに身を置けば、最先端の技術に触れるチャンスが増えるかもしれません。

逆に、特定の事業セグメントの「売上高」が何年も横ばい、あるいは減少傾向にあり、ある日突然「減損損失」という項目が計上されたら要注意です。会社はその事業の将来性に見切りをつけ、撤退(事業売却やサービス終了)を考えているサインかもしれません。そんな泥舟に乗り続けていては、あなたのキャリアも一緒に沈んでしまいます。

これは、なにも今いる会社に限った話ではありません。転職を考えた時、あなたは何を基準に企業を選びますか?「事業内容が面白そう」「給料がいい」「技術スタックがモダン」。それもいいでしょう。しかし、その会社は本当に成長していますか?財務状況は健全ですか?

転職候補の企業のBSを見て、自己資本比率が極端に低くないか(倒産リスクは高くないか)。PLを見て、売上と利益がきちんと伸びているか(昇給の原資はあるか)。キャッシュフロー計算書を見て、本業でしっかり現金を稼げているか(黒字倒産の危険はないか)。

求人票の美辞麗句や、面接官の威勢のいい言葉に騙されてはいけません。数字は嘘をつきません。財務諸表という客観的なファクトに基づいて企業を分析する能力は、あなたのキャリアを危険から守り、成長軌道に乗せるための最強の自己防衛術なのです。

経営者と“同じ言語”で語れ。それがその他大勢から抜け出す唯一の道

結局のところ、エンジニアが財務諸表を読むべき最大の理由は、経営者や事業責任者と対等に話すためです。

あなたが普段話しているのは、「APIのレスポンスが」「CI/CDパイプラインが」「データベースの正規化が」といった、技術の言語(How)です。 一方、経営者が話しているのは、「顧客獲得コスト(CAC)が」「ユニットエコノミクスが」「営業利益率が」といった、会計の言語(What/Why)です。

この二つの言語は、ほとんど通訳不可能です。だから、話が噛み合わない。あなたの技術的な正しさが、ビジネスのインパクトに翻訳されない。

財務諸表は、この断絶された言語を繋ぐ、唯一の共通言語です。

あなたが「この開発には3人月かかります」と報告するのをやめ、「この機能開発に〇〇円の工数(人件費)を投資すれば、解約率が5%改善し、顧客生涯価値(LTV)が△△円向上する見込みです」と語った時、経営者の見る目は変わります。

あなたはもはや、言われたものを言われた通りに作る「作業者」ではありません。事業の成長に責任を持ち、技術という手段を使って利益を最大化する「ビジネスパートナー」として認識されるのです。

そうなれば、あなたの立場はどう変わるでしょうか?より大きな裁量と責任が与えられ、事業の根幹に関わる意思決定の場に呼ばれるようになるでしょう。そして、あなたの報酬は、もはや業界の平均的な給与テーブルではなく、あなたが生み出した「利益」に基づいて決定されるようになるのです。

財務諸表を読むことは、会計士になることではありません。それは、自分の技術力を、ビジネスの世界で通用する「価値」へと昇華させるための、最も確実で、最も知的な自己投資なのです。さあ、今すぐ自社の決算短信を開き、まずは「売上高」の数字を眺めることから始めてみませんか?そこから、あなたの新しいキャリアが始まります。

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