【Z世代へ、最後通牒】君の「いい感じ」は、プロジェクトを殺す。無自覚に現場を破壊する要件定義の“甘え”

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「タイパ」を重視するあまり、仕事の本質的な部分をショートカットしがちなZ世代の若手社員の方
  • 上司や先輩から「で、結局何が言いたいの?」と何度も聞き返され、自分のコミュニケーション能力に疑問を感じ始めた方
  • チャットツールでのやり取りは得意だが、複雑な物事を定義し、合意形成することに絶望的な苦手意識がある方
  • その“致命的な甘え”を自覚し、プロジェクトを動かす本物のビジネスパーソンへと脱皮したい、向上心のあるあなた

デジタルネイティブとして生まれ、驚異的なスピードで情報を処理し、洗練されたUI/UXを呼吸するように使いこなす。あなたの世代が持つその能力は、疑いようもなく素晴らしい。しかし、その“当たり前”が、ビジネスの根幹である「要件定義」という極めてアナログな世界において、致命的な欠陥となっている事実に、あなたは気づいていますか?

はっきりと言いましょう。あなたのその「いい感じで」「よしなに」という、チャットアプリのスタンプのような感覚的なコミュニケーションは、プロジェクトを静かに、しかし確実に、破滅へと導いています。あなたは良かれと思ってやっているその行動が、知らず知らずのうちに、チームに混乱を招き、手戻りの山を築き、無駄なコストを垂れ流す原因となっているのです。

この記事は、Z世代をいたずらに批判するためのものではありません。あなたの世代が持つポテンシャルを最大限に引き出すために、無自覚に犯してしまっている“致命的なミス”とその根源を、一切の忖度なく、ロジカルに解き明かすための「最後通牒」です。厳しい現実を直視し、その他大勢の「指示待ちワーカー」から抜け出す覚悟がある方だけ、お読みください。

チャットの“文脈”は幻想だ。テキストの断片化が招くコミュニケーション地獄

あなたの仕事のコミュニケーションは、そのほとんどがチャットツール上で完結していませんか?Slack、Teams、LINE WORKS…。手軽で、非同期で、タイパが良い。素晴らしいツールです。しかし、こと「要件定義」において、このチャット中心主義は、最悪の選択です。

偽物のPMを特集したプロジェクトマネジメント協会(PMI)の調査では、プロジェクトが失敗する最大の原因として、常に「不正確な要求事項の収集」と「コミュニケーション不足」が挙げられています。あなたのそのチャット、まさにこの失敗要因を、自ら作り出してはいませんか?

考えてみてください。一つの機能要件について、関連チャンネルで50件の返信スレッドがぶら下がり、あちこちで絵文字リアクションが飛び交い、重要な決定事項が誰かの「後でスレッド見ておきます」という一言で流されていく。後からそのスレッドを追いかけた人間が、一体どうやって正確な仕様を理解できるというのでしょうか。

あなたは「文脈を読め」と言うかもしれません。しかし、チャットにおける文脈など、その瞬間に参加しているメンバーだけが共有する、極めて脆い幻想にすぎません。情報は断片化され、時系列は乱れ、決定事項とその背景にある「なぜ」が、いとも簡単に失われます。

「この件、前に話しましたよね?」 「いや、その話は聞いていません」

この不毛なやり取りの根本原因は、あなた方が「対話」を避け、「テキストの送受信」に逃げているからです。複雑な要件、曖昧な要求、利害関係者の対立。これらは、テキストの断片では決して解決できません。必要なのは、面倒でも関係者を集め、顔を見て、声のトーンや表情を読み取りながら、リアルタイムで議論を戦わせる「同期的な対話」なのです。

30分間の会議を「タイパが悪い」と切り捨てるあなたのその判断が、結果として3日間の手戻りを生んでいる。その致命的な矛盾に、あなたは気づくべきです。

そのFigma、ただの“お絵描き”です。見た目から入る思考停止の罠

あなたの世代は、優れたデザインセンスを持ち、FigmaやAdobe XDといったプロトタイピングツールを、まるでWordやExcelのように使いこなします。それは強力な武器です。しかし、その武器の使い所を、根本的に間違えている。

要件定義の初期段階で、いきなり完璧なデザインカンプを作っていませんか?クライアントや上司に「こんな感じの画面はどうでしょう?」と、美しいUIを見せて、「おお、いいね!」という承認を得る。一見、仕事が早く、コミュニケーションが円滑に進んでいるように見えます。

しかし、それはただの「お絵描き」であり、思考停止に他なりません。

要件定義の本質とは、「何を(What)」「なぜ(Why)」解決するのかを定義することです。それは、美しい画面のデザイン(How)よりも、遥かに上流の工程です。

「このボタンを押すと、どういうデータが、どこから取得され、どう処理されて、どこに保存されるのか?」 「そもそも、この機能は、ユーザーのどの課題を解決し、ビジネスのどのKPIに貢献するのか?」 「例外的なケース(エラー処理)は、全部で何パターン想定する必要があるのか?」

こうした、泥臭く、地味で、しかしシステムの根幹をなす問い詰めをすっ飛ばして、見た目のデザインに飛びつく。その結果、何が起きるか。見た目は立派だが、裏側のロジックは何も定義されておらず、いざ開発段階になってから「これ、どう実装するの?」とエンジニアが頭を抱える。あるいは、そもそも誰も求めていなかった、自己満足の機能が出来上がるのです。

美しいUIは、強力な麻酔です。それは、議論と思考の不足という、プロジェクトの根本的な病状を、一時的に覆い隠してしまいます。あなたが最初に開くべきはFigmaではありません。それは、テキストエディタか、ホワイトボードなのです。まずは、機能要件を箇条書きにし、データの流れを箱と線で描き出す。その地味な作業こそが、プロジェクトの骨格を作るのです。

「ググれば分かる」は通用しない。人の頭の中にしかない“暗黙知”を軽視する罪

あらゆる情報がインターネット上にあり、分からないことがあればすぐにググる。その習慣は、あなたの高い情報収集能力の証です。しかし、ビジネスの世界、特に要件定義の現場では、その成功体験が、逆にあなたの視野を狭めています。

あなたが本当に知るべき重要な情報のほとんどは、ネット上には絶対に落ちていません。それは、関係者の「頭の中」にしか存在しないのです。

  • なぜ、このシステムはこんなに複雑で分かりにくい仕様になっているのか?(→10年前に導入した際の、政治的な経緯や技術的制約)
  • クライアントが口にする「いい感じに」の、本当の意味は何か?(→過去の失敗体験からくる、言葉にできない不安や期待)
  • 現場のユーザーが、本当に毎日困っていることは何か?(→マニュアルには書かれていない、非公式な運用ルールや裏技)

これらは、検索キーワードを打ち込んでも、絶対に答えが出てこない「暗黙知」です。これを引き出す唯一の方法は、人と会い、話し、質問し、そして何よりも「聞く」ことです。

あなたは、ヒアリングの場で、相手の話を遮って「それって、つまり〇〇っていうことですよね?」と、知っている言葉で要約してしまっていませんか?相手が言い淀んだ時に、「分かりました、後は調べておきます」と、対話を打ち切っていませんか?

それは、相手の頭の中にある宝の山を、自ら放棄しているのと同じ行為です。要件定義とは、情報を集める作業ではなく、人と人との対話を通じて、言葉になっていない要求や課題を「発掘」する、極めて人間的な作業なのです。あなたのその卓越したググり力は、残念ながらここでは何の役にも立ちません。

「分かりました」は思考停止の合図。健全な衝突を避ける“臆病さ”

「何か質問はありますか?」と聞かれ、あなたは心の中で(いや、全然意味が分からない…)と思っていても、その場の空気を読んで「大丈夫です、分かりました」と答えてしまう。心当たりのある方は、非常に多いのではないでしょうか。

対立を避け、波風を立てないようにする。その態度は、一見すると協調性があるように見えます。しかし、要件定義の場において、それは最も悪質な「嘘」であり、プロジェクトに対する「裏切り」です.

要件定義とは、いわば「仕様のバグ」を、開発が始まる前に見つけ出す、最も重要なデバッグ工程です。

「Aという要求と、Bという要求は、矛盾していませんか?」 「その機能は、本当に今回のスコープに必要ですか?目的が分かりません」 「その仕様では、技術的に実現が困難か、あるいは膨大なコストがかかります」

こうした「健全な衝突」を避けて、分かったふりをして持ち帰る。その結果、開発が始まってから矛盾が発覚し、全てが手戻りになる。そのコストは、要件定義の段階で指摘するコストの、実に10倍から100倍にもなると言われています。あなたのその場しのぎの「分かりました」が、会社にどれだけの損害を与えているか、想像したことがありますか?

分からないことを「分からない」と言う。おかしいと思ったことに「おかしい」と声を上げる。それは、あなたの能力が低いからではありません。むしろ、プロジェクトに対する責任感の高さの証なのです。あなたのそのデジタルネイティブとしての鋭い感覚で、上の世代が気づかないような仕様の矛盾や、古い常識の不合理さを、誰よりも早く見つけられるはずです。空気を読むな。仕様を読め。そして、臆することなく、声を上げるのです。

厳しいことを言いましたが、これらは全て、あなたの世代が持つ素晴らしいポテンシャルを、正しくビジネスの力へと転換するために、どうしても乗り越えなければならない壁です。あなたのスピード感、デザインセンス、情報収集能力。これらに、泥臭いまでの「対話力」と「思考の深さ」が加わった時、あなたは、どの世代も到達できなかった、最強のビジネスパーソンになることができるのです。さあ、チャットを閉じて、人の目を見て話すことから、始めてみませんか。

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