
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 一生懸命話しているのに、相手に意図が伝わらないことが多い方
- 上司への報告や同僚への連絡(報連相)が苦手だと感じている方
- 話が長くなりがちで、まとめるのが下手だと自覚している方
- 会議で発言する時に、頭が真っ白になってしまうことがある方
- 思考をクリアに整理し、誰にでも分かりやすく話せるようになりたい方
良かれと思って詳しく説明しているのに、相手の表情はどんどん曇っていく…。 そして、恐れていた一言が飛んでくる。
「…で、結局、何が言いたいの?」
この言葉は、ビジネスパーソンの心を折る、最も破壊力のある言葉の一つかもしれません。自分の熱意や努力が、全く相手に届いていなかったと突きつけられる、あの無力感。あなたも、一度は経験があるのではないでしょうか。
もし、あなたが「自分は説明が下手なんだ」と落ち込んでいるなら、安心してください。 その原因は、あなたの能力や熱意が足りないからではありません。ただ、「頭の中を整理する方法」と「伝わる話し方の型」を知らないだけなのです。
この記事では、なぜあなたの話が伝わらないのか、その根本原因を解明します。そして、話す前に勝負を決める思考整理術から、明日からすぐに使える具体的なコミュニケーションのフレームワークまで、「伝わる話し方」の全てを徹底的に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたは「何が言いたいの?」という言葉に怯える自分から卒業し、誰に対しても自信を持って、簡潔に、そして分かりやすく自分の考えを伝えられる「コミュニケーションの達人」へと生まれ変わっているはずです。
なぜ、あなたの話は「伝わらない」のか?よくある3つのコミュニケーション事故
まず、なぜ私たちの話は相手に届かないのか。多くの人が無意識に起こしてしまっている「コミュニケーション事故」のパターンから見ていきましょう。
事故1:思考の「生放送」をしてしまっている
頭の中に浮かんだアイデアや情報を、整理しないまま時系列で話し始めてしまう。これは、いわば思考の「生放送」状態です。 「昨日A社に行ったら、担当の〇〇さんがこんなことを言っていまして、それでB社の資料も見てみたんですが、そこには△△と書いてあって、そういえば先週の会議でも…」 この話し方では、聞き手は何が重要で、何がただの雑談なのかを判断できず、あっという間に話の迷子になってしまいます。話している本人も、着地点を見失いがちです。
事故2:相手の「知りたいこと」ではなく「自分が話したいこと」を話している
特に、自分が努力したプロジェクトの報告などの場面で起こりがちです。 「この結論に至るまでに、どれだけ苦労したか」「こんな細かい分析もしたんだ」という、自分の頑張りのプロセスを全て伝えたくなりますよね。 しかし、多くの場合、聞き手である上司やクライアントが知りたいのは「結論」「その理由」「自分(聞き手)への影響」の3つだけです。 この「自分が話したいこと」と「相手が知りたいこと」のギャップが、相手にとって「話が長い」「要点が分からない」というストレスの原因になります。
事故3:「事実」と「意見」がごちゃ混ぜになっている
これは、信頼性を大きく損なう事故です。
- 事実:誰が見ても同じように認識できる客観的な情報。(例:売上が前月比で10%減少した)
- 意見:事実に対する、個人の解釈や感想。(例:このままでは非常にまずいと思う)
この2つを「前月比で10%も売上が落ちて、もうこの事業はダメだと思います」のように、ごちゃ混ぜにして話してしまうと、話全体の客観性が失われます。 聞き手は、「本当にそうなの?あなたの感想では?」と疑念を抱いてしまいます。信頼されるコミュニケーションの基本は、事実と意見を明確に分けて提示することなのです。 産業能率大学が実施した調査でも、上司が部下とのコミュニケーションでストレスを感じる点として「話が分かりにくい・要領を得ない」が常に上位に挙げられており、この問題の根深さを示しています。
【準備編】話す前に勝負は決まる!思考を整理する2つのステップ
「伝わる話し方」の秘訣は、流暢に話すテクニックではありません。実は、話し始める前の「準備」の段階で、その成否は8割決まっています。
ステップ1:「伝える目的」と「相手」を明確にする
まず、パソコンに向かう前、あるいは会議室に入る前に、自分に2つの問いを投げかけてください。
- このコミュニケーションの「目的」は何か?
- 相手に情報を共有したいだけなのか?(報告)
- 相手の意見や判断を仰ぎたいのか?(相談)
- 相手に行動してほしいのか?(依頼・提案)
- 伝える「相手」はどんな人か?
- この件について、相手はどこまで知っているか?(前提知識)
- 相手は何を期待しているか?(結論?プロセス?リスク?)
- 相手の性格や立場は?(せっかち?じっくり聞きたいタイプ?)
この2点を明確にするだけで、伝えるべき情報の取捨選択が自然とできるようになります。「全部話さなきゃ」という呪縛から解放され、本当に必要な情報だけをコンパクトにまとめることができるのです。
ステップ2:伝えたいことを「構造化」する(ピラミッドストラクチャー)
頭の中が整理できたら、それを紙やメモ帳に書き出して「見える化」しましょう。 ここでおすすめなのが「ピラミッドストラクチャー」という考え方です。
- まず、一番伝えたいメインメッセージ(結論)をピラミッドの頂点に置きます。
- 次に、その結論を支える複数の根拠(キーメッセージ)を、その下に並べます。
- さらに、各キーメッセージを裏付ける具体的なデータや事実を、その下に配置します。
この一枚のピラミッド図を作るだけで、自分の考えが論理的に整理され、話の骨格が出来上がります。話している途中で迷子になっても、この「設計図」に戻れば大丈夫。プレゼン資料の構成を考える時にも、そのまま応用できる超強力なツールです。
【実践編】もう迷わない!シーン別・最強のコミュニケーションフレームワーク
さて、準備が整ったらいよいよ実践です。ここでは、あらゆるビジネスシーンで使える、思考を整理し簡潔に伝えるための3つの「型」を紹介します。
フレームワーク1:【報告・説明の王道】PREP法
これは最も有名で、かつ万能なフレームワークです。迷ったら、まずこれを使ってください。
- P (Point): 結論「結論から申し上げますと、〇〇です。」
- R (Reason): 理由「なぜなら、△△だからです。」
- E (Example): 具体例「例えば、□□というデータがあります。」
- P (Point): 結論(再)「以上のことから、〇〇ということが言えます。」
最初に結論を伝えることで、相手に話のゴールを示し、安心して聞いてもらえます。報告・連絡・相談など、日々のコミュニケーションの基本形として、徹底的に体に染み込ませましょう。
フレームワーク2:【提案・交渉に効く】SDS法
少し長めの話や、相手に何かを提案する際に効果的なのがSDS法です。
- S (Summary): 全体像「本日は、〇〇の件について、3点お話しします。まず△△、次に□□、最後に◇◇です。」
- D (Details): 詳細「ではまず、1点目の△△についてですが…(中略)。次に2点目の□□ですが…」
- S (Summary): まとめ「以上、3点についてお話ししました。本日のまとめとして、最も重要なのは〇〇ということです。」
最初に話の「地図」を提示することで、聞き手は全体像を把握し、自分の頭の中を整理しながら話を聞くことができます。相手を置いてきぼりにしない、丁寧なコミュニケーションを実現できます。
フレームワーク3:【問題解決・改善提案に】TAPS法
相手の共感を引き出し、提案の納得感を高めたい時に絶大な効果を発揮するのがTAPS法です。
- T (To Be): あるべき姿「私たちのチームが目指すべき理想の状態は、〇〇です。」
- A (As Is): 現状「しかし現状は、△△という状態にあります。」
- P (Problem): 問題「この理想と現状のギャップ、すなわち□□が、私たちが解決すべき問題です。」
- S (Solution): 解決策「そこで、この問題を解決するために、◇◇という解決策を提案します。」
現状の課題だけを突きつけるのではなく、まず「輝かしい未来(To Be)」を示すことで、相手をポジティブな気持ちにさせ、当事者として議論に引き込むことができます。ストーリーテリングの力で、人を動かすためのフレームワークです。
まとめ:論理的コミュニケーションは「思いやり」のスキルである
今回は、もう「何が言いたいの?」と言わせないための、思考整理術とコミュニケーションの型について、徹底的に解説してきました。
- 話が伝わらないのは、「思考の生放送」「自分本位」「事実と意見の混同」が原因。
- 話す前に、「目的と相手」を明確にし、「ピラミッド構造」で思考を整理することが成功の8割を決める。
- シーンに応じて、「PREP法」「SDS法」「TAPS法」という最強の型を使い分ける。
最後に、最も大切なことをお伝えします。 論理的コミュニケーションとは、決して相手を言い負かすための冷たいテクニックではありません。 それは、「相手の貴重な時間を、自分の分かりにくい話で無駄にしない」「相手の頭脳に、無用なストレスを与えない」という、最高の「思いやり」のスキルなのです。
この「相手への配慮」というマインドを持つこと。 それこそが、小手先のテクニックを超えた、真のコミュニケーション強者への第一歩です。 今日から、あなたの「思いやり」を、論理という形で表現してみませんか。
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