【世帯年収の罠】知らぬ間に手取り30万減も。夫婦の年収差が“罰金”になる社会保障の不公平なカラクリ

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「世帯年収は増えたのに、なぜか生活が楽にならない」と首を傾げている共働き夫婦の方
  • パートの時給を上げるか、「年収の壁」を気にして働くべきか、本気で悩んでいる方
  • 夫婦で稼いだ大切なお金が、知らないうちに国に“搾取”されている現実を知りたくないですか?
  • 複雑な制度の「カモ」で終わらず、主体的に家計戦略を立てたいと考えている賢明な方

「二人で力を合わせれば、未来は安泰」。そんな希望を胸に、夫婦で身を粉にして働く毎日。世帯年見も順調に増え、ようやく安定した暮らしが手に入った…本当に、そう信じていますか?

はっきりと言いましょう。その考えは、あまりにもナイーブです。あなたがた夫婦が汗水流して稼いだ大切なお金は、あなたが気づかないうちに、国の制度によって静かに、そして合法的に抜き取られています。しかも、その抜き取られ方は、夫婦の稼ぎ方のバランスによって、全く異なるのです。

同じ世帯年収1000万円でも、夫が一人で稼ぐ家庭と、夫婦で500万円ずつ稼ぐ家庭では、手取り額に年間数十万円もの差が生まれる。この不都合な真実を、あなたはご存知でしたか?

これは、国が仕掛けた、あまりにも不公平で、意地の悪いゲームです。そして、このゲームのルールを知らない者は、ただ黙って資産を蝕まれるだけの「カモ」にすぎません。この記事では、夫婦間の年収差が引き起こす社会保障負担の“罰金”とも言えるカラクリを、一切の忖度なく、具体的な数字を以て暴き尽くします。目を背けたくなるような現実が待っていますが、これを知るか知らないかで、あなたの家庭の未来は大きく変わるのです。

同じ世帯年収1000万でも手取りが違う!不公平なゲームのルール

ここに、全く同じ「世帯年収1000万円」のA家とB家があります。

  • A家:夫の年収1000万円、妻は専業主婦(扶養内)
  • B家:夫の年収500万円、妻の年収500万円

さて、どちらの家庭の方が、手取り額が多いと思いますか?常識的に考えれば、同じに見えるでしょう。しかし、現実は非情です。多くの場合、A家の方が手取りは多くなります。B家は、A家よりも年間で10万円以上、多い時で20万、30万円も手取りが少なくなることすらあるのです。

「馬鹿な!平等に稼いでいる方が、なぜ損をするんだ!」

その怒り、ごもっともです。この理不尽な差を生み出している元凶こそが、「社会保険料(健康保険・厚生年金)」の仕組みにあります。

社会保険料は、あなたの給料(標準報酬月額)に保険料率を掛けて計算されます。しかし、この「標準報酬月額」には上限が設けられているのです。健康保険の上限は139万円、厚生年金の上限は65万円。つまり、月収がこれ以上いくら高くなっても、保険料は頭打ちになります。

A家の夫は、年収1000万円(月収約83万円)なので、厚生年金は上限に達し、健康保険も上限に近い金額を支払います。妻は扶養に入っているため、社会保険料の負担はゼロです。

一方、B家はどうでしょう。夫も妻も年収500万円(月収約41万円)。二人とも、保険料の上限には全く届きません。そのため、それぞれの給料に対して、きっちりと保険料が天引きされていきます。結果として、夫婦二人分の社会保険料を合計すると、A家の夫が一人で支払う保険料よりも高くなってしまうのです。

具体的に見てみましょう。(※協会けんぽ・東京・40歳未満・賞与年2回と仮定した概算)

  • A家(夫1000万):社会保険料負担は、年間約134万円
  • B家(夫500万+妻500万):夫の負担約71万円+妻の負担約71万円=合計約142万円

この時点で、既に年間8万円もの差が生まれています。さらに、所得税の計算で使える「配偶者控除」はA家しか使えません。この差額も加味すると、手取り額の差はさらに広がります。「夫婦で協力して稼げば稼ぐほど、世帯としての負担は重くなる」。これが、この国の制度が作り出した、あまりにも皮肉な現実なのです。

“年収の壁”という名の茶番劇。国が仕掛けた巧妙な罠

「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」。パートで働く多くの主婦(主夫)を悩ませる、この忌々しい「壁」。あなたも、この壁を意識して、年末になるとシフトを調整する、といった馬鹿げた経験はありませんか?

この壁の本質は、税金や社会保険の扶養から外れる基準点です。特に深刻なのが、「106万円の壁」と「130万円の壁」。これを超えた瞬間、あなたは夫(あるいは妻)の扶養から外れ、自分自身で社会保険に加入する義務が発生します。

その結果、何が起きるか。あなたの給料から、年間で約15万円から20万円もの社会保険料が、問答無用で天引きされるのです。

例えば、年収105万円で働いていた人の手取りは約105万円(所得税はほぼゼロ)。 一方、頑張って年収106万円になった途端、そこから社会保険料約16万円が引かれ、手取りは約90万円に激減します。

働けば働くほど、手取りが減る。

こんな馬鹿げた話があるでしょうか。これは、個人の就労意欲を削ぎ、キャリアアップの機会を奪い、経済全体の成長を阻害する、壮大な「茶番劇」に他なりません。政府は「女性活躍」などと綺麗事を並べ立てますが、その実態は、女性がフルタイムで働くことを阻害するような制度を温存し続けているのです。この制度によって、どれだけの優秀な人材が、その能力を発揮できずにいることか。考えるだけで、腹立たしい限りです。

児童手当の罠。高所得者ほど“罰”を受ける理不

子育て世帯への支援策であるはずの「児童手当」。しかし、この制度もまた、共働き夫婦、特に世帯年収が高い家庭に対して、極めて理不尽な牙を剥きます。

問題は、その「所得制限」の判定方法にあります。普通に考えれば、世帯の経済状況を判断するのですから、「世帯年収を合算」して判定すべきでしょう。しかし、この国の制度は、そうはなっていません。なんと、「夫婦のうち、収入が高い方」一人の年収だけで判定されるのです。

この歪な仕組みが、信じられないような不公平を生み出します。

  • C家:夫 年収950万円、妻 0円(世帯年収950万円) →夫の年収が所得制限限度額(※扶養親族の数によるが、ここでは仮に960万円とする)を下回るため、児童手当は満額支給
  • D家:夫 年収1200万円、妻 0円(世帯年収1200万円) →夫の年収が所得上限限度額を超えているため、児童手当は1円も支給されない
  • E家:夫 年収900万円、妻 年収800万円(世帯年収1700万円) →判定対象である夫の年収が950万円なので、児童手当は満額支給

結果を見てください。世帯年収が最も低いC家が満額もらえるのは分かります。しかし、世帯年収1700万円のE家が満額もらえて、それより遥かに収入の少ない世帯年収1200万円のD家が1円ももらえない。こんな馬鹿げた逆転現象が、平然とまかり通っているのです。

これはもはや子育て支援ではありません。単なる「片働き高所得者いじめ」です。夫婦で協力して稼ぎ、納税の義務を果たしているにもかかわらず、制度の歪みによって罰せられる。こんな理不尽が許されていいはずがありません。

見えざる格差。将来もらえる年金という“最終審判”

ここまで、現役時代の負担の不公平さについて述べてきました。しかし、この物語には続きがあります。それは、老後に受け取る「年金」という名の最終審判です。

ここで再び、A家(夫1000万、妻0円)とB家(夫500万、妻500万)を比較してみましょう。

現役時代の負担はA家の方が軽いという話をしました。A家の妻は、「第3号被保険者」として、自分で保険料を1円も払うことなく、将来、国民年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。まさに“タダ乗り”です。

一方、B家は夫婦それぞれが厚生年金に加入し、重い保険料を支払い続けています。

では、老後の年金受給額はどうなるでしょうか。

  • A家:夫は厚生年金+国民年金、妻は国民年金のみ。
  • B家:夫も妻も、厚生年金+国民年金。

厚生年金の受給額は、現役時代に支払った保険料の額に応じて決まります。B家は、夫婦二人分の厚生年金を支払ってきたわけですから、当然、世帯として受け取る年金総額は、A家よりも圧倒的に多くなります。

ここに、唯一の「救い」があります。現役時代に重い負担を強いられてきた共働き夫婦は、その分、老後の生活は手厚く保障されるのです。目先の負担の重さだけで判断してはいけません。社会保険料の支払いは、将来の自分たちへの「強制的な仕送り」という側面も持っているのです。

しかし、だからといって、保険料を払わない人が年金を受け取れる「第3号被保険者制度」の不公平さが、正当化されるわけではありません。この制度がある限り、現役世代、特に共働き世帯の不公平感は、決して消えることはないでしょう。

では、どう生きるか?不公平なゲームを勝ち抜くための思考法

この理不尽な制度の中で、私たちはただ指をくわえて搾取され続けるしかないのでしょうか?いいえ、決してそんなことはありません。

まず、最も重要なのは、これらの制度のルールを、夫婦で正しく「知る」ことです。敵の正体も分からずに、戦うことはできません。その上で、自分たちの家庭がどういう戦略を取るべきか、徹底的に話し合うのです。

選択肢はいくつか考えられます。

一つは、「働き損」などという目先の損得に囚われず、キャリアを優先すること。年収の壁を大きく突き抜け、夫婦ともに稼ぎ続ける。目先の社会保険料負担は増えますが、生涯賃金を最大化し、将来の豊かな年金という果実を勝ち取る戦略です。

一つは、iDeCoや新NISAといった国の制度を徹底的に「ハック」すること。国は一方的に奪うだけでなく、賢い者にだけ与えられる「ご褒美(非課税制度)」も用意しています。税金や社会保険料として召し上げられる分を、非課税の資産運用で取り返す。守りから攻めへと転じる思考です。

そして何よりも大切なのは、夫婦で価値観をすり合わせること。目先の現金が大事なのか、将来の安定が大事なのか。子育ての期間はどういう働き方をしたいのか。キャリアをどう形成していきたいのか。

この不公平なゲームに、万人共通の「正解」はありません。しかし、あなたの家庭だけの「最適解」は必ず存在します。無知のまま流されるのではなく、知識を武器に、自分たちの人生の航路を、自分たちで決める。その主体的な姿勢こそが、この理不尽な社会を生き抜くための、唯一にして最強の武器なのです。

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