【応募ゼロからの逆転劇】なぜ、あの“普通”の中小企業に応募が殺到するのか?カギは「リファラル採用」にあった

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 求人サイトに高いお金を払っても、全く応募が来なくて心が折れそうな方
  • 採用コストが年々膨らみ、会社の経営を圧迫していると感じている経営者の方
  • やっとの思いで採用できた人材が、すぐに辞めてしまって途方に暮れている人事担当者の方
  • 会社の知名度や規模で、大手企業との採用競争に太刀打ちできないと諦めかけている方
  • 社員満足度を高めながら、採用も成功させる「一石二鳥」の方法を探している方

「また応募ゼロか…」。 求人サイトの管理画面を見て、深いため息をつく。高い掲載料を払っているのに、数少ない応募者は求める人物像とはほど遠い。面接にこぎつけて、やっとの思いで採用しても、数ヶ月で「辞めたい」と言われてしまう。

これは、日本の多くの中小企業が抱える、あまりにもリアルで、切実な悩みではないでしょうか。

しかし、この採用の負のスパイラルから抜け出し、広告費をほとんどかけずに、自社のカルチャーにぴったりの優秀な人材を次々と採用している中小企業が、実はたくさん存在します。

彼らが使っている魔法の杖、それが「リファラル採用」です。

「リファラル?ああ、縁故採用(コネ入社)のことね」。そう思ったなら、少し待ってください。リファラル採用は、昔ながらの縁故採用とは全く異なる、データと信頼に基づいた極めて戦略的な採用手法なのです。

この記事では、なぜリファラル採用が、知名度や資金力に乏しい中小企業の「救世主」となり得るのか。その驚くべき威力と、あなたの会社で明日から始められる具体的なステップを、豊富なデータと成功事例を交えながら、徹底的に解説していきます。


なぜ、あなたの会社に応募が来ないのか?目を背けたい残酷なデータ

リファラル採用の解説に入る前に、まず私たちが置かれている厳しい現実を、データで直視するところから始めましょう。

現実1:超・売り手市場による人材獲得競争の激化 厚生労働省が発表する有効求人倍率は、近年1.2倍から1.3倍前後で推移しており、求職者1人に対して1つ以上の求人がある「売り手市場」が続いています。特にIT業界など専門職では、倍率が10倍を超えることも珍しくありません。これは、限られたパイを、多くの企業が奪い合っている状態を意味します。

現実2:中小企業が抱える「応募が集まらない」という悩み 日本商工会議所が実施した「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」(2023年)によると、中小企業が抱える採用活動上の課題として、「応募者が集まらない」が57.0%でトップ。次いで「求める人材からの応募がない」が56.3%と続きます。多くの中小企業が、そもそも出会いのステージにすら立てていないのです。

現実3:経営を圧迫する高額な採用コスト この状況を打開しようと求人広告や人材紹介サービスを利用すれば、多額のコストがかかります。一般的に、人材紹介の手数料は採用者の年収の30〜35%が相場。年収400万円の人材を採用すれば、120万円以上のコストが発生します。求人広告も、効果を求めれば数十万円から百万円単位の投資が必要です。このコストは、中小企業の経営にとって決して軽い負担ではありません。

結論として、知名度やブランド力、資金力で劣る中小企業が、大手企業と同じ土俵(求人広告市場)で真っ向から戦うのは、あまりにも分が悪すぎるのです。


その絶望的な悩み、「リファラル採用」がすべて解決します

「じゃあ、どうすればいいんだ…」。そんな絶望的な状況に差し込む一筋の光こそが、「リファラル採用」です。

リファラル採用(Referral Recruiting)とは、とてもシンプルに言えば、「自社の社員に、友人や知人といった信頼できる人材を紹介・推薦してもらう採用手法」のことです。

ここで絶対に誤解してほしくないのが、「縁故採用(コネ入社)」との決定的な違いです。

項目縁故採用(コネ入社)リファラル採用
目的人脈維持、断れない関係性自社に合う優秀な人材の獲得
選考選考が形骸化・省略されがち通常の応募者と同じ選考を実施
公平性特定の人だけが優遇され、不公平感を生む公平・公正な選考を担保する
位置づけ場当たり的で、制度化されていない戦略的に設計された採用チャネルの一つ

Google スプレッドシートにエクスポート

縁故採用が「誰の紹介か」を重視するのに対し、リファラル採用は「自社で活躍する社員が推薦する人材だから、きっと優秀でカルチャーにも合うだろう」という信頼をベースにしています。あくまで選考は公平に行い、採用基準に満たなければ不採用とします。

つまり、リファラル採用は「信頼できる社員」というフィルターを通して、質の高い候補者を集める、極めて合理的な採用マーケティング手法なのです。


データで見る!リファラル採用がもたらす3つの圧倒的メリット

リファラル採用が、なぜ中小企業の救世主となり得るのか。その威力を、具体的なデータと共に見ていきましょう。

メリット1:採用コストが10分の1以下になることも

リファラル採用の最大のメリットは、採用コストを劇的に削減できることです。求人広告費や人材紹介会社への成功報酬は一切かかりません。かかる費用は、紹介してくれた社員へのインセンティブ(報奨金)や、候補者との会食費くらいです。

株式会社リフカムの調査によると、求人広告の平均採用単価が約52万円、人材紹介が約107万円であるのに対し、リファラル採用の平均採用単価はわずか約16万円というデータがあります。インセンティブを奮発したとしても、従来の採用手法に比べてコストを圧倒的に抑えることが可能です。浮いたコストを、社員の給与や教育、新しい設備投資に回すことができます。

メリット2:定着率が驚くほど高い(ミスマッチが激減する)

「せっかく採用したのに、すぐに辞めてしまった…」。この悲劇は、入社前の期待と入社後の現実のギャップ(リアリティショック)によって引き起こされます。

リファラル採用は、このミスマッチを劇的に減らします。なぜなら、紹介者である社員が、候補者に対して「うちの会社のこういうところは最高だけど、こういう大変な部分もあるよ」といった、良い面も悪い面も含めたリアルな情報を伝えてくれるからです。候補者は納得した上で入社を決めるため、入社後のギャップが小さくなります。

実際に、リファラル採用サービスを提供するMyRefer社の調査では、リファラル採用で入社した社員の1年後の定着率は95.5%と、他の採用チャネルに比べて非常に高い数値を示しています。定着率の高さは、採用・教育コストの削減に直結する、非常に重要な経営指標です。

メリット3:市場に出てこない「隠れ優秀層」に出会える

転職サイトに登録している人だけが、優秀な人材ではありません。むしろ、現在の職場で活躍していて、積極的に転職活動はしていないものの、「もっと良い会社があれば考えたい」と思っている「転職潜在層」にこそ、魅力的な人材が眠っています。

リファラル採用は、この潜在層に直接アプローチできる、ほぼ唯一の手段です。あなたの会社でいきいきと働いている社員が、友人との飲み会で「うちの会社、本当に面白いよ。一緒に働かない?」と声をかける。この一言が、どんな求人広告よりも優秀な人材の心を動かすのです。

さらに、「類は友を呼ぶ」という言葉通り、自社で活躍している社員の周りには、同じような価値観やスキルレベルを持った友人がいる可能性が高いです。これにより、会社の文化や風土に自然とマッチする人材(カルチャーフィット人材)を採用できる確率が格段に高まります。


もちろん良いことばかりじゃない。導入前に知るべき注意点と対策

これほど強力なリファラル採用ですが、もちろん注意すべき点もあります。しかし、事前に対策を打てば、リスクは十分に回避できます。

注意点1:「不採用になったら気まずい…」という人間関係のリスク

最も懸念されるのが、紹介した友人が不採用になった場合や、逆に入社した友人がすぐに辞めてしまった場合に、紹介者と友人の関係がギクシャクしてしまうことです。

対策はこれ! 制度を始める前に、全社員に対して「リファラル採用でも、通常の選考プロセスと同じ基準で公平に判断します。結果に関わらず、会社として両者の人間関係を最大限尊重し、フォローします」と明確に宣言しましょう。紹介者にも「結果を気にしないでほしい」と伝え、心理的な負担を軽減してあげることが重要です。

注意点2:「同じような人ばかり集まっちゃう」多様性の欠如リスク

社員の友人・知人というネットワークに頼るため、気づけば似たような経歴や価値観の人材ばかりが集まってしまう可能性があります。

対策はこれ! リファラル採用だけに頼るのではなく、他の採用チャネルと組み合わせることが大切です。また、募集する際に「今回は、Webマーケティングの経験がある人を探しています」「新しい視点をもたらしてくれる、異業種出身の友人がいたらぜひ!」といったように、会社が今どんな人材を求めているのかを具体的に伝えることで、人材の多様性をコントロールできます。

注意点3:「制度を作ったのに、誰も紹介してくれない」形骸化リスク

「リファラル採用、始めます!紹介してくれたら報奨金を出します!」と宣言しただけでは、社員はなかなか動いてくれません。

対策はこれ! 何よりもまず、社員が「自分の会社を、大切な友人に自信を持って勧めたい」と思えるような、魅力的な会社であることが大前提です。その上で、なぜリファラル採用に協力してほしいのか、社長や経営陣が自らの言葉で、その熱意やビジョンを語ることが不可欠です。さらに、紹介しやすい仕組み(紹介カードの配布、SNSで簡単にシェアできる求人ページの作成など)を整え、社員の協力のハードルを下げてあげましょう。


【明日からできる】中小企業のためのリファラル採用・導入5ステップ

さあ、あなたの会社でもリファラル採用を始めてみましょう。以下の5つのステップで進めれば、きっとうまくいきます。

ステップ1:目的と目標を「見える化」する

まず、「何のために、誰を、何人採用するのか」という目的と目標を明確にします。例えば、「3年後の事業拡大に向けて、エンジニアを年間5名採用する。そのうち2名をリファラルで採用する」といったように、経営戦略と連動した具体的な目標を設定し、経営陣と人事の間でしっかりと合意形成をしましょう。

ステップ2:社員がワクワクする「制度」を設計する

次に、具体的なルール作りです。

  • インセンティブ:紹介者への報奨金をいくらにするか(例:5万〜30万円)、どんなタイミングで支払うか(例:入社3ヶ月後)。金銭だけでなく、「特別休暇3日間」や「一流レストランでのペア食事券」といったユニークな報酬も効果的です。
  • 紹介フロー:誰に、どうやって紹介すればいいのか。紹介された人は、その後どういう選考フローになるのか。シンプルで分かりやすい流れを作りましょう。

ステップ3:全社員に「本気度」を伝え、巻き込む

制度が固まったら、全社に向けてキックオフを行います。ここで最も重要なのは、社長自らの言葉で、リファラル採用にかける想いを語ることです。「会社の未来のために、みんなの力を貸してほしい」という真摯なメッセージが、社員の心を動かします。

ステップ4:紹介の「ハードル」を極限まで下げる

社員が「友人に声をかけやすい」環境を整えることも重要です。

  • 募集情報の共有:今どんなポジションを募集しているのか、どんな人に来てほしいのか、会社の魅力は何なのか、といった情報をまとめた「紹介ハンドブック」のような資料を用意しましょう。
  • 定期的なリマインド:月一回の朝礼で「今月はこのポジションを募集中です!」と伝えたり、社内チャットで定期的にアナウンスしたりして、社員の意識から消えないように工夫します。

ステップ5:感謝を伝え、改善を続ける(PDCA)

紹介してくれた社員には、結果に関わらず「協力してくれてありがとう!」と最大限の感謝を伝えましょう。応募してくれた候補者にも、丁寧な対応を心がけます。そして、「どの部署からの紹介が多いか」「どんなインセンティブが響いているか」といったデータを分析し、常により良い制度へと改善を続けていくことが成功のカギです。


まとめ:最強の採用担当は、あなたの会社の「全社員」だ

求人サイトの応募者リストを眺めてため息をつく日々は、もう終わりにできます。中小企業の採用課題は、戦う土俵を変え、視点を変えることで、必ず突破口が見つかります。

リファラル採用は、単なるコスト削減の手法ではありません。

社員が自社の未来を自分事として考え、採用活動に参加するプロセスを通じて、社員のエンゲージメントは高まります。自分の紹介で入社した仲間が活躍すれば、紹介者の喜びや責任感も増すでしょう。これは、採用活動そのものが、最強の組織開発・社内ブランディングになるということです。

考えてみてください。あなたの会社の仕事の面白さ、仲間の素晴らしさ、未来の可能性を、一番リアルに知っているのは誰でしょうか?

そうです。最強の採用担当者は、外部のコンサルタントではなく、今あなたの隣で働いている「全社員」なのです。彼らの力を信じて、頼ってみませんか?きっと、あなたの会社はもっと強くなれます。

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