【SESで自社開発?】請負契約のリアルを激白!準委任との違いと天国・地獄

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • SESの「請負契約」がどんなものか、具体的に知りたいエンジニアの方
  • 客先常駐だけでなく、チームでの開発に興味がある方
  • 「請負」と聞くと、デスマーチや炎上案件のイメージしかなくて不安な方
  • エンジニアとして、より上流工程やマネジメントに挑戦したいと考えている方

「SESの仕事って、結局はずっと客先で一人作業なんでしょ?」…もしあなたがそう思っているなら、SESという働き方の持つ、大きな可能性を見逃しているかもしれません。実はSESには「請負契約」という働き方があり、これがうまくハマれば、自社の仲間とチームを組み、まるでスタートアップのように裁量権を持ってプロダクト開発を進めることができるんです。しかし、その輝かしい世界の裏側には、「成果物を完成させる責任」という、とてつもなく重いプレッシャーが常に付きまといます。一歩間違えれば、終わらない残業と責任追及の地獄を見ることも…。客先常駐での準委任契約と、自社での請負開発の両方を経験した私が、SESにおける請負契約の甘い蜜と厳しい現実を、生々しい体験談とともにお話しします。


SESの「請負契約」って、一言でいうと何?

回りくどい説明は抜きにして、結論からいきましょう。SESにおける「請負契約」とは、「システムやソフトウェアといった成果物を、責任をもって完成させて納品すること」を約束する契約です。

これまで解説してきた準委任契約や派遣契約が、あなたの「労働時間」に対して報酬が支払われるのに対し、請負契約は「完成した仕事そのもの」に対して報酬が支払われます。

ここでの最大の、そして最も恐ろしいポイントが「契約不適合責任(昔でいう瑕疵担保責任)」を負うことです。

これは、納品したシステムにバグが見つかったり、契約時に定めた仕様を満たしていなかったりした場合、無償で修正したり、損害賠償を支払ったりする義務がある、ということです。

つまり、「時間内に頑張りましたが、できませんでした」は通用しません。何が何でも、約束したものを完成させなければならない。それが請負契約の根幹にある、厳しくもプロフェッショナルな世界なのです。


全エンジニア必見!請負・準委任・派遣の決定的な違い

「準委任も請負も、SES企業が指揮命令するなら同じじゃないの?」と思うかもしれませんが、その実態は全く異なります。この3つの契約形態の最大の違いは、「求められる責任の重さ」「働き方の自由度」です。

以下の比較表は、SESで働く上であなたのキャリアを左右するほど重要なので、ぜひじっくりと見てください。

契約形態目的報酬の対象指揮命令権エンジニアが負う責任
請負契約仕事の完成成果物SES企業契約不適合責任(非常に重い)
準委任契約業務の遂行労働時間SES企業善管注意義務(プロとして誠実に働く責任)
派遣契約労働力の提供労働時間客先企業指揮命令に従う義務

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私の体験から言うと、この責任の重さは天と地ほどの差があります。

  • 準委任・派遣の現場では… 極端な話、契約時間内で自分の持てる技術を誠実に提供し、報告・連絡・相談をしっかり行っていれば、プロジェクトが失敗しても個人の責任を問われることはほとんどありません。「時間内にベストを尽くしました」が通用する世界です。
  • 請負の現場では… リリース後に致命的なバグが見つかった時のプレッシャーは尋常ではありません。「すみません、徹夜してでも直します…!」という状況になり得ます。なぜなら、それを直すまで「仕事が完成した」ことにはならないからです。この当事者意識とプレッシャーの質が、根本的に違うのです。

この違いを理解せずに「チーム開発ができるらしいから」という安易な理由で請負案件に手を出すと、痛い目を見ることになります。


なぜSES企業は「請負」をやりたがるのか?数字が示すハイリスク・ハイリターンな世界

客先常駐(準委任・派遣)で安定的に収益を上げられるのに、なぜSES企業はわざわざリスクの高い請負案件に挑戦するのでしょうか?その答えはシンプルで、「儲かる」からです。

中小企業庁の調査などを見ても、IT業界、特にソフトウェア開発は他の業種に比べて利益率が高い傾向にありますが、請負開発はさらにその上をいきます。

一般的なSES(準委任)の案件では、エンジニアの単価から給与や経費を引いた粗利益率は、良くて20%〜30%程度と言われています。

しかし、請負案件がうまくいった場合、その利益率は40%、50%を超えることも珍しくありません。なぜなら、時間ではなく成果物に対して価格を設定できるため、生産性を極限まで高め、見積もりよりも早く高品質なものを開発できれば、その差額がすべて利益になるからです。

SES企業にとってのメリット

  • 高い利益率: 会社が大きく成長するための原動力になる。
  • 技術力の証明: 「〇〇というシステムをまるごと開発した」という実績は、最高の営業ツールになる。
  • ノウハウの蓄積: 自社内に開発プロセスや技術的な知見が溜まり、会社の資産になる。

しかし、これはあくまで成功した場合の話。見積もりが甘かったり、プロジェクト管理に失敗したりすれば、利益が出るどころか、人件費や修正コストで大赤字を垂れ流すことになります。これが、いわゆる「デスマーチ」や「炎上案件」が生まれる最大の原因です。

エンジニアの視点から見れば、その会社がどんな請負案件を手がけているか、そしてその成功率や管理体制はどうなっているかは、企業の技術力や経営体力を測る重要なバロメーターになると言えるでしょう。


【天国と地獄】SES請負開発、私の実録体験記

理屈はこれくらいにして、私が実際に経験した請負開発の「天国」と「地獄」について、包み隠さずお話ししたいと思います。

😇 天国だった現場:最高の仲間と挑んだ新規Webサービス開発

これは、私がエンジニア人生で最も楽しかった仕事の一つです。クライアント企業の新規事業であるマッチングサービスの開発を、要件定義からリリースまでまるごと請け負いました。

  • 最高の開発環境: 自社のオフィスにプロジェクトルームが用意され、PM1名、エンジニア4名、デザイナー1名の計6名でチームを組みました。客先常駐とは違い、気心の知れた仲間といつでも気軽に相談したり、時には雑談したりしながら開発を進める環境は最高でした。
  • 圧倒的な裁量権と成長: クライアントからは大まかな要望だけをもらい、具体的な技術選定(どのプログラミング言語やフレームワークを使うか)や設計は、ほぼすべて私たちのチームに任されていました。「この機能は、最近出たこのライブラリを使ってみよう」「ここのUIは、こうした方がユーザーは使いやすいはずだ」と、全員で活発に議論しながらプロダクトを作り上げていくプロセスは、まさに文化祭の前夜のようなワクワク感がありました。
  • 忘れられない達成感: もちろん、納期前のプレッシャーはありましたが、チーム一丸となってそれを乗り越え、自分たちがゼロから作り上げたサービスが無事にリリースされた瞬間の感動は、今でも忘れられません。準委任契約で、大きなシステムの一部分の歯車として働いていた時には、決して味わえなかった達成感でした。

😈 地獄だった現場:終わらない責任追及と板挟みのストレス

一方で、請負契約の怖さを骨の髄まで味わったプロジェクトもあります。ある官公庁の古いシステムを改修する案件でした。

  • 無理のある契約: そもそも、営業担当が内容をよく理解しないまま、明らかに無理な納期と低すぎる予算で契約してしまったのがすべての始まりでした。仕様書は曖昧で、開発を始めてから次々と「これもやってくれるんですよね?」という追加要求が飛んできました。
  • 終わらない「責任」との戦い: 請負契約である以上、「契約範囲外です」と強く言うことができず、ずるずると要求を飲むしかありませんでした。納品後も、「ここの挙動がおかしい」「データが一部消えた」といった問い合わせが絶えず、休日返上でバグの調査と修正に追われる日々。まさに「契約不適合責任」の地獄でした。
  • 崩壊するチーム: クライアントからの厳しいプレッシャーと、自社の経営陣からの「赤字を出すな」という圧力に、プロジェクトマネージャーは完全に疲弊。チーム内は「誰のせいだ」という犯人探しの雰囲気になり、コミュニケーションもなくなりました。赤字なので当然、人も増やしてもらえず、ただただ既存メンバーの長時間労働でカバーするしかない。あの時のオフィスの空気は、思い出すだけでも息が詰まります。

この経験から学んだのは、請負契約は「諸刃の剣」であるということです。会社の管理体制や営業力、そして技術力が伴って初めて、エンジニアにとって天国となり得るのです。


あなたは請負に向いてる?後悔しないための3つのチェックリスト

ここまで読んで、「自分は請負開発に挑戦してみたい」「いや、自分には無理そうだ」と、色々感じたかもしれません。請負契約は、求められるスキルやマインドが準委任契約とは大きく異なるため、向き不向きがはっきりと分かれます。

もしあなたが請負案件に興味があるなら、以下の3つの質問に、正直に答えてみてください。

  1. 「自分が作った」という重い責任を、プレッシャーではなく「やりがい」と感じられるか? 「このプロダクトは自分が責任を持って世に送り出すんだ」という強い当事者意識は、請負エンジニアにとって不可欠です。リリース後の障害報告に、「またか…」と落ち込むのではなく、「よし、原因を突き止めてもっと良いものにしてやろう」と燃えるタイプなら、向いているかもしれません。
  2. コードを書くこと「以外」のスキルを磨くことに興味があるか? 請負開発では、クライアントと直接仕様を詰めたり、機能の実現可能性について説明したりする場面が多くあります。また、より上流の工程では、開発工数の見積もりも重要になります。純粋にコーディングだけを追求したい人よりも、こうしたコミュニケーションやマネジメント寄りのスキルにも意欲的な人の方が活躍しやすいです。
  3. 一人で黙々と作業するより、チームで議論しながら何かを成し遂げるのが好きか? 請負開発は、基本的にチーム戦です。他のエンジニアやデザイナー、PMと密に連携し、時には意見をぶつけ合いながら、全員で同じゴールを目指します。個人のスキルももちろん重要ですが、それ以上にチーム全体のパフォーマンスを最大化しようとする協調性が求められます。

この3つの質問に「YES」と答えられるなら、あなたは請負開発で大きな成長と達成感を得られる可能性が高いでしょう。


まとめ:請負契約は、エンジニアとして「覚醒」するチャンス

SESにおける請負契約は、「成果物を完成させる」という重い責任と引き換えに、準委任契約や派遣契約では決して得られないような、大きな裁量権とチーム開発の醍醐味、そして圧倒的な達成感を与えてくれる働き方です。

それは、ただの「作業者」から、プロダクトの誕生に責任を持つ「開発者」へと、あなたがエンジニアとして一段階レベルアップ、つまり「覚醒」するための最高の機会になり得ます。

ただし、そのチャンスを掴むためには、あなた自身の適性を見極めると同時に、その請負案件を任せられるだけの技術力やプロジェクト管理体制が会社にあるのかを、冷静に見極める必要があります。

もしあなたが今の働き方に物足りなさを感じ、より大きな責任とやりがいを求めるのであれば、信頼できる仲間と共に挑む請負開発は、あなたのエンジニア人生を間違いなく豊かにしてくれるはずです。

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