インフラエンジニアとは?IT都市を支える「社会インフラ整備のプロ」の仕事に迫る

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「インフラエンジニア」という職種を、名前は知っているけど何をしているのかは知らない方
  • アプリやWebサイトを作る「じゃない方」のエンジニアの仕事に、興味がある方
  • IT業界の全体像を、職種ごとの役割から、体系的に理解したいと考えている方
  • 縁の下の力持ちとして、社会の「当たり前」を支える仕事に、魅力を感じる方
  • 安定して需要が高く、将来性のあるIT専門職へのキャリアを検討している方

キラキラしたデザインのECサイト、世界中の人と繋がれるSNSアプリ、毎日を楽しくするオンラインゲーム…。私たちが普段、当たり前のように享受している、華やかで便利なITサービス。 これらのサービスを作る花形の職業として、私たちは「プログラマー」や「Webデザイナー」を思い浮かべます。

しかし、ここで一つ、想像してみてください。 もし、そのECサイトが、年に一度のビッグセールの瞬間に、アクセスが集中してサーバーがダウンしてしまったら? もし、そのSNSアプリが、ある日突然サイバー攻撃を受けて、あなたの個人情報がすべて抜き取られてしまったら? もし、そのオンラインゲームが、ラグだらけでまともにプレイできなかったとしたら…?

どんなに優れたデザインや面白い機能も、それらが動くための「土台」がしっかりしていなければ、全く意味をなしません。

その、私たちの目には見えないけれど、IT社会のすべての「当たり前」を、静かに、そして力強く支えている、まさに「縁の下の力持ち」。 それこそが、今回ご紹介する「インフラエンジニア」なのです。 この記事では、IT世界の根幹を担う彼らの仕事を、「巨大な都市の、社会インフラを整備するプロフェッショナル集団」という、壮大な例え話で解き明かしていきます。


結論:インフラエンジニアとは、IT世界の「社会インフラ」を創り、守る人

まず、この記事の結論であり、インフラエンジニアの仕事を理解するための、最も重要なイメージをお伝えします。

  • Webサイトやアプリ = 私たちが訪れる、華やかな「ビル、商業施設、コンサートホール」
  • ITインフラ = それらの建物を支える、「道路、電気、水道、ガス、警備システム」
  • インフラエンジニア = この都市の生命線を設計・構築・維持する「社会インフラの整備局」

どんなに美しい超高層ビルも、そこへ続く道路(ネットワーク)がなければ、誰もたどり着けません。 どんなに楽しいコンサートホールも、電気(サーバー)が供給されなければ、ただの暗い箱です。 どんなに便利な商業施設も、水道やガス(データベースやストレージ)がなければ、機能しません。 そして、どんなに素晴らしい街も、警備(セキュリティ)が甘ければ、安心して暮らすことはできませんよね。

インフラエンジニアの仕事は、まさにこれらIT世界の社会インフラ(ITインフラ)を、ゼロから設計し、構築し、そして、24時間365日、決して止まることのないように、その安定稼働を守り抜くことです。 彼らの仕事は、普段は全く意識されません。しかし、ひとたび彼らの仕事が止まれば、社会は大混乱に陥る。そんな、絶大な責任と誇りを背負った、IT世界の根幹を担うプロフェッショナルなのです。


インフラエンジニアの仕事領域:IT都市の生命線を支える専門家たち

「社会インフラ」と一口に言っても、道路の専門家、電気の専門家、水道の専門家がいるように、インフラエンジニアも、その担当領域によって、いくつかの専門職に分かれています。

サーバーエンジニア:「発電所と建物の基礎」を司る専門家

Webサイトやアプリという「建物」が、その機能を発揮するための「電力」を供給する、「サーバー」という名のコンピュータを専門に扱います。 都市に「発電所」を建設し、各建物に電力を安定供給する計画を立てるように、サービスの規模や目的に合わせて、最適なサーバーの機種を選定し、OSをインストールし、設定(構築)を行います。また、建てた後も、安定して稼働し続けるように、日々の点検(運用・保守)を欠かしません。

ネットワークエンジニア:「道路網」を設計し、交通を整理する専門家

サーバー(発電所)や、ユーザーのパソコン(各家庭)といった、都市のあらゆる拠点を結ぶ「ネットワーク」という名の道路網を専門に扱います。 どうすれば、大量の車(データ)が、渋滞(遅延)することなく、安全かつ最短ルートで目的地にたどり着けるかを考え、道路(ネットワーク機器)を設計し、交通整理のルール(ルーティング)を設定します。

セキュリティエンジニア:「都市」を外部の脅威から守る警備の専門家

IT都市を、常に狙っている、悪意のあるハッカー(侵入者)や、ウイルス(伝染病)から守る「セキュリティ」を専門に扱います。 都市の周りに、堅牢な「城壁(ファイアウォール)」を築き、怪しい人物の侵入を水際で防いだり、街中に監視カメラ(不正侵入検知システム)を設置して、常に不審な動きがないかを監視したりと、都市の安全を24時間体制で見守ります。

クラウドエンジニア:最先端の「都市開発」を担う、新時代の専門家

近年、最も需要が急増しているのが、このクラウドエンジニアです。 彼らは、AmazonのAWSや、MicrosoftのAzureといった、巨大IT企業がすでに用意してくれている、超巨大で高性能な「都市開発用地(クラウドプラットフォーム)」を最大限に活用するプロフェッショナルです。 自前で発電所や道路をゼロから建設するのではなく、すでに完備されたインフラを、まるでレゴブロックのように組み合わせて、迅速かつ柔軟に、新しい街(サービス)を創り上げていきます。


なぜ彼らが必要不可欠?「当たり前」が崩壊する瞬間

インフラエンジニアの仕事が、いかに重要か。それを理解するために、あるECサイトの、年に一度のブラックフライデーセールを想像してみましょう。 サイトのデザインは完璧。掲載されている商品も魅力的。しかし、その「土台」が脆かったとしたら…?

  • もし、サーバーがダウンしたら…(発電所が停止) セール開始と同時にアクセスが殺到し、発電所(サーバー)が処理能力の限界を超えて停止。サイトは真っ暗になり、誰一人、商品を買うことができません。機会損失は、数億円にのぼるかもしれません。これは、サーバーエンジニアの守備範囲です。
  • もし、ネットワークが詰まったら…(道路が大渋滞) 発電所は動いているのに、サイトに繋がる道(ネットワーク)が、あまりの車の多さに大渋滞。ページの表示が極端に遅くなり、イライラした顧客は、次々と離脱してしまいます。これは、ネットワークエンジニアの腕の見せ所です。
  • もし、セキュリティが破られたら…(街に強盗が侵入) セールで賑わう商業施設に、強盗が侵入。顧客が入力した、大量のクレジットカード情報が盗み出されてしまいます。そうなれば、サイトの信用は失墜し、ビジネスの継続すら危うくなります。これは、セキュリティエンジニアが防ぐべき事態です。

調査会社Gartnerによると、企業のITシステムがダウンした場合の平均的な損失額は、1分あたり5,600ドル(約80万円以上)にも上ると言われています。 インフラエンジニアは、この天文学的な損失から、企業を、そして私たちの便利な生活を、日々守ってくれているのです。


近年、需要が急増中!「クラウド」が変えたインフラの世界

インフラエンジニアの重要性は、「クラウドコンピューティング」の登場によって、かつてないほど高まっています。

かつて、企業がITサービスを始めるためには、自社でデータセンターという「土地」を買い、物理的なサーバーやネットワーク機器という「発電所や道路」を、莫大な初期投資をして購入・設置する必要がありました(=オンプレミス)。

しかし、クラウドの登場により、企業は、Amazon(AWS)やMicrosoft(Azure)が世界中に用意してくれた、超巨大なITインフラを、水道や電気のように、使った分だけ借りることができるようになりました。

この変化は、インフラエンジニアの仕事を奪ったわけではありません。むしろ、新しい時代の、高度なスキルを持つインフラエンジニア(特にクラウドエンジニア)への需要を爆発的に増加させたのです。 調査会社MM総研によると、日本のクラウドサービスの市場規模は、2023年には7兆円を超え、2028年には13兆円規模に達すると予測されています。 自前でインフラを「所有」する時代から、クラウドをいかに賢く「利用」するかの時代へ。その中心で活躍するのが、現代のインフラエンジニアなのです。


まとめ:IT世界の「当たり前」を支える、真のヒーローたち

今回は、IT世界の「縁の下の力持ち」、インフラエンジニアの仕事を、「都市の社会インフラ整備」に例えて解説してきました。

  • インフラエンジニアは、ITサービスが動くための土台(サーバー、ネットワーク、セキュリティ)を設計・構築・維持するプロフェッショナル。
  • 彼らの仕事がなければ、どんなに素晴らしいアプリやサイトも、ただの「絵に描いた餅」になってしまう。
  • その仕事は、「動いていて当たり前」。しかし、その「当たり前」を維持するためには、計り知れない知識と、強い責任感が求められる。
  • 近年はクラウド技術の発展により、その専門性と市場価値は、ますます高まっている。

Webデザイナーが設計した美しいビル。プログラマーが建てた、機能性に富んだビル。 それらのビルに、安定した電気と水を供給し、安全な道路で人々を導き、外部の脅威から守り抜く。 彼らの仕事は、決してユーザーの目に直接触れることはありません。賞賛の声を浴びる機会も、少ないかもしれません。

しかし、私たちのデジタル社会が、今日も、明日も、当たり前のように動き続けることができるのは、ひとえに、彼らインフラエンジニアという名の「ヒーロー」たちが、人知れず、その土台を支え続けてくれているからに他なりません。


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