なぜGoogleは爆速で成長するのか?DevOpsの正体を世界一わかりやすく解説

この記事は約7分で読めます。

【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「DevOps」という言葉を最近よく聞くが、何のことかサッパリわからない。
  • 開発チームと運用チームの間に、見えない「壁」や「溝」があると感じている。
  • ソフトウェアのリリースに、毎回数週間〜数ヶ月もかかってしまう現状を変えたい。
  • CI/CDやIaCといった言葉と、DevOpsの関係性をスッキリ理解したい。
  • サービスの開発スピードと安定性を両立させ、ビジネスを成長させるヒントが欲しい。

Amazonは、1年間に数千万回以上、本番環境にソフトウェアをデプロイ(反映)する。 GoogleやNetflixといった巨大企業も、1日に数百回、数千回というレベルで、サービスを改善し続けている。

その一方で、あなたの会社ではどうでしょうか? 半年に一度のリリースは大イベント。数週間前から全エンジニアが張り付き、深夜に及ぶリリース作業、そして案の定、発生する障害…。その差は、一体どこから生まれるのでしょうか?

彼らが、宇宙人のような超人的なエンジニアを揃えているからではありません。 その秘密は、「DevOps」という、ソフトウェア開発における”革命的な思想”を、組織の隅々にまで浸透させているかどうかにあります。

この記事では、多くの人が「自動化ツールの名前でしょ?」と誤解しているDevOpsの「正体」を、あるレストランで起きた、料理人とホールスタッフの壮絶な対立と和解の物語に例えて、世界一わかりやすく解説します。この記事を読めば、DevOpsが単なる技術論ではなく、あなたの会社の成長を左右する、極めて重要な「文化」であることが、心の底から理解できるはずです。

DevOps以前の世界:厨房とホールの間にある「絶望の壁」

物語の舞台は、大繁盛のレストラン「トラディショナル」。 このレストランには、2つの重要な役割を持つプロフェッショナルがいます。

  • 厨房の料理人たち(開発チーム / Dev)
    • 彼らの使命は、革新的で、最高に美味しい「新作メニュー(新しい機能)」を、次々と開発すること。彼らの関心は、厨房(開発環境)の中で、いかに素晴らしい料理を生み出すか、にあります。
  • ホールのスタッフたち(運用チーム / Ops)
    • 彼らの使命は、お客様に料理を届け、レストラン全体が「安定して、スムーズに」運営されること。彼らは、奇抜な新作メニューよりも、いつも通りの定番メニューを、ミスなく提供し続けることを重視します。

そして、このレストランには、厨房とホールの間に、分厚く、冷たい「壁」がありました。 料理人たちは、新作メニューが完成すると、その壁に空いた小さな穴から、ホールスタッフに料理を「投げ渡します」。

ホールスタッフは、その料理を受け取って、大慌て。 「このお皿、熱すぎて持てません!」(サーバーのメモリが足りない!) 「盛り付けが不安定で、運ぶ途中に崩れてしまいます!」(本番環境でバグが発生した!)

すると、厨房からは、こう怒鳴り声が返ってきます。 「こっちの厨房では、完璧に動いていたぞ!運び方が悪いんじゃないのか!」(俺のPCでは動いた!)

料理人は「ホールスタッフは変化を嫌う、頭の固い連中だ」と不満を言い、ホールスタッフは「料理人は現場のことを何も考えない、自己満足な連中だ」と愚痴をこぼす。 この、お互いを非難し、責任をなすりつけ合う「混乱の壁(Wall of Confusion)」によって、新作メニューの提供は遅れ、お客様(ユーザー)の満足度は下がる一方でした。

これが、DevOpsが登場する前の、多くのIT企業の姿です。「開発(Dev)」「運用(Ops)」が完全に分断され、お互いに反目しあっている状態。あなたも、どこかで見た光景ではありませんか?


DevOpsの誕生:絶望の壁を、ぶち壊せ!

見かねたレストランのオーナーは、ある日、とんでもない決断をします。 「もう、うんざりだ!今日、この厨房とホールの間の壁を、すべて、ぶち壊す!

壁がなくなったレストラン。 料理人とホールスタッフは、同じ空間で、同じ目標のために働くことになりました。 これこそが、DevOpsの思想の誕生です。

DevOpsとは、特定のツールや役職の名前ではありません。 それは、開発(Dev)運用(Ops)が、分断された組織としてではなく、一つのチームとして連携(Collaboration)し、ソフトウェアのライフサイクル全体に対して、共通の責任を持つ「文化(Culture)」のことなのです。

壁がなくなったレストランでは、3つの大きな変化が起きました。

  1. 共通の目標と責任(Shared Ownership) 料理人は、料理を作るだけでなく、「お客様が、最高の状態で料理を食べられるか」まで責任を持つようになりました。ホールスタッフも、早い段階から新作メニューの試食に参加し、「このお皿なら、安全に運べますね」と意見を言います。「料理が美味しい」のも「サービスが素晴らしい」のも、すべてが「チームの成果」になりました。
  2. 徹底的な自動化(Automation) 料理を運ぶ作業や、お皿を洗う作業といった、人間がやるとミスが起きやすい単純作業を、最新の機械(自動化ツール)に任せることにしました。厨房から客席まで、料理を自動で運ぶコンベアベルトが設置され、人間は、より創造的な仕事に集中できるようになりました。
  3. 継続的なフィードバック(Continuous Feedback) お客様のテーブルに、小さなアンケートを置くことにしました。「料理の温度はいかがでしたか?」「提供スピードに満足いただけましたか?」そのフィードバックは、リアルタイムで、厨房とホールの両方に共有されます。問題があれば、チーム全員で、即座に改善に取り組みます。

この、「チームの連携」「自動化」「フィードバックのループ」こそが、DevOpsを支える3つの柱なのです。


DevOpsを実現する「魔法の道具」たち

DevOpsは文化である、と述べましたが、その文化を実践し、加速させるためには、強力な「道具(ツール)」の存在が欠かせません。壁のなくなったレストランに導入された、「魔法の道具」たちを見てみましょう。

  • CI/CDパイプライン (Jenkins, GitHub Actionsなど)
    • 料理人がソースコードの変更を保存すると、自動でテストが走り、安全性が確認され、コンベアベルトに乗って、お客様の元(本番環境)まで届けられる。この「ビルド→テスト→リリース」という一連の流れを自動化する仕組み。
  • Infrastructure as Code (Terraform, Ansibleなど)
    • 厨房のレイアウトや、コンロの火力設定といった、レストランの環境設定そのものを、「レシピ(コード)」として管理する技術。このレシピさえあれば、いつでも、どこでも、全く同じ品質のレストランを、一瞬で再現できます。
  • モニタリングツール (Datadog, Prometheusなど)
    • 客席の温度、お客様の滞在時間、料理の残り具合などを、常に監視し、異常があれば即座にアラートを出すシステム。問題が大きくなる前に、予兆を検知します。

これらのツールは、DevOpsという文化を実現するための、強力なエンジンなのです。


DevOpsがもたらす、驚くべきビジネスインパクト

「なるほど、DevOpsは良さそうだけど、本当にそんなに効果があるの?」 あります。しかも、驚くほどの効果が。 Googleが中心となって行っている、DevOpsに関する世界最大規模の調査「DORA (DevOps Research and Assessment)」のレポートは、DevOpsを実践する「エリート」な組織と、そうでない「ロー」な組織のパフォーマンスに、衝撃的な差があることを、データで示しています。

比較項目エリートな組織ローな組織
デプロイの頻度1日に複数回(オンデマンド)1ヶ月〜半年に1回
変更のリードタイム1時間未満1ヶ月〜半年
変更障害率0〜15%46〜60%
サービス復旧時間1時間未満1週間〜1ヶ月

このデータが示しているのは、DevOpsを実践する組織は、「開発スピードが速い」だけでなく、同時に「システムの安定性も、遥かに高い」という、驚くべき事実です。 速く、かつ安全に。この二律背反を、DevOpsは実現してしまうのです。

DevOpsは、役職ではなく「生き方」である

最後に、一つだけ重要な注意点があります。 時々、「DevOpsエンジニア募集」といった求人を見かけますが、DevOpsは、特定の個人の役職名ではありません。 「うちにはDevOps担当がいるから大丈夫」というのは、「うちのレストランには、”仲良くさせる担当”のスタッフがいます」と言っているのと同じくらい、奇妙なことです。

DevOpsは、開発者、運用担当者、品質保証担当者、そして時にはビジネスサイドの人間まで含めた、関わる人すべてが共有すべき「マインドセット」であり、「働き方」なのです。

あなたの会社の、開発チームと運用チームの間には、まだ「壁」が見えますか? その壁は、あなたの会社の成長を阻害し、エンジニアたちの情熱をすり減らす、百害あって一利なしの存在です。 DevOpsというハンマーを手に、その壁を壊すための第一歩を、今日から踏み出してみてはいかがでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました