
【この記事はこんな方に向けて書いています】
・会議で「何か質問は?」と聞かれても、何も思い浮かばない方
・的外れな質問をして、場の空気を凍らせてしまった経験がある方
・いつもただ人の話を聞いているだけで、会議への貢献実感が持てない方
・自分の意見や存在感を、会議でうまく示したいと考えている若手・中堅社員
・チームの議論を活性化させたいと思っているリーダー層の方
会議の終盤、司会者がこう問いかけます。「何か質問はありますか?」。シーンと静まり返る会議室。多くの人が下を向いて、早くこの時間が終わるのを待っています。あなたも、そんな「その他大勢」の一人になっていませんか? 発言しなければ評価されないと分かってはいるものの、何をどう質問すれば良いのか分からない。そんなジレンマを抱えている人は少なくありません。この記事では、そんなあなたのための「会議で一目置かれる質問テクニック」を徹底的に解説します。結論から言うと、良い質問とは、単なる疑問の解消ではなく、議論を前に進めるための「賢い武器」です。この記事で紹介する質問の「3つのレベル」をマスターすれば、あなたはもう会議で萎縮することはありません。次の会議から、周囲から「お、こいつは違うな」と一目置かれ、議論の中心で価値を発揮する存在へと変貌を遂げているはずです。
あなたはなぜ、会議で「良い質問」ができないのか?
そもそも、なぜ多くの人は会議で効果的な質問ができないのでしょうか。テクニックの話に入る前に、その根本原因を探ってみましょう。あなたが無意識にやってしまっている「ダメな質問」のパターンと、その背景にある心理を理解することが、改善への第一歩です。
よくある「残念な質問」3パターン
- 調べれば分かる「ググって質問」: 「〇〇という専門用語はどういう意味ですか?」など、少し調べれば自己解決できる質問。会議という全員の時間を奪う価値はありません。
- 相手に丸投げ「どういうこと?質問」: 背景の説明もなしに「それって、どういうことですか?」と漠然と問う質問。思考を放棄し、相手に説明責任を押し付けていると見なされます。
- 議論を蒸し返す「ちゃぶ台返し質問」: すでに議論が終わり、合意形成がなされた事項について「やっぱりA案の方が良いのでは?」と覆そうとする質問。全体の進行を妨げる行為です。
これらの質問をしてしまう背景には、多くの場合、「準備不足」と「当事者意識の欠如」があります。会議の目的を理解せず、ただその場にいるだけ。議題に対して自分なりの考えや仮説を持っていないため、本質的な問いが立てられないのです。
この個人の問題は、組織全体に深刻な影響を及ぼします。パーソル総合研究所の調査によると、日本の企業の会議のうち53.2%が「無駄である」と感じられているという衝撃的なデータがあります。これは、参加者の多くが良い質問で議論に貢献できず、ただ時間だけが浪費されている現実を浮き彫りにしています。
良い質問は、この停滞した空気を打ち破り、会議を生産的なものに変える力を持っています。あなたのたった一つの質問が、チームや組織を救うきっかけになるのです。
質問は3レベルで進化する!凡人から賢者へのロードマップ
「良い質問をしろ」と言われても、具体的にどうすれば良いのか分かりませんよね。そこで、ここでは「一目置かれる質問」を3つのレベルに分けて、具体的かつ体系的に解説します。自分の現在地を把握し、ステップアップしていくイメージで読み進めてください。
レベル | 質問のタイプ | 目的 | 周囲に与える印象 |
レベル1 | 交通整理の質問 | 議論のズレを修正し、論点を明確にする | 堅実、話が分かりやすい、貢献度が高い |
レベル2 | 探鉱夫の質問 | 前提を疑い、本質的な課題を掘り当てる | 思考が深い、鋭い、リスク管理能力が高い |
レベル3 | 建築家の質問 | 視点を変え、新たな未来像を提示する | 視座が高い、創造的、リーダーシップがある |
レベル1:議論を整理する「交通整理」の質問
まず目指すべきは、基本にして最も重要なこのレベルです。議論が白熱したり、話が脱線したりした際に、軌道修正し、全員の目線を合わせる役割を果たします。
目的: 話のズレをなくし、論点を明確にすること。 テクニック:
- 確認質問: 自分の理解が正しいかを確認し、認識のズレを防ぐ。
・「〇〇というご意見ですが、それは△△という理解で合っていますでしょうか?」
・「今お話しされているのは、短期的な課題についてですか?それとも中長期的な視点での課題でしょうか?」 - 要約質問: それまでの議論を整理し、全員の共通認識を形成する。
・「ここまでの議論をまとめさせていただきますと、『〇〇という問題に対し、A案とB案が挙がっており、それぞれのメリット・デメリットは△△である』ということでよろしいでしょうか?」
効果: これらの質問は、派手さはありませんが、会議の生産性を格段に上げる極めて重要な行為です。話が噛み合わないまま時間が過ぎるという最悪の事態を防ぎ、「この人がいると、議論がスムーズに進むな」という堅実な信頼を勝ち取ることができます。まずは、この「交通整理」から始めてみましょう。
レベル2:議論を深掘りする「探鉱夫」の質問
交通整理ができるようになったら、次のステップは議論を「深く」することです。表面的な話で終わらせず、その奥に隠された本質やリスクを掘り当てる、まるで鉱脈を探す探鉱夫のような質問です。
目的: 前提を疑い、物事の本質や潜在的なリスクを掘り当てること。 テクニック:
- 5回のなぜ(Why)質問: トヨタ生産方式で有名な手法。事象に対して「なぜ?」を繰り返すことで、根本原因にたどり着く。
・A「この機能を追加すべきです」
・あなた「なぜ、その機能が必要だとお考えですか?」
・A「顧客からの要望が多いからです」
・あなた「なぜ、顧客はそのような要望を出すのでしょうか?彼らが本当に解決したい課題は何だと考えますか?」 - 前提確認質問: 議論の土台となっている「暗黙の前提」に光を当てる。
・「この計画が成功するための、最も重要な前提条件は何でしょうか?」
・「もし、その前提である『来期の市場成長率が5%』という数字が未達だった場合、この計画はどのような影響を受けますか?代替案はありますか?」
効果: レベル2の質問は、思考の深さを示します。「なぜ?」「もし〜でなかったら?」という問いは、議論を安易な結論に飛びつかせず、より本質的でリスクを考慮した意思決定へと導きます。これにより、あなたは単なる参加者ではなく、重要な意思決定に不可欠な「鋭い視点を持つ人物」として認識されるようになります。
レベル3:議論を飛躍させる「建築家」の質問
議論を整理し、深掘りした先にあるのが、この最終レベルです。既存の枠組みや制約を取り払い、新たな視点や未来のビジョンを描き出す、まるで新しい建物を設計する建築家のような質問です。
目的: 視点を転換させ、議論の次元を引き上げ、新たな可能性を生み出すこと。 テクニック:
- 視点変更質問: 意図的に立場を変えることで、固定観念を打ち破る。
・「もし私たちが、業界トップの競合A社の立場だったら、この状況をどう見ますか?」
・「このサービスの最終的な利用者であるお客様がこの会議にいたら、何と言うと思いますか?」 - 理想追求質問: あえて制約を外すことで、本来目指すべきゴールを明確にする。
・「仮に、予算や人員の制約が一切ないとしたら、このプロジェクトで本当に実現したい理想の姿とは何でしょうか?」
・「10年後の未来から振り返った時に、『あの時の判断は正しかった』と思えるような、今打つべき一手は何だと思いますか?」
効果: レベル3の質問は、行き詰まった議論にブレークスルーをもたらします。目の前の課題だけでなく、より高い視座から物事を捉えていることを示し、未来を創造するリーダーシップを発揮することができます。このレベルの質問が自然にできるようになった時、あなたは間違いなく組織にとって不可欠な存在となっています。
良い質問は「準備」が9割!会議前の新習慣
ここまで3つのレベルの質問テクニックを紹介しましたが、これらの質問をその場で即興で繰り出すのは至難の業です。実は、一目置かれる人たちは、会議が始まる前に勝負を決めています。良い質問は、良質な準備からしか生まれません。
準備1:アジェンダを「自分ごと化」し、仮説を持つ
会議のアジェンダが送られてきたら、ただ目を通すだけで終わらせてはいけません。それぞれの議題について、「この議題の目的は何か?」「自分だったらどう判断するか?」「考えられる論点は何か?」を自問自答し、自分なりの「仮説」を立てておきます。この仮説があるからこそ、議論の流れの中で「自分の考えと違うな」「この論点が抜けているな」と気づき、的確な質問ができるのです。
準備2:3つのポジションでシミュレーションする
一つの視点からだけ物事を見ると、考えが偏ってしまいます。そこで、議題に対して以下の3つの役割を一人で演じ、多角的にシミュレーションしてみることをお勧めします。
ポジション | 思考の例 | 準備できる質問の例 |
賛成派 | この計画のメリットは何か?どうすればもっと良くできるか? | 「この計画をさらに加速させるために、他にできることはありませんか?」 |
反対派 | この計画のリスクやデメリットは何か?代替案はないか? | 「考えられる最大のリスクは何ですか?それに対する対策はありますか?」 |
顧客・第三者 | この計画は、顧客にとって本当に価値があるのか?世間はどう見るか? | 「この決定が、お客様の満足度に具体的にどう繋がるのか教えてください」 |
このトレーニングにより、どんな角度から意見が出ても対応できる、引き出しの多い質問を準備することができます。
質問は武器ではない。議論を共創する「パス」である
最後に、最も大切な心構えについてお伝えします。質問は、相手を言い負かしたり、自分の知識をひけらかしたりするための武器ではありません。それは、議論をより良いものにするために、仲間へと渡す「パス」です。
・敬意を忘れない: 相手の意見を尊重し、「教えてください」「〇〇さんのご意見を、もう少し詳しく伺ってもよろしいですか?」という謙虚な姿勢が、相手に心を開かせ、より深い議論を引き出します。 ・タイミングを見極める: 人が熱心に話している最中に、話の腰を折るような質問は避けましょう。相手が話し終えた後や、議論の区切りが良いタイミングで、簡潔に問いかけるのがマナーです。
・簡潔に話す: 「質問なのですが、〇〇という点についてです。なぜなら〜」というように、まず結論(質問のポイント)から話すことを心がけましょう。
優れた質問は、会議室の空気をポジティブに変え、参加者全員の思考を活性化させます。あなたの質問という「パス」が、チームの素晴らしいゴールを生み出すのです。
さあ、次の会議が、あなたが「その他大勢」から抜け出す最初の舞台です。まずはレベル1の「交通整理の質問」から、ぜひ実践してみてください。その小さな一歩が、あなたのビジネスパーソンとしての価値を大きく飛躍させるはずです。
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