
【この記事はこんな方に向けて書いています】
・テレアポやメール営業で、なかなか成果が出ずに悩んでいるSES営業の方
・商談はできても、他社との差別化ができず失注が続いている方
・「ただの御用聞き」から脱却し、付加価値の高い営業を目指したい方
・エンジニアからも、クライアントからも信頼される営業になりたい方
・SES営業として、自身の市場価値を高めていきたいと考えている方
「エンジニアが足りていない企業は星の数ほどある。だから、とにかくアタックリストの上から電話をかけまくれ!」そんな風に教えられ、毎日何十件、何百件と電話やメールを送り続けていませんか?しかし、そのほとんどは手応えのないまま。たまに繋がった商談も、結局はスキルと単金の条件だけで判断され、他社に負けてしまう。気づけば、ただ企業とエンジニアのスキルシートを右から左へ流すだけの「伝書鳩」になってはいないでしょうか。この記事は、そんな消耗戦から抜け出し、SES営業として真の価値を発揮するための「勝ちパターン」を具体的に解説します。結論から言えば、単なる「人材サプライヤー」から、顧客の事業を成功に導く「戦略的パートナー」へと役割をシフトさせること。これが、凡人でもトップ営業になれる唯一の道です。この記事を読み終える頃には、明日からのあなたのアクションが具体的に変わり、仕事が驚くほど面白くなっていることをお約束します。
なぜ、あなたの「数撃てば当たる」アプローチは響かないのか?
多くのSES営業が陥りがちなのが、「とにかく数をこなす」というアプローチです。もちろん、行動量は成功の重要な要素の一つ。しかし、その「数」が質を伴っていなければ、それは単なる消耗戦に過ぎません。
従来の負けパターン
- アプローチ: 企業リストの上から順番に電話。「Javaのエンジニアいかがですか?」
- ヒアリング: 「どんなスキルセットの方を、何名、いつから必要ですか?」
- 提 案: 条件に合うエンジニアのスキルシートをメールで送付。
- 結 果: 「他社で決まりました」「今回は見送ります」の連絡。
心当たりはないでしょうか。このアプローチの問題点は、思考の主語が常に「自社のエンジニアをどう売るか」になっている点です。顧客からすれば、同じような電話やメールが毎日何通も届く中で、あなたの連絡がその他大勢の中に埋もれてしまうのは当然の結果と言えます。
このやり方は、いわば「空腹の人を探して、おにぎりを売る」ようなもの。もちろん、お腹が空いている人には売れるでしょう。しかし、相手が「本当は栄養バランスの取れた食事がしたい」と考えているかもしれないことには、全く気づくことができません。これでは、より安くて大きいおにぎりを売る競合が現れれば、すぐに負けてしまいます。
数字が示す「ただの人材紹介」の限界
ここで、少し冷静に市場のデータを見てみましょう。 経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」によれば、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。
この数字だけを見ると、「IT人材は引く手あまたなのだから、営業は簡単だろう」と思えるかもしれません。しかし、現実は逆です。市場全体が人材不足だからこそ、企業側は「誰でも良い」のではなく、「自社の事業成長に本当に貢献してくれる人材」を、より一層慎重に見極めようとしています。
実際、ある調査では、BtoBの購買担当者の82%が、「営業担当者が自社の業界やビジネスを深く理解していること」を取引の重要な決め手と考えている、という結果が出ています。
つまり、顧客が求めているのは、単なるスキルセットのリストではありません。自社のビジネス課題を理解し、その解決に繋がる提案をしてくれるパートナーなのです。このニーズに応えられない「おにぎり売り」のような営業は、今後ますます淘汰されていく運命にあるのです。
脱・御用聞き!「戦略的パートナー」という勝ち筋
では、その他大勢から抜け出し、顧客から選ばれる営業になるためにはどうすれば良いのでしょうか。その答えが、冒頭で述べた「戦略的パートナー」への進化です。
比較項目 | 従来の営業(人材サプライヤー) | 戦略的パートナー |
思考の主語 | 自社のエンジニア | 顧客の事業 |
提供価値 | 人材(労働力) | 課題解決、事業成長 |
ヒアリング内容 | 必要なスキル、人数、期間 | 事業目標、プロジェクトの背景、チームの課題 |
提案内容 | スキルシートの送付 | 課題解決に繋がる人材・チームの提案 |
顧客との関係 | 受注・発注の関係 | 共に成功を目指すパートナー |
戦略的パートナーとは、顧客の事業内容、今後のロードマップ、そして開発現場が抱える潜在的な課題まで深く理解し、それらを解決するための最適な人材やチーム体制を提案できる営業です。
タクシーの運転手に例えるなら、「〇〇までお願いします」と言われてただ目的地に向かうのが従来型。一方で、「〇〇に行くのですね。その時間帯は道が混むので、こちらのルートを使いましょう。また、明日のプレゼンに備えて、近くに資料を印刷できるカフェもありますよ」と、顧客の目的達成までを支援するのが戦略的パートナーです。どちらが再び指名されるかは、言うまでもありませんよね。
凡人でも勝てる!戦略的パートナーになるための4ステップ
ここからは、明日から実践できる具体的な4つのステップをご紹介します。一つひとつは決して難しいことではありません。しかし、これを継続することで、あなたの営業スタイルは劇的に変化します。
ステップ1:探偵になれ!仮説を立てるための徹底した事前準備
ファーストコンタクトの前に、勝負は8割決まっています。何も準備せずに電話をするのは、武器を持たずに戦場へ向かうのと同じです。
負けパターン: ・会社名と電話番号だけを見て、上から順番に電話する。
勝ちパターン(戦略的パートナー): アプローチする企業のことを、探偵のように徹底的に調べ上げます。
・公式サイトのIR情報、中期経営計画: 今後、会社がどの分野に投資しようとしているのか?(例:「DX推進に注力」→関連部署で人材ニーズが高まるはず)
・プレスリリース、ニュース: 最近どんなサービスをローンチしたか?どんな企業と提携したか?(例:「〇〇社と業務提携」→システム連携で開発リソースが必要になるかも)
・採用ページ、技術ブログ、Wantedly: どんな技術スタックを使っているか?どんなエンジニアを求めているか?(例:「Reactエンジニアを積極採用中」→フロントエンドに課題感がありそう)
これらの情報から、「この企業は、今〇〇という事業課題を抱えており、それを解決するために△△の技術を持つエンジニアが必要なのではないか?」という仮説を立てます。この仮説こそが、あなたの営業をその他大勢から一線を画す、強力な武器となります。
ステップ2:最初の15秒で心を掴むファーストコンタクト
事前準備で立てた仮説を武器に、いよいよアプローチです。ここでの目的は「商談のアポイントを取ること」ですが、その伝え方が全く異なります。
負けパターン: 「株式会社〇〇の△△と申します。弊社、ITエンジニアのご支援をしておりまして、ご状況はいかがでしょうか?」
→ 相手からすれば「また営業か…」で終わってしまいます。
勝ちパターン(戦略的パートナー): 「株式会社〇〇の△△と申します。御社の『AIを活用した新サービス〇〇』のプレスリリースを拝見しました。特に△△の機能は素晴らしいですね。弊社、同様のサービス開発において、Pythonを用いた開発支援の実績がございまして、御社の事業をさらに加速させるお手伝いができるのではないかと考え、ご連絡いたしました。一度、情報交換のお時間をいただけませんでしょうか?」
→ 相手からすれば「お、うちの会社のこと、よく調べているな」「ただの人材紹介じゃなさそうだ」と感じ、話を聞いてみる価値がある、と思わせることができます。
ポイントは、
①相手への共感(調べてきたこと)、
②自分たちが貢献できること(実績)、
③相手のメリット(事業加速)を簡潔に伝えることです。
ステップ3:医者であれ!潜在ニーズを引き出すヒアリング
無事にアポイントが取れたら、ヒアリングです。ここで絶対にやってはいけないのが、いきなり自社のエンジニアの話をすること。あなたの役割は、顧客という患者を診察する「医者」です。
負けパターン: 「どのようなスキルをお持ちの方をご希望ですか?」 「単金のご予算はどれくらいですか?」
→ これでは、ただの御用聞きです。
勝ちパターン(戦略的パートナー): 事業の根幹に関わる質問を投げかけ、顧客自身も気づいていない潜在的な課題を引き出します。
・「このプロジェクトが目指している、最終的なビジネス上のゴールは何ですか?」
・「現状のチーム体制で、課題に感じていらっしゃる点はございますか?
(例:技術的な課題、コミュニケーション、進捗管理など)」
・「もし、理想的なエンジニアが参画した場合、半年後、チームはどのような状態になっているのが理想ですか?」
これらの質問を通じて、単なる「Javaが書ける人」というスキル要件の裏にある、「レガシーシステムを刷新して、業務効率を30%改善したい」といった真のニーズ(=ビジネスゴール)を掴むことが目的です。
ステップ4:期待を超える「共犯者」としての提案
ヒアリングで真のニーズを掴んだら、いよいよ提案です。スキルシートをただ送るだけでは、三流の営業です。
負けパターン: ・条件に合うエンジニアのスキルシートを複数名分メールで送る。
・メール本文:「ご要望のJavaエンジニアのスキルシートです。ご検討ください。」
勝ちパターン(戦略的パートナー): 単なる人材の紹介ではなく、「事業を成功させるための仲間」として提案します。
「先日のヒアリングで伺った『業務効率30%改善』というゴールに対し、Aさんをご提案します。彼のJavaスキルはもちろんですが、前職でレガシーシステムの刷新プロジェクトをリーダーとして牽引した経験があり、必ずや御社のプロジェクト成功の起爆剤になると確信しております。また、チームのコミュニケーション活性化が得意なBさんをサポートにつけることで、より円滑な開発体制を構築できます。」
このように、ヒアリングで得た顧客の言葉(ビジネスゴール)と、エンジニアの経験・スキル・人間性までを結びつけて提案することで、そのエンジニアが参画した後の「成功イメージ」を顧客に具体的に描かせることができます。もはやあなたは単なる営業ではなく、プロジェクト成功を共に目指す「共犯者」なのです。
契約はゴールではなく、スタートライン
戦略的パートナーの仕事は、契約を取って終わりではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。
参画したエンジニアが現場で最高のパフォーマンスを発揮できているか、定期的にエンジニア本人と面談し、フォローします。同時に、クライアント担当者とも定期的にコミュニケーションを取り、プロジェクトの進捗や新たな課題がないかを確認します。
・エンジニアへのフォロー: 悩みや不安を解消し、モチベーションを維持する。
・クライアントへのフォロー: 新たな課題やニーズをいち早く察知し、追加の提案に繋げる。
この地道な活動が、クライアントとエンジニア双方からの絶大な信頼を生み出します。そして、「〇〇さんに任せておけば安心だ」という評価が、次の大型案件や、別の部署の紹介に繋がっていくのです。顧客のLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化させることこそ、安定した成果を出し続けるトップ営業の秘訣です。
凡人から、市場価値の高い営業へ
SES営業の仕事は、決して楽なものではありません。しかし、「数をこなす」だけの消耗戦から、「価値を提供する」戦略的パートナーへと視点を変えるだけで、見える景色は一変します。
顧客の事業成功に貢献し、感謝される。 エンジニアのキャリア形成を支援し、頼られる。
これは、単にモノを売る営業では味わえない、この仕事ならではの醍醐味です。今日から、あなたも「戦略的パートナー」への第一歩を踏み出してみませんか。まずは1社で構いません。その企業の未来を本気で考え、仮説を立て、アプローチしてみてください。その小さな変化が、あなたをその他大勢から抜け出させ、市場価値の高い営業へと成長させる、大きな原動力になるはずです。
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