「この案件はキャリアにならない」その発言が“二流”の証明である理由

この記事は約7分で読めます。

【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 地味な仕事や雑用ばかりで、「自分のキャリアは大丈夫か」と不安になっている方
  • 花形部署で活躍する同期を見て、「それに比べて自分は…」と焦りを感じている方
  • 「キャリアになる仕事」と「ならない仕事」を、無意識に選別してしまっている方
  • どんな環境でも着実に成長し、市場価値を高めていけるプロフェッショナルの思考法を知りたい方

「今回のアサイン、正直、自分のキャリアにならないんですよね…」

もし、あなたの口から、あるいはあなたのすぐ隣から、こんなセリフが聞こえてきたとしたら。 それは、あなたのキャリアが、極めて危険な停滞期に差し掛かっていることを示す、重大なサインかもしれません。

私たちコンサルタントが、数多くのビジネスパーソンの成長(あるいは、その逆)を目の当たりにする中で確信していることがあります。それは、一流のプロフェッショナルは、決して「仕事を選ばない」。そうではなく、彼らは、いかなる仕事からでも「価値」と「成長機会」を自ら『創り出す』能力を持っているということです。

例えるなら、あなたは「最高の食材」を待っている料理人のようなものです。「トリュフやフォアグラ(花形の案件)が与えられなければ、私の腕は振るえない」と。 しかし、真の一流シェフは違います。彼らは、たとえジャガイモと玉ねぎ(地味な案件)しか与えられなくても、その素材の本質を見抜き、最高の技術を注ぎ込むことで、人々を感動させる絶品のポタージュを創り上げてしまうのです。

この記事では、「この案件はキャリアにならない」という発言が、なぜあなたの成長を止め、市場価値を下げてしまうのか、その裏に潜む「3つの致命的な勘違い」を徹底的に解剖します。そして、どんな凡庸な案件をも、あなたのキャリアを輝かせる「金の卵」に変えるための、具体的な思考のフレームワークを提示します。

その発言に潜む、キャリアを停滞させる「3つの致命的な勘違い」

「キャリアにならない」という一見もっともらしい不満の裏には、実は、あなたの成長を根底から阻害する、構造的な思考の歪みが隠されています。

勘違い1:キャリアは「与えられるもの」という勘違い

この発言の根底にあるのは、「会社や上司が、自分のために『キャリアになる、良い案件』を用意してくれるべきだ」という、受け身の姿勢です。これは、自分のキャリアの主導権を、完全に他人に明け渡してしまっている状態と言えます。

しかし、ビジネスの現実は異なります。会社があなたに提供するのは、キャリアそのものではなく、あくまで「機会」です。その機会を、自身の成長と市場価値向上に繋がる「キャリア資産」に転換できるかどうかは、100%、あなた自身の責任なのです。 「良い案件が来ないから成長できない」と嘆くのは、「良い波が来ないからサーフィンがうまくならない」と言っているのと同じです。プロは、どんな波でも乗りこなし、自らの技術を磨いていきます。

勘違い2:価値は「作業内容」に宿るという勘違い

多くの人は、「戦略立案」「新規事業開発」といった、聞こえの良い、いわゆる「花形の仕事」にしか価値がないと思い込んでいます。一方で、「議事録作成」「顧客からのクレーム対応」「地道なデータ入力」といった仕事は、価値の低い「雑用」だと見下してはいないでしょうか。

これは、物事の表面しか見ていない、極めて浅い仕事観です。 プロフェッショナルは、仕事の価値が「作業内容(What)」ではなく、その仕事の「目的(Why)」と、そこから何を引き出すかという「姿勢(How)」によって決まることを知っています。

一見、キャリアにならない仕事プロフェッショナルが引き出す「キャリア資産」
議事録作成・複雑な議論の中から、誰が、何を、なぜ、どう判断したのか、その意思決定の構造を理解する力
・参加者の利害関係やパワーバランスを客観的に観察し、組織力学を学ぶ機会
顧客からのクレーム対応・顧客が本当に困っていること(ペイン)の一次情報に触れ、サービス改善のヒントを得る機会
・感情的な相手に対して、論理的かつ共感的にコミュニケーションする高度な交渉術
地道なデータ入力・そのデータが、ビジネスプロセスの中でどのように生まれ、どう活用されているのかを学ぶ機会
・非効率な入力プロセスを発見し、RPAやマクロによる業務改善を提案する絶好の機会

Google スプレッドシートにエクスポート

見ての通り、どんな仕事にも、あなたのキャリアを豊かにする「学びの鉱脈」が眠っています。その鉱脈を掘り当てる能力こそが、あなたの価値なのです。

勘違い3:成長は「自動的」についてくるという勘違い

仮に、あなたが念願の「花形案件」にアサインされたとしましょう。しかし、ただその場にいるだけで、自動的に成長できるわけではありません。

成長とは、経験そのものではなく、「経験」と「内省(振り返り)」のサイクルによってのみもたらされます。 「このプロジェクトを通じて、自分は何を学びたいのか」という「自分だけのミッション」を事前に設定し、プロジェクトが終わった後に、「そのミッションは達成できたか」「今回の成功・失敗の要因は何か」「次に活かせる教訓は何か」を、徹底的に言語化し、自分の中に蓄積する。 このサイクルを回す意志がなければ、たとえどんなに素晴らしい案件に参加しても、それはただの「楽しい思い出」で終わり、あなたの血肉となることはありません。

成長機会は「与えられる」のではない。「創り出す」ものだ

では、どうすれば、どんな仕事からでも成長機会を創り出せるのでしょうか。 その思考法を、一枚の図で示します。仕事の価値は、「案件の華やかさ」という横軸と、「本人の取り組み姿勢」という縦軸のマトリクスで決まります。

案件の華やかさ →低い案件の華やかさ →高い
本人の取り組み姿勢 ↑能動的C:意外な成長
地味な案件から大きな学びを得て、
周囲からの評価を一変させる
D:最大の成長
最高の機会を活かし、
飛躍的な成長を遂げる
本人の取り組み姿勢 ↓受け身A:停滞
「キャリアにならない」と不満を言い、
何も得ずに時間を無駄にする
B:限定的な成長
案件の勢いで少しは成長するが、
学びを最大化できず、器用貧乏で終わる


「キャリアにならない」と発言する人は、
Aの領域に自ら足を踏み入れています。彼らが夢見るのは、Dの領域かもしれません。しかし、真に注目すべきは、Cの領域です。 誰もがやりたがらない地味な案件に、能動的に取り組み、期待を大きく超える成果と学びを得る。そうした人材こそが、経営陣から「彼は本物だ」と評価され、結果として、Dの領域へと引き上げられていくのです。 つまり、Cの経験なくして、Dの領域にはたどり着けないのです。

凡庸な案件を「金の卵」に変えるための具体的なアクション

では、Cの領域で結果を出すために、明日から何をすべきか。具体的な3つのアクションを提案します。

1. 自分だけの「裏ミッション」を設定する 会社から与えられた公式のミッション(KGI/KPI)とは別に、そのプロジェクトを通じて、あなたが個人的に達成したい「裏ミッション」を、自分自身に課してください。 「この地味なデータ整理の案件を通じて、Pythonによるデータ分析の基礎をマスターする」 「このクレーム対応の仕事を通じて、顧客の潜在ニーズを5つ以上特定し、次の商品企画に繋げる」 この自分との約束が、あなたの仕事への向き合い方を劇的に変えます。

2. 一つ上の視座で「Why」を探る 「なぜ、会社はこの地味な仕事を、今、やる必要があるのだろうか?」と、一つ上の上司の視点、さらには経営者の視点で、その仕事の「目的」と「位置付け」を考えてみましょう。 一見、単純な作業に見えても、それが全社の重要な戦略の、根幹を支える一部であることに気づけるかもしれません。その背景を理解すれば、あなたの仕事のやり方も、アウトプットの質も、自ずと変わってくるはずです。

3. 経験を「言語化」し、資産に変える プロジェクトが終わったら、必ず「経験の棚卸し」を行ってください。PowerPoint一枚で構いません。 「P(Project):どんな案件だったか」 「P(Problem):どんな課題があったか」 「A(Action):自分がどう行動したか」 「R(Result):どんな結果になったか」 「L(Learned):何を学んだか」 この「PPARL(パール)モデル」で経験を言語化し、保存しておくのです。これが、あなたのキャリアを語る上での、強力な「資産」となります。

最後に:シェフは、食材を選ばない

あなたの目の前にある仕事は、あなたのキャリアを創るための、かけがえのない「食材」です。 その食材が、地味に見えるジャガイモや玉ねぎであったとしても、不満を言って腐らせてしまうのか。それとも、あなたの知恵と技術を注ぎ込み、人々を唸らせる絶品料理へと昇華させるのか。

その選択権は、常にあなたにあります。 次に「この案件は、キャリアにならない」という言葉が頭をよぎった時、こう自問してみてください。

「どうすれば、この案件を、私のキャリアの代表作にできるだろうか?」と。

その問いこそが、あなたを単なる労働者から、自らのキャリアを創造する、真のプロフェッショナルへと進化させる、魔法の言葉なのです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました