
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 「今の会社に残るべきか、転職すべきか」という問いの答えが、堂々巡りになっている方
- 決断できずに時間だけが過ぎていくことに、焦りや不安を感じている方
- 感情的な勢いではなく、論理的で後悔のないキャリア選択をしたい方
- 自分のキャリアを客観的に分析し、次の一歩を明確にするための具体的なツールが欲しい方
「給料は悪くないけど、仕事にやりがいを感じない…」 「人間関係は最高だけど、このままでは成長できない気がする…」 「会社の将来は不安だけど、転職して失敗するのも怖い…」
あなたの頭の中で、このような「天使のささやき」と「悪魔の誘い」が、毎日終わりのない議論を繰り広げてはいませんか? もしそうなら、安心してください。あなたは一人ではありません。大手人材会社の調査(パーソル総合研究所、2024年)によると、正社員の約半数が「転職を検討している、または漠然と考えている」と回答しており、この悩みは現代のビジネスパーソンにとって、極めて普遍的なものなのです。
しかし、問題は、多くの人がこの重要な問いに対して、感情的な「綱引き」で答えを出そうとしてしまうことです。これでは、いつまで経っても明確な答えは出ません。
例えるなら、あなたは「今の車に乗り続けるか、新車に買い替えるか」で悩んでいるようなものです。今の車(現職)の不満な点(ガタガタという異音)ばかりを気にし、ショールームに飾られたピカピカの新車(理想の転職先)に心を奪われる。しかし、これでは冷静な比較はできません。
この記事では、あなたをその堂々巡りの思考から解放します。コンサルタントが企業の経営課題を分析するのと同じように、客観的な「意思決定フレームワーク」を用いて、あなたのキャリアを冷静に分析し、後悔のない決断を下すための、具体的で論理的な手順を提示します。
なぜ決められないのか?多くの人が陥る「比較の罠」
そもそも、なぜ私たちはこの問題で悩み続けてしまうのでしょうか。 それは、私たちが無意識のうちに、「現実の、不満な“今”」と「理想の、完璧な“未来”」という、土俵の違う二つを比較してしまっているからです。
現職には、良い点もあれば、悪い点も具体的に見えています。一方で、転職先のイメージは、「きっとこうだろう」「こうあってほしい」という、あなたの希望的観測で美化されがちです。これでは、新車が良く見えて当たり前です。
正しい意思決定とは、「客観的に評価した“今”」と、「リスクも考慮した、現実的な“未来”」を、同じ天秤にかけることから始まります。そのための具体的な分析手法が、これからご紹介するフレームワークです。
後悔しないための意思決定フレームワーク
このフレームワークは、大きく分けて「ステップ1:『現在地』の健康診断」と「ステップ2:『未来の投資先』の分析」、そして「ステップ3:最終意思決定」の3段階で構成されます。
ステップ1:『現在地』の健康診断 – 今の会社を客観的にスコア化する
まずは、あなたの今の職場が、あなたにとって本当に「良い場所」なのかを、感情を排して客観的に評価します。ここでは、キャリアの充実度を測る上で重要な「Will(やりがい)」「Can(成長)」「Must(環境・待遇)」という3つの軸を用います。
以下の表を参考に、それぞれの項目について、あなた自身の現状を10点満点で採点してみてください。
評価軸 | 評価項目(例) | あなたのスコア(/10) |
Will(やりがい) | ・仕事内容そのものに、面白さや興味を感じるか? ・自社の事業やビジョンに、心から共感できるか? ・自分の仕事が、誰かの役に立っている実感があるか? | |
Can(成長) | ・今の仕事を通じて、市場価値の高いスキルが身についているか? ・自分の能力が伸びている、成長しているという実感があるか? ・尊敬できる上司や同僚から、刺激を受けているか? | |
Must(環境・待遇) | ・給与、福利厚生に満足しているか? ・職場の人間関係は良好か? ・労働時間や働き方(残業、リモートワークなど)は適切か? | |
合計スコア | /30 |
【スコアの評価と、次の問い】 合計スコアが21点以上であれば、あなたは比較的恵まれた環境にいると言えます。一方、15点以下であれば、深刻なミスマッチを抱えている可能性があります。
しかし、ここで最も重要なのは、点数の高低そのものではありません。次の問いです。 「このスコアは、今の会社に在籍したまま、改善する余地があるか?」 例えば、「Can(成長)」のスコアが低いのであれば、上司に相談して新しい仕事を任せてもらう、あるいは社内公募制度で部署を異動するといった「社内での解決策」は考えられないでしょうか。この問いへの答えが、あなたの取るべき戦略を大きく左右します。
ステップ2:『未来の投資先』の分析 – 転職という選択肢を具体化する
次に、「転職」という選択肢を、憧れやイメージから、具体的な検討対象へと落とし込んでいきます。これは、あなたのキャリアという資産を、次にどこに「投資」するか、その投資先を吟味するプロセスです。
1. 「譲れない軸」を定義する まず、次の職場で、あなたが絶対に譲れない条件(Must-have)を、3つだけ書き出してください。「年収600万円以上」「リモートワーク週3日以上」「〇〇業界であること」など、具体的であればあるほど良いです。これは、無数にある求人の中から、あなたが本当に見るべきものを絞り込むための「フィルター」となります。
2. 「理想のスコア」を設定する ステップ1の自己評価を踏まえ、あなたが次の職場で実現したい「理想のスコア」を設定します。例えば、「Will: 8点、Can: 9点、Must: 7点、合計24点以上」といった形です。これは、あなたがどんな転職先を探すべきかの「目標設定」となります。
3. 「デューデリジェンス(徹底的な調査)」を行う 設定した「譲れない軸」と「理想のスコア」を基に、転職エージェントに相談したり、転職サイトを調べたりして、「そのような求人が、今の自分のスキルや経歴で、現実的に存在するのか?」を調査します。ここが、夢物語と現実的な戦略を分ける、最も重要なフェーズです。憧れの企業について、口コミサイトなどでネガティブな情報も集め、リスクを直視することも忘れてはいけません。
ステップ3:『最終意思決定』 – 4つの選択肢から、あなたの道を選ぶ
ステップ1と2の分析結果が出揃ったところで、いよいよ最終的な意思決定です。あなたの取るべき道は、以下のマトリクスによって、4つのいずれかに論理的に導き出されます。
現状の改善可能性:低い | 現状の改善可能性:高い | |
転職の現実性:高い | ④ 転職(Go) 明確な目的を持って、次のステージへ進むべき | ② 比較検討(Compare) 社内での改善と転職を天秤にかけ、より良い方を選ぶ |
転職の現実性:低い | ③ 準備(Prepare) 市場価値を高め、「転職できる自分」になってから動く | ① 残留(Stay) まずは社内での環境改善に全力を尽くすべき |
① 残留(Stay): あなたの会社は、改善の余地がある良い会社です。そして、今のあなたには、まだ魅力的な転職先が見つかっていません。まずは、社内でスコアを上げるための具体的なアクション(上司への相談、部署異動の希望など)を起こしましょう。
② 比較検討(Compare): あなたは、良い選択肢を二つ持っています。社内での改善によって得られる未来と、転職によって得られる未来。両方を具体的な選択肢としてテーブルに並べ、よりあなたの理想に近い方を選び取りましょう。
③ 準備(Prepare): 現状に不満はあるものの、今すぐ動くのは得策ではありません。市場があなたに求めるスキルと、今のあなたとの間にはギャップがあります。まずは現職に留まりながら、資格取得やスキルアップに励み、市場価値を高める「準備期間」と位置づけましょう。
④ 転職(Go): あなたの決断の時は、熟しました。現状に改善の見込みはなく、かつ、あなたの理想を叶える、現実的な転職先が存在します。自信を持って、新しい世界への一歩を踏み出しましょう。
最後に:最高の決断とは、プロセスにある
「今の会社に残るべきか、転職すべきか」 この問いに、唯一絶対の「正解」はありません。しかし、あなたが後悔しないための「最善の決断」を導き出すための「正しいプロセス」は、確実に存在します。
今回ご紹介したフレームワークは、そのための思考の道具です。 あなたはもう、感情の綱引きで消耗する必要はありません。客観的な分析に基づき、あなた自身のキャリアのCEOとして、冷静に、そして主体的に、次の戦略を決定することができるのです。
この論理的なプロセスを経て下した決断であれば、あなたがどちらの道を選んだとしても、それは必ず、あなたの未来をより良い方向へと導く、力強い一歩となるはずです。
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