
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 論理的思考力を鍛えたいけど、何から手をつければいいか分からない方
- 難しいフレームワーク(MECE、ロジックツリーなど)を学んで、挫折してしまった経験がある方
- 本を読むだけでは、なかなかスキルが身につかないと感じている方
- 仕事や日常生活の中で、気軽に思考力を高めるトレーニングをしたい方
- 「地頭がいい人」の思考の習慣を、シンプルに真似してみたい方
「論理的思考力を身につけよう!」 そう意気込んで、評価の高いビジネス書を何冊も読んだ。MECE、ロジックツリー、PREP法…。たくさんのフレームワークを学んだはずなのに、いざという時に全く使いこなせない。
結局、自分には才能がないのかもしれない…。 そんな風に、自信を失いかけていませんか?
もし、あなたがそう感じているなら、それは大きな誤解です。あなたの能力が低いわけでは、決してありません。問題は、いきなり難しくて複雑なトレーニングから始めようとしていたことにあるのかもしれません。
論理的思考力を鍛えるのは、スポーツのトレーニングとよく似ています。 いきなり100kgのバーベルを持ち上げようとしても、体を痛めてしまうだけですよね。大切なのは、まず毎日続けられるジョギングやストレッチで、基礎的な筋力と体力をつけることです。
この記事では、小難しい専門用語やフレームワークを一旦忘れ、誰でも、今日から、そして無理なく続けられる「たった3つのシンプルな習慣」に絞って、本質的な論理的思考力の鍛え方を解説します。
この3つの習慣を続けるだけで、あなたの「思考のOS」そのものがアップデートされ、物事の見え方や考え方が、劇的に変わっていくことをお約束します。
なぜ「シンプルな習慣」が、思考力を鍛える上で最強なのか?
本題に入る前に、なぜ「シンプルな習慣」がこれほどまでに効果的なのか、その理由を少しだけお話しさせてください。
論理的思考力は、一度学べば終わりという「知識」ではありません。それは、日々の積み重ねによって鍛えられる「スキル」であり「思考体力」です。
ある調査によれば、企業が若手社員に求める能力として「論理的思考力」は常に上位に挙げられますが、多くのビジネスパーソンがその習得に困難を感じています。このギャップの原因は、多くの人が論理的思考を「特別な学習」と捉え、継続的なトレーニングができていないことにあります。
学習科学の世界では、一度に大量の情報を詰め込むよりも、定期的かつ継続的に、小さな負荷をかけ続ける方が、スキルははるかに定着しやすいことが分かっています。
つまり、月に一度、難しい本を一日中読むよりも、毎日5分でも、これから紹介するような思考の「素振り」を続ける方が、よほど効果的なのです。 これからお話しするのは、あなたの日常に溶け込み、知らず知らずのうちに思考力を鍛え上げてくれる、魔法のような習慣です。
論理的思考力を劇的に高める、たった3つのシンプルな習慣
お待たせしました。ここからは、あなたの「思考のOS」を根本から変える、3つの習慣を具体的に見ていきましょう。どれも驚くほどシンプルですが、効果は絶大です。
習慣1:「で、要するに?」と自分に問いかける(要約・抽象化の習慣)
これは、情報の本質を見抜く力を鍛えるトレーニングです。 会議に出た後、ニュース記事を読んだ後、同僚と雑談した後…どんな場面でも構いません。その情報のシャワーを浴びた後に、必ず心の中で自分にこう問いかけてください。
「で、要するに、この話で一番大事なことは何だったんだろう?」 「この内容を、全く知らない人に一行で説明するとしたら、なんて言うだろう?」
例えば、1時間にわたる長時間の会議。それを「要するに、『来月のイベントの集客方法として、SNS広告とWebメディア広告のどちらに予算を集中させるか』という点が最大の論点だったな」と、一言で要約してみる。
この習慣を続けると、たくさんの情報の中から、重要な「幹」の部分と、些末な「枝葉」の部分を瞬時に見分ける力が養われます。話の要点を的確に掴み、簡潔に伝える能力は、あらゆるコミュニケーションの土台となります。これが、ピラミッド構造の頂点を素早く見つける力、すなわち「抽象化能力」のトレーニングなのです。
【今日からできる実践アクション】
- 会社の誰かから受け取った長文メールを、転送する前に、冒頭に「【要約】〇〇の件です」と一行で書き加えてみる。
- 今日見たネットニュースのタイトルを見て、「この記事が本当に伝えたいことは何だろう?」と10秒だけ考えてみる。
習慣2:「なんでだろう?」と考える(原因深掘りの習慣)
これは、物事の表面的な事象に惑わされず、その裏にある根本原因を探る力を鍛えるトレーニングです。 日常生活で起きる、あらゆる「出来事」に対して、ただ受け流すのではなく、「なんでだろう?」という素朴な疑問を持つ癖をつけましょう。
例えば、「近所のパン屋さんが、最近いつも行列している」という事実に気づいたとします。 そこで思考を止めず、
- 「なんで、急に行列ができるようになったんだろう?」 → (仮説)新しい看板商品が出たのかもしれない。
- 「なんで、その商品はそんなに人気なんだろう?」 → (仮説)SNSで有名なインフルエンサーが紹介したのかもしれない。
- 「なんで、インフルエンサーは紹介したんだろう?」 → (仮説)店主のこだわりやストーリー性に共感したのかもしれない。
このように、「なぜ?」を繰り返すことで、思考はどんどん深まっていきます。これは、問題解決の際に、目先の症状(行列)ではなく、根本原因(人を惹きつけるストーリー性)にアプローチする能力に直結します。この「因果関係を遡る力」こそが、論理的思考の中核をなすのです。
【今日からできる実践アクション】
- 仕事で小さなミスが起きた時、「次から気をつけよう」で終わらせず、「そもそも、なぜこのミスが起きる構造になっているんだろう?」と考えてみる。
- 電車が遅延した時、「ついてないな」で終わらせず、「遅延の公式発表の裏には、どんなトラブルがあったんだろう?」と想像してみる。
習慣3:「もし、逆の立場だったら?」と考える(多角的視点の習慣)
これは、自分の思い込みや偏見(バイアス)から自由になり、より客観的で精度の高い結論を導くためのトレーニングです。 何か自分の意見や考えが固まった時、あえて自分自身に反論し、「もし、自分が全く逆の立場だったら、どんな主張をするだろうか?」と考えてみるのです。
例えば、あなたが「我が社は、リモートワークを完全に廃止し、全員出社にすべきだ」と考えたとします。 そこで一度立ち止まり、リモートワークを続けたい社員の立場になりきって、全力で反論を考えてみるのです。 「通勤時間がなくなることで、プライベートが充実し、仕事の生産性が上がっている社員もいるはずだ」 「遠隔地に住む優秀な人材を採用できる機会を失うのではないか?」 「オフィスコストの削減というメリットを、本当に捨ててしまっていいのか?」
このように、意図的に複数の視点を持つことで、自分の考えの「穴」や「弱点」が見えてきます。物事を一方的にではなく、立体的に捉える力は、対立意見を乗り越えて合意形成をしたり、誰もが納得する解決策を生み出したりするために不可欠な能力です。
【今日からできる実践アクション】
- 何か商品を買おうか迷った時、「買うべき理由」だけでなく、「絶対に買うべきでない理由」を3つ書き出してみる。
- 上司に何かを提案する前に、「もし自分が上司だったら、この提案のどこに懸念を持つだろうか?」と考えて、先回りして資料に回答を盛り込んでおく。
まとめ:思考は「イベント」ではなく、日々の「習慣」である
今回は、論理的思考力を鍛えるための、たった3つのシンプルな習慣について解説しました。
- 「で、要するに?」と自分に問いかける(要約・抽象化の習慣)
- 「なんでだろう?」と考える(原因深掘りの習慣)
- 「もし、逆の立場だったら?」と考える(多角的視点の習慣)
気づいたでしょうか。これらの習慣は、実はMECEやロジックツリーといった「高度なフレームワーク」の根っこにある、本質的な思考プロセスそのものなのです。 この3つのシンプルな習慣を続けることで、あなたは知らず知らずのうちに、論理的思考のOSをインストールしていることになります。
論理的思考力は、特別なセミナーや合宿で身につける「イベント」ではありません。日々の生活の中で、少しだけ意識を変えることで育まれていく「習慣」です。 まずは、完璧を目指さなくて大丈夫。今日、この記事を読んだ後、何か一つでいいので試してみてください。 その小さな一歩が、あなたの思考を、そして未来を、大きく変えるきっかけになるはずです。
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