失注案件が「宝の山」に。MAツール導入で営業効率を150%向上させた舞台裏

この記事は約9分で読めます。

【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 営業リソースが足りず、常に新規顧客の開拓に追われている方
  • 「失注リスト」がExcelファイルに眠ったまま放置されている経営者さま
  • 見込み客の育成(ナーチャリング)の重要性は分かるが、何から手をつければいいか分からない担当者さま
  • MAツールに興味はあるが、「自社で使いこなせるだろうか…」と導入をためらっている方
  • 属人的な営業スタイルから脱却し、データに基づいた「仕組み」で売上を伸ばしたい方

「一度、断られてしまったお客様は、もう追いかけない」。あなたの会社では、これが当たり前になっていませんか?競合に負けてしまった案件、タイミングが合わずに見送りになった商談…。こうした「失注案件」のリストは、共有フォルダの奥深くに眠ったまま、二度と開かれることはないかもしれません。しかし、もしその“ゴミ箱行き”だったはずのリストが、新たな受注を生み出す「宝の山」に変わるとしたら…? 今回ご紹介するのは、クラウド型の勤怠管理システムを提供するA社。かつては疲弊する営業現場と、増え続ける失注リストに頭を抱えていました。そんなA社が「MA(マーケティングオートメーション)」という仕組みを導入したことで、失注案件を次々と掘り起こし、営業効率を150%も向上させることに成功したのです。この記事では、その具体的な舞台裏を、誰にでも分かりやすくご紹介します。

その「失注リスト」、ゴミ箱に入れるのはまだ早いかもしれません

BtoBのビジネスにおいて、「失注」は避けて通れません。しかし、その失注の理由を深く考えたことはありますか?

ある調査によると、BtoBにおける失注理由の実に7割以上が、「導入時期が合わなかった」「予算が確保できなかった」といった、いわゆる「タイミング要因」だと言われています。つまり、あなたの会社の製品やサービスそのものが否定されたわけではないケースが、ほとんどなのです。

考えてみてください。半年前は「まだ早い」と言っていたお客様が、新年度の予算が確保できた今、改めて情報収集を始めているかもしれません。当時はフィットしなかったお客様も、事業の成長に伴って、あなたの会社のサービスがまさに必要になっているかもしれません。

それなのに、一度失注したというだけで、こうした見込み客との関係を断ち切ってしまうのは、まるで一度だけ畑を耕して、あとは放置しているようなもの。非常にもったいない機会損失だとは思いませんか?

「とにかくアポを取れ!」疲弊する営業現場と、山積みの失注リスト

ここで、今回の主役であるA社の以前の状況についてお話ししましょう。彼らが提供するのは、中小企業向けのクラウド型勤怠管理システム。市場には競合も多く、決して楽なビジネスではありませんでした。

当時のA社が抱えていたのは、多くの中小企業が共感できるであろう、根深い課題でした。

【MA導入前のA社の課題】

  • 精神論が中心の営業スタイル: 営業会議でのマネージャーの口癖は「気合が足りない!」「とにかく新規のアポを増やせ!」。営業担当者は、毎日何十件ものテレアポや問い合わせフォームへのアプローチに追われ、心身ともに疲弊していました。
  • 「失注=ゴミ箱」という文化: 商談で「今回は見送ります」と言われた瞬間、そのお客様は営業担当者の記憶からも、会社の資産リストからも消えていました。失注情報はExcelファイルに一行記録されるだけで、その後活用されることは一切ありませんでした。
  • アポの質より量: 数をこなす営業スタイルのため、やっと取れたアポも「とりあえず話だけ聞いてみよう」という温度感の低いものが大半。結果、商談数は多くても成約率は低迷し、営業担当者の徒労感は増すばかりでした。
  • 分断されたマーケティングと営業: マーケティング担当は展示会で名刺を集めてリストを営業に渡すだけ。営業からは「こんな温度感の低いリストを渡されても…」と不満の声が上がり、部門間の連携は最悪の状態でした。

まさに、貴重な時間と労力をかけて接点を持った見込み客という「資産」を、ザルのように次々とこぼしてしまっている状態だったのです。

A社が導入したのはツールではない。「見込み客を育てる仕組み」だった

この負のスパイラルを断ち切るために、A社が下した決断が「MA(マーケティングオートメーション)ツールの導入」でした。

しかし、重要なのはここからです。彼らが導入したのは、単なる便利なITツールではありませんでした。「一度接点を持った見込み客との関係を絶やさず、最適なタイミングで営業にバトンを渡すための『仕組み』」そのものを構築したのです。

MAツールで何ができるのか、A社が活用した3つの主要な機能をご紹介します。

  1. 見込み客の行動を「見える化」する: MAツールを導入すると、誰が、いつ、自社のWebサイトのどのページを見たか、どのメールを開封して、どのリンクをクリックしたか、といったオンライン上の行動がすべて記録され、手に取るように分かります。
  2. 見込み度を「スコアリング」する: 見込み客の行動一つひとつに点数を設定できます。例えば、「料金ページを見たら+10点」「導入事例をダウンロードしたら+15点」というように、興味・関心が高まる行動を取るたびにスコアが加算されていきます。これにより、営業担当者の主観ではなく、客観的なデータで見込み度を判断できます。
  3. アプローチを「自動化」する: 「この資料をダウンロードした人には、3日後にこの内容のメールを送る」「半年間Webサイトへの訪問がない人には、最新の業界レポートを送る」といったシナリオをあらかじめ設定しておくことで、人の手を介さずに、一人ひとりに合わせた情報提供を自動で行うことができます。

これらの機能を使うことで、A社は「失注リスト」という忘れ去られた資産を、再び価値あるものに変える挑戦を始めました。

失注リストを蘇らせた、たった3つのステップ

では、A社は具体的に何を行ったのでしょうか?彼らが実践した、失注リストを「宝の山」に変えた3つのステップをご紹介します。

ステップ1:失注理由の徹底分析と「未来の顧客リスト」の作成

まず、営業担当者たちが「もう二度と見たくない」と思っていた過去数年分の失注リストをすべて掘り起こしました。そして、一件一件の失注理由をSFA(営業支援ツール)の記録や担当者の記憶を元に分析し、MAツール上でタグ付けしていきました。

  • 「タイミング見送り」タグ: 「今はまだ必要ない」「来期に検討する」といった理由
  • 「予算オーバー」タグ: 提示した価格が、お客様の予算と合わなかった
  • 「機能ミスマッチ」タグ: お客様が必要とする特定の機能がなかった
  • 「競合敗北」タグ: 具体的な競合他社の名前でタグ付け

この地道な作業によって、ただの失注リストは、「どんなアプローチをすれば、未来の顧客になり得るか」というヒントが詰まった戦略的なリストへと生まれ変わったのです。

ステップ2:「忘れられない存在」になるためのナーチャリングシナリオ設計

次に、仕分けしたリストに対し、「見込み客を育てる(ナーチャリング)」ためのシナリオを設計しました。重要なのは、売り込みではなく、お客様にとって有益な情報を提供し続け、「何かあった時に最初に思い出してもらえる存在」になることです。

(シナリオ例:『タイミング見送り』の顧客向け)

  1. 失注から1ヶ月後: 御礼メールと共に、「勤怠管理の最新トレンド」に関するお役立ちブログ記事を自動配信。
  2. 失注から3ヶ月後: 同じ業界の「導入事例インタビュー」を自動配信。
  3. 失注から6ヶ月後: Webセミナー「新年度の法改正に対応!今、勤怠管理を見直すべき理由」への招待メールを自動配信。
  4. 顧客がセミナーに申し込み、視聴: → スコアが急上昇!

このように、お客様の状況に合わせて、最適なコンテンツを、最適なタイミングで届け続ける仕組みをMAツールで構築しました。

ステップ3:スコアに基づいた「ベストタイミング」での再アプローチ

そして、最後の仕上げです。MAツールのスコアリング機能をフル活用しました。 Webサイトの料金ページを何度も見たり、導入事例をダウンロードしたり、セミナーに参加したりと、お客様の検討度が再び高まった行動が見られると、スコアが自動で加算されます。

そして、あらかじめ設定したスコア(例:100点)を超えた瞬間に、自動で営業担当者に「〇〇社の△△様が、再検討の可能性が高いです!」という通知が飛ぶように設定しました。

通知を受け取った営業担当者は、もう闇雲に電話をかける必要はありません。 「先日、法改正に関するセミナーにご参加いただきありがとうございました。その後、何かお困りの点はございませんか?」 このように、相手の行動に基づいた、自然で的確なトークからアプローチできるようになったのです。お客様からすれば、「ちょうど気になっていたところだ!」となり、話はスムーズに進みます。アポイントの質が劇的に変わった瞬間でした。

【驚きの結果】営業1人あたりの成約数が1.5倍に!A社に起きた変化

この「失注案件を蘇らせる仕組み」を本格稼働させてから1年後、A社の営業現場には驚くべき変化が起きていました。

指標Before (MA導入前)After (MA導入後)変化率
営業1人あたりの月間成約数平均 4件平均 6件150% 向上
全受注に占める失注リストからの比率0%20%受注の5件に1件が復活案件に
アポイントからの商談化率従来のテレアポ:5%MA経由のアラート:15%300% 向上
営業担当者の月間平均残業時間45時間25時間20時間 削減

最も大きな成果は、営業担当者1人あたりの成約数が1.5倍になったことです。これは、無駄なアプローチが減り、見込み度の高いお客様に集中できるようになった結果です。さらに、全受注の20%、つまり5件に1件が、かつては捨てられていたはずの失注リストから生まれるという、新たな収益の柱が確立されました。

営業担当者からは、「お客様の状況が分かった上で電話できるので、精神的にすごく楽になった」「無駄なアポが減り、提案の準備に時間をかけられるようになった」といったポジティブな声が上がるようになり、チーム全体の士気も大きく向上しました。

あなたの会社の「失注リスト」は、未来の優良顧客リストです

A社の事例は、特別な会社だからできたことではありません。彼らがやったことは、とてもシンプルです。

「一度接点を持ったお客様とのご縁を、大切に育てる仕組みを作った」

ただそれだけです。そして、その仕組みを支えたのがMAツールでした。 あなたの会社に眠っている失注リストも、見方を変えれば、一度はあなたの会社に興味を持ってくれた「未来の優良顧客リスト」に他なりません。

「MAツールなんて、難しくて使いこなせそうにない…」 「うちのような小さな会社には、まだ早いのでは?」

もし、あなたがそう思っているなら、それは少し前の考え方かもしれません。最近では、中小企業向けに、もっと手軽に、そして安価に始められるMAツールも数多く登場しています。

重要なのは、ツールを導入すること自体ではなく、「自社の営業課題を解決するために、どんな仕組みが必要か」を考えることです。 もし、あなたの会社が営業活動の非効率さに悩み、眠っている資産を本当の「宝の山」に変えたいと考えているなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。あなたの会社の状況に合わせて、最適な「見込み客を育てる仕組み」作りを、一緒に考えさせていただきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました