
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- SNSマーケティングに興味はあるが、予算や人手不足を理由に一歩を踏み出せない方
- 「BtoBの真面目な会社にSNSなんて効果がない」と思い込んでいる経営者さま、ご担当者さま
- とりあえずSNSアカウントは作ったものの、何を投稿すればいいか分からず、更新が止まってしまっている方
- Web広告の費用対効果に限界を感じ、新しい顧客接点を探している方
- 会社のブランディング強化や、採用活動にSNSを活かしたいと考えている方
「SNSマーケティング」。この言葉を聞くと、多くの中小企業の担当者さまは、「それは多額の広告費を使える大企業や、キラキラした商品を扱うBtoC企業の話でしょう?」と感じるかもしれません。「うちはニッチなBtoB企業だし、そもそもSNSを毎日更新するような人手もネタもない…」。そうした声が聞こえてきそうです。 しかし、本当にそうでしょうか?今回お話を伺ったのは、地方の小さな工具メーカーA社で、たった一人でSNS運用を任され、広告費をほとんど使わずに採用応募者を2倍に増やした広報担当のAさんです。社長からの突然の無茶振りをきっかけに、手探りで始めたSNS運用。その試行錯誤の道のりと、BtoB企業だからこそ響く「心を動かす」情報発信の秘訣を、リアルな言葉で語っていただきました。
社長の無茶振りから始まったSNS。当初は「BtoBで意味あるの?」と半信半疑でした
インタビュアー: 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、AさんがSNSの担当になった経緯を教えていただけますか?
Aさん: よろしくお願いします。経緯は、本当にシンプルで…ある日突然、社長に「Aさん、うちもSNSをやってみようか」と言われたのが始まりです(笑)。当時、私は総務と広報を兼務していて、SNSなんて個人のアカウントをたまに見るくらい。正直、「え、うちみたいな工具メーカーがSNSをやって、意味があるのかな?」と半信半疑でした。
インタビュアー: まさに、多くの中小企業の担当者さんが抱く疑問だと思います。社内の反応はいかがでしたか?
Aさん: それがもう、冷ややかでしたね(苦笑)。特にベテランの営業担当からは、「そんなチャラチャラしたことやって、暇なのか」「“いいね!”が1つ増えても、ドリルは1本も売れないぞ」なんて言われたりして。気持ちはすごく分かるんです。当時のA社は、地方の知名度のないメーカーで、新しい人材、特に若い技術者候補の採用にずっと苦戦していました。営業も昔ながらのルート営業が中心で、会社の魅力を外に発信するという文化そのものがなかったんです。だから、SNSと言われても、みんなピンとこなかったんだと思います。
インタビュアー: なるほど、社内からの理解を得るのも大変な中でのスタートだったのですね。
Aさん: はい。だからこそ、最初にちゃんと目的を決めなきゃいけない、と思いました。社長の「なんかやってみて」を鵜呑みにしていたら、絶対に途中で心が折れるな、と。
いきなり投稿はNG!私たちが最初に行った、たった一つの重要なこと
インタビュアー: 目的設定、ですか。具体的に、どのような目標を立てたのでしょうか?
Aさん: はい。まず、「SNSで直接製品を売ろうとしない」と決めました。BtoBの、しかも単価の高い工具をSNSの投稿一つで買ってもらうのは、現実的ではありません。そこで、私たちはSNSの目的を大きく2つに絞りました。
- 採用強化: 特に、未来の技術者である工業高校や高専の学生さんに、A社という会社の存在と、ものづくりの面白さを知ってもらうこと。
- ブランディング: 私たちの高い技術力や、真摯に働く社員たちの姿を発信して、A社の「ファン」を増やすこと。
この2つを達成できれば、結果的に会社の知名度が上がり、採用にも繋がるし、もしかしたら新しい取引にも繋がるかもしれない。そう考えたんです。
インタビュアー: 売上を直接の目標にしなかった、というのが興味深いですね。プラットフォームは、どうやって選んだのですか?
Aさん: 目的とターゲットから逆算して選びました。ターゲットは先ほどお話しした学生さんや、若手のエンジニアさんです。彼らにアプローチするには、まず視覚的に「すごい!」「かっこいい!」と思ってもらうのが早いだろうと考え、写真や動画に強い「Instagram」をメインに決めました。そして、業界のニュースや日々のちょっとした気づきをリアルタイムで発信し、他の企業さんとも交流するために、拡散力のある「X(旧Twitter)」をサブで使うことにしました。Facebookも検討しましたが、私たちのターゲット層とは少し違うかな、と判断しました。
広告費ほぼゼロ!“中の人”の顔が見える、私たちのコンテンツ制作術
インタビュアー: 目的とプラットフォームを決めて、いよいよ投稿開始ですね。最初からうまくいきましたか?
Aさん: いえいえ、とんでもない!最初の1ヶ月は、本当に悲惨でした(笑)。カタログに載っているような製品の綺麗な写真とスペック情報を、真面目に投稿していたんです。でも、全く反応がなくて。「いいね」が数件つく程度で、フォロワーも全然増えない。「やっぱり、BtoBのSNSなんて無理なんだ…」と、本気で諦めかけました。
インタビュアー: そこから、何が転機になったのでしょうか?
Aさん: ある日、思い切って投稿内容の舵を180度切ってみたんです。「製品(モノ)」ではなく、「それを作っている人」と「作っている過程(ワザ)」に焦点を当てることにしました。会社の本当の資産は、カタログに載っている製品スペックではなく、現場の職人さんたちの技術や想いにあるはずだ、と気づいたんです。
インタビュアー: 具体的には、どんな投稿をされたのですか?
Aさん: 例えば、Instagramではこんな投稿を始めました。
- 職人技の動画: 熟練の職人さんが、火花を散らしながら金属を削る様子をスローモーション動画で投稿しました。マニアックかなと思ったんですが、これが「かっこいい!」「ずっと見ていられる」と、予想外の反響を呼びました。
- 若手社員の一日: 入社2年目の若手社員に協力してもらって、彼の出社から退社までの一日をストーリーズで紹介しました。仕事風景だけでなく、お昼に何を食べているかとか、休憩中の雑談とか、リアルな姿を見せるようにしました。
- お役立ち情報: 「プロが教える!ドリル刃の正しい研ぎ方」といった、同業者やDIY好きの方にも役立つノウハウを発信しました。
X(旧Twitter)では、もう少しリアルタイムで人間味のある投稿を心がけました。「#町工場あるある」みたいなハッシュタグで同業者さんと繋がったり、お客様からいただいた感謝のメールを許可を得て紹介したり。
インタビュアー: とても面白そうですね!でも、一人でネタ探しから撮影、投稿まで行うのは大変だったのでは?
Aさん: 大変でした(笑)。でも、コツがあって。それは「一人でやろうとしないこと」です。最初は撮影に非協力的だった現場の職人さんたちも、私が「〇〇さんの、この削り方、神業ですよね!ぜひ学生さんたちに見せてあげたいんです!」としつこくお願いして(笑)、投稿への反応を見せているうちに、だんだん協力的になってくれました。今では、「Aさん、今日こんな面白い加工やったから撮りに来なよ!」と声をかけてくれるまでになりました。
「SNS見ました!」採用応募者が2倍に。数字で見る、会社に起きた嬉しい変化
インタビュアー: 素晴らしい変化ですね!そうした地道な活動の結果、会社にはどのような成果がありましたか?
Aさん: 数字で言うと、本当に驚くような変化がありました。特に、一番の目的だった採用面での効果が大きかったです。
指標 | Before (SNS開始前) | After (SNS開始1年後) |
採用応募者数(新卒) | 年間 15名 | 年間 32名 (2.1倍) |
WebサイトへのSNS経由流入 | 月間 50 PV程度 | 月間 3,000 PV (60倍) |
X(旧Twitter)のフォロワー数 | 0人 | 5,000人 |
Instagramのフォロワー数 | 0人 | 3,000人 |
「A社」での指名検索数 | 100 (基準値) | 180 (1.8倍) |
インタビュアー: 採用応募者が2倍以上!これはすごい成果ですね。
Aさん: はい。何より嬉しかったのが、応募者の質が変わったことです。会社説明会に来てくれる学生さんから、「Instagramの動画を見て、ものづくりってカッコいいと思いました」「Xで社員さんたちが楽しそうに働いているのを見て、この会社で働きたいと思いました」と言ってもらえるようになったんです。私たちの想いが、ちゃんと届いているんだな、と実感できた瞬間でした。
インタビュアー: 採用以外にも、何か嬉しい変化はありましたか?
Aさん: 副産物的な効果もたくさんありました。SNS経由でウェブサイトへのアクセスが急増し、会社の知名度が上がったことを示す「指名検索」の数も1.8倍になりました。それに、これまで接点のなかった他業種の企業さんから、「SNSを見て、A社の技術に興味を持ちました。こんな加工はできますか?」という、新規の技術相談が舞い込んでくるようにもなったんです。当初は目標にしていなかった「売上」にも、間接的に繋がり始めたのには驚きました。
完璧じゃなくていい。まずは“らしさ”を伝えることから始めませんか?
インタビュアー: 素晴らしいお話、ありがとうございます。最後に、これからSNSマーケティングを始めようと考えている、多くの中小企業の担当者さまにメッセージをお願いします。
Aさん: 私が言えるのは、「完璧を目指さなくていい」ということです。プロが作ったような綺麗な写真や動画じゃなくても、多少不器用でも、そこに“中の人”の想いや体温が感じられれば、必ず応援してくれるファンは現れます。特にBtoB企業は、キラキラしたコンテンツよりも、誠実さや専門性が伝わる手作り感のあるコンテンツの方が、かえって信頼されることもあります。
そして、いきなり売上を目標にしないでください。まずは、あなたの会社の「らしさ」とは何かを見つけ、それを伝えることから始めてみてください。それは、高い技術力かもしれないし、社員同士の仲の良さかもしれない。どんな会社にも、必ず発信するべき魅力があるはずです。一人で抱え込まず、ぜひ社内の仲間を巻き込んで、楽しみながら挑戦してみてほしいなと思います。
インタビュアー: Aさん、本日は本当に勇気の出るお話をありがとうございました。
A社の成功は、決して特別な事例ではありません。あなたの会社に眠っている「当たり前の日常」や「専門的なノウハウ」は、社外の人にとっては新鮮で価値のある情報かもしれません。 「でも、うちの会社の“らしさ”って、一体なんだろう?」 「どのSNSを使って、誰に、何を伝えればいいのか分からない…」
もし、あなたがそう感じているのなら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。私たちは、あなたの会社の中に眠る「発信するべき価値」を一緒に見つけ出し、限られた予算とリソースの中で最大限の成果を出すための、具体的なSNS戦略立案から運用までをサポートします。 まずは、あなたのアカウントの現状や、これから描きたい未来について、私たちに聞かせていただけませんか?
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