
【こんな方向け】
- これからM&Aを検討し、コンサルタント選びや費用感に不安を抱えている経営者・役員の方
- M&Aアドバイザーに支払う成功報酬や着手金の相場を具体的に知り、予算を立てたい担当者
- 自社でM&Aプロジェクトを回した経験があり、より合理的な報酬スキームを模索している企業法務・経営企画の方
今日は「M&Aコンサル料金の相場」と「成果報酬の考え方」について、どんなステップで進めて、どのような成果につなげたのかをケーススタディを交えてお話ししますね。
M&Aは一度の案件で数千万円~数億円規模の費用が動きますから、コンサルティング費用の組み立て方によってROIは大きく変わります。
費用が高すぎれば採算が合わないし、安すぎればアドバイザーのモチベーションが上がりません。適正な相場感とインセンティブ設計が重要なんです。
1.M&Aコンサル料金体系の基本構造
M&Aコンサルティング費用は大きく分けて以下の要素で構成されます。
- 着手金(リテイナー)
プロジェクト開始時に発生する固定報酬。
- 目的:調査・ターゲット候補リスト作成・初期ドキュメント準備などの着手コストをカバー
- 相場:数十万~数百万円(案件規模や期間に応じて変動)
- 目的:調査・ターゲット候補リスト作成・初期ドキュメント準備などの着手コストをカバー
- 月額顧問料
長期にわたるサポート契約の場合、一定の顧問料を月次で支払う形。
- 目的:継続的なM&A戦略会議や買い手候補との定期交渉を支援
- 相場:50万円~200万円/月
- 目的:継続的なM&A戦略会議や買い手候補との定期交渉を支援
- 成功報酬
Deal Closing(株式譲渡や合併完了)を基準に支払う変動報酬。
- 目的:アドバイザーに成果達成までコミットさせるためのインセンティブ
- 相場:譲渡金額の0.5%~5%程度
- 目的:アドバイザーに成果達成までコミットさせるためのインセンティブ
- 諸費用(実費精算)
出張交通費、情報調査費用、専門家(弁護士・会計士)へのフィーなど。
この組み合わせをどう最適化するかが「支払側」と「受注側」の交渉ポイントになります。
2.相場感:案件規模別の費用イメージ
実際にどれくらいの金額が動くのか、案件規模別にまとめると大まかに次のイメージです。
案件規模(企業価値) | 着手金 | 成功報酬率 | 月額顧問料(オプション) |
~5億円(小規模M&A) | 50万~150万円 | 3~5% | 50万~100万円/月 |
5~50億円(中規模M&A) | 100万~300万円 | 1.5~3% | 100万~150万円/月 |
50~200億円(大規模M&A) | 200万~500万円 | 0.5~1.5% | 150万~200万円/月 |
200億円超(大型M&A) | 500万~1,000万円以上 | 0.3~0.8% | 要相談 |
小規模M&Aでは着手金を抑え、成功報酬率をやや高めに設定するケースが多い- 中規模以上では着手金と月額顧問料でリテイナーを確保し、報酬率は低めに安定化
3.成果報酬の設計ポイント
3-1. 成功定義の明確化
「何をもって成功とみなすのか」を最初に契約で定義します。
- 例:株式譲渡契約締結日を基準、または資金決済日(買い手からの全額入金日)を基準
- 文言のずれで報酬トリガーを逃さないため、対象となる「クロージング条件」を正確に詰める
3-2. 優遇/ペナルティ条項
- ステップ報酬:LOI(基本合意)締結→最終契約締結の2段階で報酬を分割
- 逆成功報酬:買い手側からの条件変更でディールが破談した場合、一定額を返還
3-3. エスカレーション(超過報酬)
- 予定以上の高評価額で成立したときは超過分の一部をアドバイザーへ追加報酬
- 例:目標企業価値10億円で報酬率1.5%約1,500万円。実際に12億円で成立した場合、超過2億円の0.5%=100万円を追加
4.実際の進め方とフェーズごとの料金配分
フェーズ1:事前準備・ターゲット選定(着手金フェーズ)
- 経営戦略ヒアリング
- 業界・企業調査
- ターゲットリスト作成
→ この段階で着手金の50~70%を支払い
フェーズ2:アプローチ・初期交渉(月額顧問料フェーズ)
- ターゲット企業への初回挨拶・ND調整
- LOI(基本合意書)取得
- デューデリジェンス準備
→ 月額顧問料を支払いながら進行
フェーズ3:DD(デューデリジェンス)/最終契約(成功報酬フェーズ)
- 財務・法務DDの実施サポート
- 最終契約条件交渉
- クロージング
→ 成功報酬を一括(またはステップ分割)で支払い
5.ケーススタディ:中堅製造業のM&A成功事例
背景
- 売り手:従業員50名、売上12億円の精密部品メーカー
- 買い手:同業他社(上場企業)
- 目的:製品ライン拡充と販路シナジー獲得
プロジェクト概要
- 着手金:200万円(事前調査・アプローチ準備)
- 月額顧問料:100万円/月 × 4ヵ月(初期交渉~LOI取得)
- 成功報酬:譲渡金額15億円の1.2%=1,800万円
結果・効果
- ディール成立期間:着手からクロージングまで5ヵ月
- 会社評価額向上:買い手候補への交渉で評価額を13→15億円に引き上げ
- オーナー利益:報酬支払い後でも、手取り額は12.9億円(譲渡益の86%を確保)
- 次段階:買い手の海外販路を活用し、売上の20%増を計画中
この事例では、透明性ある報酬スキームとステップ報酬を組み合わせることで、売り手・買い手・アドバイザーの三者がWin-Winに動けたのが成功の要因です。
6.まとめと注意点
- 相場感を押さえる:自社規模・対象企業価値帯に合わせた報酬設計を行う
- インセンティブ整合性:アドバイザーの動機付けとリスク配分を適切に設定
- 成功定義の明確化:契約書に成功トリガーを具体的に落とし込む
- 段階払い・ステップ報酬:途中解散リスクを軽減しつつ、モチベーションを維持
M&Aは一発勝負になることも多いからこそ、費用設計と進行フローをしっかり設計することが重要です。
今回の解説が、皆さんのM&Aプロジェクト成功の一助になれば嬉しいです!
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