
【この記事はこんな方に向けて書いています】
✅ 毎月のクレジットカード明細に、よく分からないSaaSの支払いが増えてきて不安な経営者の方
✅ 社内で誰が・どのツールを・何のために使っているのか、全体像を把握できていない情報システム担当者の方
✅ 「このツール、本当にみんな使っているの?」と、ライセンス費用に無駄を感じている方
✅ 部署ごとにバラバラのツールを使っていて、連携が悪く非効率だと感じている方
✅ 退職した社員のアカウントが、野放しになっていないかセキュリティ面で心配な方
チャットツール、Web会議システム、プロジェクト管理ツール、クラウドストレージ…。今や、ビジネスにSaaS(Software as a Service)はなくてはならない存在です。手軽に契約でき、すぐに使い始められるSaaSは、中小企業の生産性を飛躍的に向上させる魔法の杖のように思えます。
しかし、その手軽さゆえに、あなたの会社では今、静かな“危機”が進行しているかもしれません。それは、管理されないまま無秩序にSaaSが増殖していく「SaaSの乱立」という問題です。ある調査では、企業が利用するSaaSのライセンスのうち、約30%が全く使われていないというデータもあります。便利だと思って導入したツールが、知らず知らずのうちに会社の利益を圧迫し、セキュリティリスクの温床になっているとしたら…。
この記事では、まさにその「SaaSの乱立」地獄に陥り、見えないITコストとセキュリティリスクに頭を抱えていた成長企業H社が、専門家による「SaaS最適化コンサルティング」を通じて、いかにして無駄なコストを炙り出し、ITガバナンスを強化したのか、その具体的なプロセスと成功のポイントを事例としてご紹介します。あなたの会社の“ITコストの穴”を塞ぐヒントが、ここにあります。
便利さの裏に潜む「SaaS貧乏」と「シャドーIT」の罠
「SaaSの乱立」は、なぜ起こるのでしょうか。その原因は、SaaSの最大のメリットである「手軽さ」そのものにあります。
各部署が、それぞれの判断で「これが便利そうだ」とクレジットカードで契約し、経費で落とす。この小さな利便性の追求が積み重なった結果、会社全体で見ると、とんでもないカオスが生まれているのです。
このカオスは、主に2つの深刻な問題を引き起こします。
1. SaaS貧乏:気づかぬうちに会社のキャッシュを溶かす“幽霊コスト” これは、管理されていないSaaSが引き起こす、じわじわと効いてくる毒のようなものです。
- 機能の重複: 部署Aはプロジェクト管理ツール「X」を、部署Bは「Y」を契約。会社全体で見れば、同じ目的のために二重にコストを支払っている。
- 過剰ライセンス: 「とりあえず10人分」で契約したものの、実際に使っているのは3人だけ。残りの7人分のライセンス費用は、完全に無駄になっている。
- 幽霊アカウント: 退職した社員のアカウントが削除されず、誰も使っていないのにお金だけ払い続けている。
これらの無駄なコストは、一つひとつは少額でも、年間で合計すると数十万、数百万円に膨れ上がっているケースも珍しくありません。
2. シャドーIT:会社の信用を揺るがすセキュリティの“ブラックホール” これは、会社の公式な許可なく、従業員が勝手に利用するITサービスのことです。例えば、会社が認めていない無料のファイル転送サービスに、顧客の機密情報をアップロードしてしまう、といった行為がこれにあたります。
- 情報漏洩のリスク: 誰が・どこに・どんな情報を保管しているか、会社が全く把握できない。退職者が、個人で契約したクラウドストレージに会社の重要データを保持したまま辞めてしまうリスクも。
- アカウント管理の不備: 退職者が出た際に、会社側がアカウントの存在自体を把握していないため、アクセス権を削除できず、情報漏洩の温床となる。
便利さの裏側で、あなたの会社は「SaaS貧乏」と「シャドーIT」という、2つの大きな罠に同時に陥っているかもしれないのです。
【事例】「一体いくら払っているんだ…」H社の見えないITコスト
H社は、クリエイティブな人材が集まる、急成長中の広告代理店です。自由な社風が特徴で、ツール選びも各チームの自主性に任されていました。
誰も把握できない“ITコストのブラックボックス”
ある日、経理を担当する役員のHさんは、会社の法人カードの利用明細を見て眉をひそめました。毎月、ズラリと並ぶ海外からの請求。そのほとんどが、月額数千円から数万円のSaaSの利用料でした。
「マーケティング部はAというCRM、営業部はBというCRMを使っているらしい…」 「デザイナーは、画像素材サイトXとYとZ、3つも契約しているのか…」 「この『Pro Tool』って、一体誰が何のために使っているんだ…?」
Hさんが社内でヒアリングをしても、誰も会社全体のSaaS利用状況を把握していません。部署ごとにバラバラのExcelで管理(あるいは、そもそも管理すらされていない)しているため、全体を合算することができないのです。Hさんは、ITコストが完全にブラックボックス化していることに、強い危機感を覚えました。
コストよりも怖い、セキュリティのリスク
さらにHさんを不安にさせたのは、セキュリティの問題でした。ここ1年で退職した社員が5名。彼らが在職中に個人で利用していたかもしれない、数々のSaaSのアカウントは、果たしてきちんと削除されているのだろうか?もし、顧客の機密情報が入ったアカウントに、今もアクセスできる状態だとしたら…?
コストの問題と、セキュリティの問題。この2つが複雑に絡み合った「SaaSの乱立」という難題を、日々の業務に追われながら自社だけで解決するのは不可能だ。そう判断したH社は、現状を客観的に診断し、解決策を提示してくれる外部の専門家を探し始めました。
乱立したSaaSを「見える化」し「最適化」する3ステップ
H社からの依頼を受け、私たちはまず、絡み合った糸を一本一本ほぐすように、現状を正確に把握することから始めました。
ステップ1:全SaaSの洗い出しと「見える化」 「誰が、何を、いくらで使っているのか」。この全体像を把握するため、私たちは複数のアプローチで徹底的な調査を行いました。
- データ分析: 経理データ、法人カードの利用明細、銀行の振込履歴を全て洗い出し、SaaSと思われる支払いをリストアップ。
- アンケート調査: 全従業員を対象に、「業務で利用しているSaaS(有料・無料問わず)」を申告してもらう。
- ヒアリング: 各部署のリーダーに、ツールの利用目的や必要性をヒアリング。
その結果、H社では、なんと42種類ものSaaSが利用されていることが判明。その多くを、経営陣やHさん自身が把握していませんでした。私たちは、その全てを一枚の「SaaS管理台帳」にまとめ、可視化しました。
SaaS名 | 管轄部署 | 年間費用 | ライセンス数 | 契約者 | 機能の重複 |
プロジェクト管理A | 営業部 | ¥480,000 | 15 | Aさん | ○ (管理B) |
プロジェクト管理B | 制作部 | ¥360,000 | 10 | Bさん | ○ (管理A) |
クラウドストレージX | 営業部 | ¥240,000 | 15 | Aさん | ○ (Y, Z) |
クラウドストレージY | 制作部 | ¥180,000 | 10 | Bさん | ○ (X, Z) |
デザインツールP | 制作部 | ¥600,000 | 5 (実利用2) | Cさん | 過剰ライセンス |
この一覧表を見たH社の経営陣は、「ここまでカオスな状態だったとは…」と、改めて問題の深刻さを認識しました。
ステップ2:利用実態の分析と「聖域なき見直し」 次に、リストアップしたSaaSが「本当に必要なのか」「適正に使われているのか」を分析しました。各ツールのログイン履歴や利用頻度データを調査し、部署ごとのヒアリングを重ねることで、無駄を徹底的に炙り出していきました。
- 利用率の低いツール: 高価なデザインツールPは、5ライセンス契約していたが、過去3ヶ月でログインがあったのはわずか2名だった。
- 機能が重複するツール: プロジェクト管理ツールAとBは、機能が8割方同じ。どちらか一つに統一可能と判断。
- 不要なツール: 過去のプロジェクトで一時的に使われ、誰も解約しないまま放置されていたツールが3つ見つかった。
ステップ3:全社最適化と「守りのルール」作り 分析結果に基づき、具体的な「処方箋」を作成し、実行を支援しました。
- 契約の最適化: 利用率の低いツールはライセンス数を削減。不要なツールは即時解約。重複ツールは、比較検討の上で一つに「全社標準ツール」として統一し、データ移行をサポート。
- ガバナンスルールの策定: 今後、同じ混乱が起きないように、シンプルなルールブックを作成。
- SaaSの新規契約は、必ず情報システム担当(Hさん)に申請する。
- 費用対効果やセキュリティリスクを、担当役員を含めて判断する。
- 契約は、全て会社名義・法人カードに統一する。
- 社員の入退社時には、必ずHさんがアカウントの発行・削除を行う。
これにより、H社は場当たり的なSaaS管理から脱却し、コストとセキュリティをコントロールできる体制を整えることができたのです。
コスト削減と業務効率化を一挙に実現
このSaaS最適化プロジェクトは、H社に驚くべき成果をもたらしました。
目に見える成果(定量的効果)
- 年間ITコストを28%削減: 不要・重複ツールの解約とライセンス数の適正化により、年間で約240万円ものコスト削減に成功。
- 管理工数の削減: 契約窓口がHさんに一本化されたことで、請求処理などの管理工数が月間約20時間削減された。
目に見えない大きな成果(定性的効果)
- セキュリティレベルの向上: 全SaaSを可視化し、入退社時のアカウント管理を徹底したことで、「シャドーIT」のリスクが大幅に低減。
- 部門間連携の円滑化: ツールを全社で統一したことで、部署をまたぐプロジェクトでの情報共有がスムーズになり、業務効率が向上。
- 戦略的なIT投資へ: 削減できたコストを原資に、本当に必要なデータ分析ツールなど、会社の成長に繋がる戦略的なIT投資を行う余裕が生まれた。
Hさんは言います。「私たちは、ただのコスト削減をしたかったわけではありません。会社の“血液”である情報を、安全かつ効率的に流すための“血管”を整備したかったのです。今、私たちは自信を持ってITをコントロールできていると感じます」。
あなたの会社に潜む「ムダ」を見つけ出すセルフチェックリスト
あなたの会社は、H社と同じような課題を抱えていないでしょうか?以下の5つの質問に、「はい」と即答できるか、ぜひチェックしてみてください。
✅ 会社の誰かが、有料で使っているSaaSを10分以内に全てリストアップできますか?
✅ そのSaaS一つひとつの契約者、費用、更新日を正確に把握していますか?
✅ 新しいSaaSを導入する際の、社内での明確な申請・承認プロセスがありますか?
✅ 部署ごと、あるいは個人ごとに、同じような目的のツールをバラバラに契約していませんか?
✅ 社員が退職した際、その人が使っていた全てのSaaSのアカウントを、漏れなく削除できていると断言できますか?
もし、一つでも「いいえ」や「たぶん…」という答えがあったなら、あなたの会社にも、見えないコストとリスクが潜んでいる可能性が高いと言えるでしょう。
「知らない」が一番のリスク。まずは「知る」ことから始めませんか?
SaaSの乱立問題で、最も怖いのは、その問題の存在に「気づいていない」ことです。気づかないうちにコストは垂れ流され、リスクは静かに膨張していきます。
この問題を解決するための第一歩は、非常にシンプルです。それは、自社の現状を「知る」こと。
「でも、どこから手をつければいいのか…」 「日々の業務に追われて、そんな調査をしている時間はない」
もし、あなたがそう感じているなら、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。私たちは、あなたの会社のSaaS利用状況を客観的に診断し、どこに無駄とリスクが潜んでいるのかを可視化する「SaaS棚卸しサービス」を提供しています。
いきなり大きな契約を結ぶ必要はありません。まずは、あなたの会社の現状をお聞かせいただき、どのようなステップで問題を解決していけるのか、その地図を一緒に描くことから始めさせてください。
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