【説明が下手な人のための処方箋】「で、結論は?」と言われるのは、論理的思考が9割の原因です

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 一生懸命に説明したのに、相手に「よく分からない」という顔をされてしまう方
  • 会議や報告の場で、話が長くなってしまい、結局何が言いたいのか伝わらないことが多い方
  • 上司や同僚から「結論から話して」と、話を遮られてしまう経験がある方
  • 自分の考えを、相手に分かりやすく、かつ説得力を持って伝えられるようになりたい方
  • 「説明がうまい人」と「下手な人」の決定的な違いを、論理的に理解したい方

良かれと思って、背景から丁寧に、詳しく説明した。それなのに、相手はキョトンとした顔。しまいには「ごめん、もう一度、結論から言ってくれる?」と話を遮られてしまった…。そんな悔しく、恥ずかしい経験はありませんか?

もし、あなたの説明が相手に伝わらないことが多いなら、その原因は、あなたの話すスキルや熱意の問題ではなく、話の「構造」、つまり論理的思考力の欠如にある可能性が極めて高いです。

結論から言います。分かりやすい説明とは、情報が整理され、話の道筋が明確な「設計図」のようなものです。 この設計図なしに、思いついたまま言葉を並べても、それは単なる言葉の羅列であり、相手の頭の中には届きません。

この記事では、なぜあなたの説明が伝わらないのか、その原因を3つの「論理の欠陥」から解き明かし、誰でも今日から「説明がうまい人」に変われる、万能のフレームワークを徹底解説します。


なぜ「分かりやすい説明」に論理が必要なのか?

そもそも、なぜ説明に「論理」が必要なのでしょうか。それは、人間の脳が一度に処理できる情報量には限界があるからです。 結論:論理的な構造は、相手の「脳の負担(認知負荷)」を劇的に減らし、理解を助けるための、聞き手に対する「思いやり」だからです。

心理学の世界では、人間が短期的に記憶・処理できる情報の数は「7±2(5〜9個)」程度であると言われています(ミラーの法則)。論理的でない説明は、この限られた脳のメモリ(ワーキングメモリ)に、整理されていない情報を無秩序に送り込み続けるようなものです。これでは、聞き手の脳はすぐにパンクしてしまい、「もう、よく分からない」とシャッターを下ろしてしまいます。

一方、論理的な説明は、話の全体像(結論)を先に示し、これからどんな順番で、どんな話をするのかという「地図」を相手に渡すようなものです。聞き手は、その地図を頼りに、安心して話の旅についてくることができるのです。つまり、論理とは、あなたの思考を整理するツールであると同時に、相手の理解を助けるための、最高のコミュニケーションツールなのです。


あなたの説明が伝わらない「3つの論理的な欠陥」

では、具体的に「伝わらない説明」には、どのような論理的な欠陥があるのでしょうか。多くの場合、以下の3つのタイプのいずれか、あるいは複数に当てはまります。自分がどのタイプに陥りがちか、診断してみてください。

▼説明が下手な人の「3つの論理欠陥」タイプ

欠陥タイプ症状(話し方の特徴)聞き手が感じること
① 結論の欠如タイプ・起きた出来事を、時系列で1から10まで話してしまう。
・話の着地点がどこなのか、最後まで分からない。
・「〜ということがありまして、それで、〜となりまして…」と話が続く。
「で、結局、何が言いたいの?」「話が長い…早く要点を言ってほしい」
② 根拠の欠如タイプ・「〜だと思います」「〜な気がします」といった、主観的な表現が多い。
・自分の意見や感想を、客観的な事実かのように話してしまう。
・「なぜそう言えるのか?」という裏付けがない。
「それって、あなたの感想ですよね?」「なんでそうなるの?データは?」
③ 繋がりの欠如タイプ・話があちこちに飛ぶ。話題がコロコロ変わる。
・Aの話をしていたはずが、いつの間にか全く関係のないZの話になっている。・接続詞(だから、なぜなら、一方で、など)の使い方がおかしい。
「話の筋道が見えない…」「頭の中、どうなってるの?」「一つ一つの話は分かるけど、全体として理解できない」

あなたに当てはまるものはありましたか?これらの欠陥はすべて、話す前に「何を」「なぜ」「どんな順番で」伝えるかという、論理的な設計図を描けていないことに起因します。


誰でも「説明がうまい人」になれる、万能フレームワーク「PREP法」

「自分は全部当てはまるかも…」と落ち込む必要はありません。これらの欠陥は、ある「型」を意識するだけで、劇的に改善することができます。 結論:ビジネスコミュニケーションにおける最強の論理の「型」、それが「PREP(プレップ)法」です。

PREP法とは、Point(結論)→ Reason(理由)→ Example(具体例)→ Point(結論)の頭文字を取った、説得力のある説明の基本構造です。この順番で話すだけで、あなたの説明は驚くほど分かりやすく、論理的になります。

▼PREP法の基本構造と具体例 お題:「この新しいノートPCは、買うべきでしょうか?」

要素英語役割具体例
Point結論話の要点・あなたの主張
まず、一番伝えたい「答え」を言う。
「はい、このAモデルのPCを、今すぐ買うべきです」
Reason理由なぜ、その結論に至ったのか結論の説得力を高める「根拠」を示す。「理由は大きく3つあります。性能、価格、そしてサポートのバランスが、現行モデルの中で最も優れているからです」
Example具体例理由を裏付ける客観的な事実・データ
聞き手がイメージしやすいように、具体的な情報を示す。
「性能面では、最新のM3チップを搭載しており、従来比で処理速度が1.5倍です。動画編集も快適に行えます。価格面でも、他社の同スペック品より平均で2万円安く設定されています。さらに、24時間365日対応の電話サポートが付いているのも、このモデルだけです」
Point結論(再)念押し・まとめ
最後に、改めて結論を述べて、話を締めくくる。
「以上の理由から、機能性とコストパフォーマンスを両立させたいなら、現時点でこのAモデルが最適な選択であると断言できます

どうでしょうか。この構造で話されると、聞き手はストレスなく、かつ納得感を持って内容を理解できることが分かるはずです。


PREP法を使いこなすための、今日からできる2つのトレーニング法

PREP法は、知っているだけでは意味がありません。無意識に使えるようになるまで、体に染み込ませるトレーニングが必要です。 結論:論理的思考力は才能ではなく、筋トレと同じで、日々の練習によって誰でも鍛えることができます。

トレーニング1:エレベーターピッチ・トレーニング

エレベーターに乗っているような短い時間(30秒〜1分)で、要点をまとめて話す練習です。

  1. スマホのメモ帳などに、お題を決めます。(例:「最近読んだ本」「好きな映画」「今担当している仕事」など、何でもOK)
  2. そのお題について、PREP法の構造に沿って、話す内容のキーワードを書き出します。(準備時間は1分)
  3. スマホのタイマーを1分にセットし、声に出して話してみます。

この練習を毎日1回繰り返すだけで、頭の中で瞬時に情報を構造化する「論理の瞬発力」が劇的に向上します。

トレーニング2:すべての「書く」をPREP法で実践する

いきなり話すのが難しければ、まずは「書く」ことから始めましょう。書く作業は、自分の思考を客観的に見つめ直し、論理構造を整える絶好の機会です。

  • 上司への報告メール
  • 同僚へのチャットでの依頼
  • 議事録のサマリー

これらのビジネス文書を、すべてPREP法の「結論→理由→具体例→結論」という構造を意識して書いてみてください。 例えば、ただの業務連絡メールも、 「【ご報告】A案件の件」(Point) 「本日、クライアントより正式に受注いたしました」(Reason) 「添付の通り、契約書を受領済みです」(Example) 「つきましては、キックオフの準備を進めます」(Point) のように構成する癖をつけるのです。

この地道な練習が、あなたの思考そのものを論理的に変えていきます。

「説明が下手」というのは、性格の問題ではありません。それは、単に論理という「技術」を知らず、練習してこなかっただけのこと。 今日ご紹介したPREP法という強力な武器を手に入れたあなたは、もう「伝わらない」と悩む必要はありません。 日々の小さなトレーニングを積み重ねて、あなたの素晴らしい知識や経験、そして熱意を、余すところなく相手に届けられる「説明の達人」を目指しましょう。

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