SaaS, PaaS, IaaSの違いとは?【ピザで解説】これを読めばもう一生忘れない!

この記事は約8分で読めます。

【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 「SaaS」「PaaS」「IaaS」という言葉を聞くたびに、思考がフリーズしてしまう方
  • IT業界に転職・就職したばかりで、基本用語をしっかり押さえておきたい方
  • クラウドサービスの違いを、部下や後輩にわかりやすく説明したいと思っている方
  • 似たようなアルファベット3文字の言葉に、正直うんざりしている方
  • 小難しいIT用語を、楽しく、そして二度と忘れないレベルで理解したい方

「我が社もSaaSを導入して業務効率化を…」「このシステムはPaaS基盤上で開発されており…」「インフラはIaaSに移行することでコスト削減を…」

ビジネスの現場で、当たり前のように飛び交う「SaaS (サース)」「PaaS (パース)」「IaaS (イアース)」という3つの言葉。あなたは、この違いを自信を持って説明できますか?

「全部クラウドの仲間でしょ?」 「as a Service って付くやつだよね?」

…とその先が続かず、なんとなく気まずい思いをした経験があるかもしれません。 大丈夫です。この3兄弟、見た目が似ていて本当に紛らわしいですよね。

しかし、ご安心ください。この記事を読めば、その長年のモヤモヤが一瞬で吹き飛びます。今回使うのは、小難しい技術解説書ではありません。使うのは、みんな大好きな「ピザ」です。

この「ピザ・アズ・ア・サービス」という究極の例え話を通じて、3つの違いをあなたの脳に直接焼き付けます。読み終わる頃には、あなたはもうこの紛らわしい兄弟に惑わされることはありません。さあ、美味しくてためになる、IT講座の開店です!


そもそも、全部「クラウド」の仲間たちです

本題に入る前に、大前提の確認です。SaaS、PaaS、IaaSは、すべて「クラウドコンピューティング」という大きな家族の一員です。

以前の記事で、クラウドを「超ハイテクなレンタル倉庫」と例えましたが、言い換えれば「インターネットを通じて、必要なITリソースを、必要な分だけ借りられるサービス」のことでしたね。

そして、SaaS・PaaS・IaaSは、その「借り方」のプランが違う、3種類のサービスモデルだと理解してください。 水道の蛇口をひねれば水が出て、使った分だけ支払うように、ITの力も「所有」する時代から「利用」する時代へと変わりました。その「利用」の仕方の違いが、この3兄弟というわけです。

では、いよいよピザの登場です!


究極の例え!「ピザ・アズ・ア・サービス」で違いを丸ごと理解しよう

この3兄弟の違いを理解する上で、まず基準となる考え方が必要です。 それが、すべてのITリソースを自社で管理・運用する「オンプレミス」という考え方です。

オンプレミス = 自宅でピザをイチから手作りする

これは、ピザを食べるために、小麦粉やトマト、チーズといった材料(データ・アプリケーション)を自分で買い、生地をこね、オーブンや調理器具(ハードウェア)を自前で用意し、ガスや電気(ネットワーク)も自分で契約して、キッチン(サーバー室)で調理する状態です。

すべてを自分でコントロールできる自由さがありますが、準備も調理も後片付けも、すべて自分の責任。オーブンが壊れたら、自分で修理しなければなりません。これが、従来のITシステムのあり方でした。

この「全部自分でやる」オンプレミスを基準に、クラウド3兄弟が「何をどこまで肩代わりしてくれるのか」を見ていきましょう。


IaaS (イアース) – 「オーブン付きのレンタルキッチン」プラン

IaaSは「Infrastructure as a Service」の略。 日本語では「サービスとしてのインフラ」と訳されます。

ピザの例え:オーブンや調理台が使える「レンタルキッチン」

これは、「ピザを作りたいけど、家に本格的なピザ窯がない…」という人が、調理場所と基本的な設備(キッチン、オーブン、水道、電気)だけを借りるイメージです。

ピザの材料(データ)やレシピ(アプリケーション)、どんなピザを作るか(OSの選択)は、すべてあなたが自由に決められます。キッチンのオーナーは、オーブンのメンテナンスや掃除はしてくれますが、あなたのピザ作りには一切口出ししません。

ITの世界では… クラウド事業者が、サーバー、ストレージ、ネットワークといったITインフラ(Infrastructure)だけを、インターネット越しに貸し出してくれるサービスです。

利用者は、その借りたインフラの上に、好きなOS(WindowsやLinuxなど)をインストールし、自由にシステム環境を構築し、アプリケーションを開発・運用します。最も自由度が高く、専門的な知識が求められるプランです。

  • 誰が使うの?:主に、企業のITインフラを管理するエンジニアや開発者。
  • 具体的なサービス例:Amazon Web Services (AWS) の「EC2」、Google Cloudの「Compute Engine」

PaaS (パース) – 「ピザ生地と具材は用意済み」プラン

PaaSは「Platform as a Service」の略。 日本語では「サービスとしてのプラットフォーム」と訳されます。

ピザの例え:「手作りピザキット」のデリバリー

これは、ピザ屋さんが、プロ品質のピザ生地、ソース、チーズ、具材といった、ピザを作るための土台(プラットフォーム)を、すべてセットにして自宅まで届けてくれるイメージです。

あなたは、オーブンの心配も、生地をこねる手間も必要ありません。ただ、届いた具材を自分の好きなようにトッピングして、レシピ通りに焼くだけ。どんなピザに仕上げるか、というクリエイティブな部分に集中できます。

ITの世界では… クラウド事業者が、インフラに加えて、アプリケーションを開発・実行するための環境(プラットフォーム)までを、すべて用意してくれるサービスです。

開発者は、サーバーの管理やOSのアップデートといった面倒な作業から解放され、アプリケーションのコードを書くという、本来の目的である「開発」そのものに集中できます。

  • 誰が使うの?:主に、Webサービスやアプリケーションを開発するエンジ-ニア。
  • 具体的なサービス例:Heroku、Google App Engine

SaaS (サース) – 「レストランでピザを注文」プラン

SaaSは「Software as a Service」の略。 日本語では「サービスとしてのソフトウェア」と訳されます。

ピザの例え:ピザレストランで、完成品のピザを注文する

これは、あなたがピザレストランに行き、メニューから好きなピザを注文するイメージです。 あなたは、キッチンやオーブンのこと、生地や具材のことなど、何も考える必要はありません。ただ席に座っていれば、プロが作った熱々の美味しいピザ(ソフトウェア)が運ばれてきて、あなたはそれを食べるだけです。

ITの世界では… クラウド事業者が、インフラからプラットフォーム、そしてアプリケーション(ソフトウェア)まで、すべて完成した状態で提供してくれるサービスです。

利用者は、パソコンやスマホにソフトをインストールする必要さえなく、インターネットブラウザからログインするだけで、すぐにその機能を利用できます。私たちにとって、最も身近なクラウドサービスです。

  • 誰が使うの?:企業の従業員から一般の消費者まで、すべての人
  • 具体的なサービス例:Gmail, Zoom, Microsoft 365, Salesforce, Dropbox

【図解】責任範囲が一目でわかる!SaaS・PaaS・IaaS比較表

さて、3つのプランの違いが見えてきたところで、それぞれの「責任範囲」を図で整理してみましょう。あなた(利用者)が管理する範囲、事業者(ベンダー)が管理してくれる範囲です。

ITリソースの階層オンプレミスIaaSPaaSSaaS
アプリケーションあなたあなたあなた事業者
データあなたあなたあなた事業者
ランタイムあなたあなた事業者事業者
ミドルウェアあなたあなた事業者事業者
OSあなたあなた事業者事業者
仮想化あなた事業者事業者事業者
サーバーあなた事業者事業者事業者
ストレージあなた事業者事業者事業者
ネットワークあなた事業者事業者事業者

この図を見れば一目瞭然ですね。 IaaS → PaaS → SaaSと進むにつれて、緑色の「事業者がやってくれる範囲」がどんどん広がり、青色の「あなたがやるべきこと」が減っていくのがわかります。 つまり、SaaSに近づくほど、利用者は楽になりますが、自由度は低くなります。逆にIaaSに近づくほど、利用者は大変になりますが、自由度は高くなる、というトレードオフの関係にあるのです。


どのピザを選ぶ?データで見るクラウド市場のトレンド

では、世の中では、どの「ピザ(クラウドプラン)」が一番人気なのでしょうか。

市場調査会社のシナジーリサーチグループによると、2024年第4四半期における企業向けクラウドインフラサービスの市場シェアでは、依然としてIaaSとPaaSが市場の大部分を占めており、その成長率は前年同期比で20%を超えています。 一方で、SaaSは最も成熟した市場であり、その市場規模はIaaSとPaaSを合わせたものよりも大きいとされています。

このデータから何がわかるかというと、 SaaSは、ZoomやMicrosoft 365のように、多くの企業が業務効率化のために「完成品のソフトウェア」として手軽に導入しており、市場として最も大きい。 一方で、IaaSPaaSは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える「土台」として、今まさに急成長している分野である、ということです。

企業は、目的に応じてこれらのプランを賢く使い分けているのです。


まとめ:あなたはどのピザ(クラウド)がお好み?

今回は、「SaaS」「PaaS」「IaaS」という紛らわしいクラウド3兄弟の違いを、「ピザ」という究極の例えで解説してきました。

  • IaaSは、「レンタルキッチン」。インフラだけ借りて、あとは自由に料理したいプロ向け。
  • PaaSは、「手作りピザキット」。開発環境は任せて、アプリ開発に集中したい人向け。
  • SaaSは、「レストラン」。難しいことは考えず、完成品をすぐに利用したいすべての人向け。

もうあなたは、この3つの言葉を前にして、戸惑うことはありません。それぞれの言葉が持つ意味、そしてその背景にある「何をどこまで任せるか」という本質的な違いを、完璧に理解できたはずです。

どのプランが一番優れている、というわけではありません。大切なのは、あなたの目的やスキルに合わせて、最適な「ピザの楽しみ方(クラウドの利用形態)」を選ぶことです。

この知識が、あなたのビジネスや学習において、確かな武器となることを願っています。


コメント

タイトルとURLをコピーしました