【SESとは?】IT未経験者が知らないと”搾取”される!?悪魔の契約の正体と天国への活用術

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • IT業界に興味があるけど、何から始めたらいいかわからない方
  • 求人サイトでよく見る「SES」って一体何なのか、いまいちピンときていない方
  • 「SESはやめとけ」という噂を聞いて、不安になっている方
  • 未経験からITエンジニアに転職して、後悔したくない方
  • IT業界のリアルな働き方や構造を知りたい方

IT業界への転職を考えたとき、必ずと言っていいほど目にする「SES」という言葉。「未経験者歓迎!」の求人が多く、IT業界への入り口として魅力的に見える反面、「やめとけ」「闇が深い」なんて不穏なウワサも聞こえてきますよね。

「一体どっちが本当なの?」 「派遣と何が違うの?」 「自分も”ハズレ”を引いたらどうしよう…」

そんな不安で、はじめの一歩を踏み出せないでいませんか?

大丈夫です。この記事を読めば、そんなモヤモヤはすべて吹き飛びます。

この記事では、元ITエンジニアの私が、IT未経験者の方に向けてSESの仕組みから、ウワサの真相、そしてSESを天国への切符に変えるための具体的な方法まで、どこよりも分かりやすく、正直にお話しします。

読み終える頃には、あなたはSESの本当の姿を理解し、自信を持ってIT業界へのキャリアをスタートできるようになっているはずです。


そもそもSESって何?3分でわかる基本の「キ」

まず、専門用語は一旦ポイっと捨てちゃいましょう。

SES(システムエンジニアリングサービス)をものすごくシンプルに言うと、「ITエンジニアの出張サービス」みたいなものです。

あなたがハンバーガーショップの店員さんだと想像してみてください。 ある日、店長から「隣の系列店が人手不足だから、1ヶ月だけ手伝いに行ってくれない?」と頼まれました。あなたは、お給料をいつものお店からもらいながら、隣のお店で働きます。

これがSESの働き方にそっくりなんです。

登場人物は3人です。

  1. あなた(エンジニア)
  2. あなたの所属会社(SES企業)
  3. 働く場所(客先企業)

あなたがお給料をもらうのは、ハンバーガーの例と同じで、自分が所属しているSES企業からです。でも、実際に仕事をする場所は、人手を借りたい客先企業のオフィスになります。

この働き方のベースになっているのが「準委任契約」という契約です。 これも難しく考える必要はありません。「エンジニアの労働時間に対してお金を払いますよ」という契約のことです。

「アプリを完成させたら100万円」という成果物に対してお金が支払われる契約(請負契約)とは違い、SESは「月160時間働いてくれたら〇〇万円」という形で、あなたの「時間」が商品になっている、とイメージすると分かりやすいですよ。


【衝撃の事実】SESと「派遣」は似ているようで全くの別物!

「え、それって結局、派遣と同じじゃないの?」

そう思ったあなた、鋭いですね!確かに働き方はそっくりです。でも、法律上は全くの別物で、ここを理解していないと、もしかしたら違法な状態で働かされることになるかもしれません。

最大の違いは、仕事の指示を誰が出すか(指揮命令権)です。

[表:SESと派遣の明確な違い]

項目SES (準委任契約)派遣 (労働者派遣契約)
指示を出す人所属会社の上司客先企業の上司
契約相手企業 対 企業企業 対 企業
働く人SES企業の正社員派遣会社の登録スタッフ

Google スプレッドシートにエクスポート

表を見てもらうと分かる通り、SESの場合、仕事の指示(「この機能、こうやって作ってください」みたいな業務命令)を出せるのは、あなたの所属会社(SES企業)の上司だけなんです。客先企業の人があなたに直接指示を出すことは、原則として法律違反(偽装請負)になる可能性があります。

「でも、実際は客先の人から指示されるでしょ?」

はい、その通りです。現場では、客先企業の担当者から直接指示を受けることがほとんどで、このルールが曖昧になっていることが多いのが実情です。

ただ、この「指揮命令権は自社にある」という建前が、後で説明するSESのメリット・デメリットに大きく関わってくるので、「SESと派遣は、指示を出す人が違うんだな」という点だけ、頭の片隅に置いておいてください。


なぜSESは「やめとけ」と言われるの?3つの闇とリアルな実態

さて、ここからが本題です。なぜ、ネット上では「SESはやめとけ」という声がこれほどまでに多いのでしょうか?それには、IT業界の構造的な問題が深く関わっています。

闇1:給料が上がりにくい「多重下請け構造」

IT業界は、よくピラミッドに例えられます。

大手IT企業(元請け)が大きな仕事を受注し、その一部を2次請け、3次請け…と下層の企業に再発注していく構造です。これを多重下請け構造と呼びます。

そして、多くのSES企業は、このピラミッドの中層から下層に位置しています。

ここで何が起こるか。それは「中抜き」です。

例えば、元請け企業があなたを「月100万円」で客先に送り出したとします。 しかし、間に2次請け、3次請けの会社が入ると…

  • 元請け(100万円)→ 2次請け(マージン20%抜いて80万円で発注)→ 3次請け(あなたの所属会社)(マージン20%抜いて64万円で発注)

あなたの所属会社に入ってくるお金は64万円に減ってしまいました。 そして、会社はさらに自社の利益や経費(営業マンの給料など)をマージンとして抜きます。これを還元率といい、SES業界の平均は50%〜60%と言われています。

仮に還元率が60%だとすると、あなたの手元に来る給料の元となる金額は…

64万円 × 60% = 38.4万円

となり、社会保険料などが引かれると、手取りはさらに少なくなります。 元々は「100万円」の価値があったはずなのに、商流が深くなる(下請けになる)ほど、エンジニアの給料は上がりにくくなるのです。これが「SESは給料が安い」と言われる最大の理由です。

闇2:キャリアが詰む「案件ガチャ」

SESで働くということは、どの客先に行くか(どの案件にアサインされるか)を自分で選べないケースがほとんどです。これを、エンジニアたちは「案件ガチャ」と呼んでいます。

運が良ければ、最新技術を使っている開発現場でスキルアップできる「当たり」案件を引けます。 しかし、運が悪ければ…

  • 誰でもできるテストやデータ入力ばかりで、全くスキルが身につかない
  • 時代遅れの古い技術(レガシーシステム)の保守・運用を延々とやらされる
  • ITとは名ばかりの、ヘルプデスクやコールセンター業務に回される

といった「ハズレ」案件を引いてしまう可能性があります。 一度ハズレ案件に入ってしまうと、契約期間が終わるまで(短いと3ヶ月、長いと1年以上)抜け出すのは困難です。貴重な20代の数年間を、キャリアに繋がらない業務で「塩漬け」にされてしまうリスクがあるのです。

闇3:帰属意識が持てない「孤独感」

SESエンジニアは、基本的に客先企業に常駐して働きます。そのため、自社のオフィスに行くのは月に一度の帰社日くらい、というケースも少なくありません。

そうなると、

  • 自社の同僚と顔を合わせる機会がなく、誰とも雑談できない
  • 困ったことがあっても、すぐに相談できる先輩や上司が近くにいない
  • 客先では「外部の人間」として扱われ、輪に入りづらい

といった状況に陥りがちです。 チームで一体感を持って働きたい人や、仲間とのコミュニケーションを大切にしたい人にとっては、この孤独感が精神的に辛くなってしまうことがあります。


でも、ちょっと待って!SESは未経験者にとって最高の「踏み台」になる!?

ここまで聞くと、「やっぱりSESはダメだ…」と思ってしまいますよね。 でも、それはSESという働き方の一面しか見ていません

実は、SESはIT未経験者にとって、これ以上ないほどのメリットも持っているんです。見方を変えれば、理想のキャリアを築くための最高の「踏み台」になり得るのです。

メリット1:業界への圧倒的な「入りやすさ」

まず、何と言っても採用のハードルが低いこと。 大手求人サイトで「ITエンジニア 未経験」と検索してみてください。驚くほど多くの求人がヒットするはずですが、その多くがSES企業です。

なぜなら、SES企業は「エンジニアの数」がそのまま会社の売上に直結するビジネスモデルだからです。そのため、育成を前提として未経験者を積極的に採用している会社がたくさんあります。

自社でサービスを開発しているWeb系企業などは、即戦力を求める傾向が強く、未経験者がいきなり入社するのは非常に困難です。IT業界への「最初の扉」として、SESは最も門戸が広い選択肢なのです。

メリット2:色々な現場を経験して「自分の適性」が見つかる

「案件ガチャ」はデメリットばかりではありません。 考え方を変えれば、様々な業界、企業文化、技術に触れるチャンスがあるということです。

  • 金融系のカッチリした大規模開発
  • Webサービス系のスピード感あふれるアジャイル開発
  • インフラ構築の縁の下の力持ち的な仕事

など、色々な現場を経験する中で、「自分はこういう仕事が好きだな」「この技術をもっと極めたいな」という自分の適性が見えてきます。

最初から一つの会社に絞ってしまうと、その会社のやり方しか知ることができません。SESで多様な経験を積むことは、将来のキャリアを考える上で、強力なコンパスになってくれるはずです。

メリット3:実務経験を積みながら「給料がもらえる」

プログラミングを学ぼうとすると、数十万円かかるプログラミングスクールに通う、という選択肢もあります。しかし、スクールを卒業しても「実務経験」がないため、就職活動で苦労するケースは少なくありません。

一方でSES企業に入社すれば、研修で基礎を学びつつ、お給料をもらいながら「実務経験」を積むことができます。これは、未経験者にとって最大のメリットと言っても過言ではないでしょう。

どんなに簡単な仕事でも「1年間、〇〇というプロジェクトで実務を経験しました」という経歴は、次のステップに進むための強力な武器になります。


【悪質SESの見分け方】後悔しないための会社選びチェックリスト5選

「なるほど、SESも悪くないかも。でも、やっぱり”ハズレ”の会社は引きたくない…」

その通りです。SESを活用してキャリアアップするには、最初の会社選びが9割と言っても過言ではありません。エンジニアを大切に育ててくれる優良企業もあれば、利益のことしか考えていない悪質な企業も残念ながら存在します。

ここでは、後悔しないための具体的なチェックリストを5つご紹介します。

□ 1.自社サービスや受託開発も行っているか? SES事業だけでなく、自社でサービスを開発したり、顧客からシステム開発を直接請け負ったりしている会社は、技術力が高い傾向にあります。いざという時に、客先常駐以外の働き方の選択肢があるのも魅力です。

□ 2.給与の「還元率」を公開しているか? エンジニアへの還元率を明確に公開している会社は、透明性が高く、社員を大切にしている可能性が高いです。面接などで「還元率はどのくらいですか?」と質問した際に、濁さずに答えてくれるかどうかも一つの指標になります。一般的に60%以上が一つの目安とされています。

□ 3.営業担当者があなたのキャリアに親身か? 面談の際に、あなたの希望や将来のキャリアプランを丁寧にヒアリングし、それに沿った案件を提案しようとしてくれる営業担当者がいる会社を選びましょう。「とにかくどこでもいいから入ってくれ」という態度の会社は要注意です。

□ 4.待機期間中の給与保証はあるか? 案件と案件の間に「待機期間」が発生することがあります。その期間中も給与が100%保証されるかどうかは、必ず確認しましょう。業績が悪い会社だと、待機期間中は給与が減額されるケースもあります。

□ 5.口コミサイトでの評判が悪すぎないか? 「OpenWork」や「Lighthouse(旧カイシャの評判)」といった社員の口コミサイトも参考にしましょう。ネガティブな口コミが全くない会社は稀ですが、あまりにも同じような不満(給与が低い、営業が動いてくれない等)が並んでいる場合は、避けた方が無難かもしれません。


まとめ:SESは「毒」にも「薬」にもなる。あなたのキャリア戦略がすべて

いかがでしたか? SESは、ネットで言われるような「絶対的な悪」ではありません。 しかし、何も考えずに飛び込んでしまうと、キャリアを停滞させてしまう「毒」にもなり得ます。

重要なのは、SESを「目的」ではなく、理想のキャリアを実現するための「手段」として捉えることです。

  1. まずはSES企業に入社して、給料をもらいながらIT業界での実務経験を1〜2年積む
  2. その経験を武器に、より条件の良い会社(事業会社や元請けSIerなど)へ転職する。

このキャリア戦略を明確に持っていれば、SESはあなたにとって最高の「薬」となり、ITエンジニアとしての輝かしいキャリアの第一歩を力強く後押ししてくれるはずです。

この記事が、あなたの不安を解消し、新たな一歩を踏み出すきっかけになれば、これ以上嬉しいことはありません。応援しています!

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