
【こんな方に向けたお話です】
SEとしてキャリアをスタートしたいけど、SES(システムエンジニアリングサービス)って実際どうなのか知りたい新卒者向けです。
SES企業への就職を検討しているが、メリットとデメリットを具体的に知りたい方に役立ちます。
IT業界未経験でもSESを選ぶか否か迷っている方に、リアルな情報を提供します。
【SESとは】
そもそもSESとは、システムエンジニアリングサービスの略で、IT企業が自社のエンジニアをクライアント先のプロジェクトに派遣して業務を支援する仕組みです。新卒でSESを選ぶということは、自社内で一から教育するというよりも、現場常駐型でプロジェクト経験を積むスタイルを意味します。SESは最近になって賛否両論ありますが、実際に僕自身も最初は右も左もわからずに現場へ飛び込んだ経験があります。そこで感じたメリットもあれば当然デメリットもあり、ここではリアルな視点で解説していきます。
【メリットその1:実践的な開発経験を積める】
まず最大のメリットは、実践的な開発経験を早い段階で積めることです。大学でプログラミングを学んだ程度では、実務レベルの開発フローやチームでの開発手法、コミュニケーションの重要性はなかなかわからないものです。SESであれば、入社直後から現場に配属され、先輩エンジニアの指導のもとで実際のシステム開発に携わることができます。新卒3か月でリリース作業を経験した僕は、座学だけでは得られなかった技術と現場感覚を一気に身に付けました。具体的には、Gitを使ったバージョン管理、課題管理ツールでタスクを切る手順、さらには定例会議での発言の仕方など、教科書に書かれていないノウハウを実地で学べたのは非常に価値がありました。ここで得た経験は、その後のキャリアにおいても大きなアドバンテージになります。
【メリットその2:最新技術や業界トレンドに触れられる】
SESでは、さまざまなクライアントのプロジェクトで働く機会があるため、最新の技術や業界トレンドを早期にキャッチアップできます。例えば、クラウド移行案件やAIを活用した開発など、常に新しい技術を取り入れるプロジェクトに参加するチャンスがあります。僕はAWSの導入プロジェクトに配属されたとき、ただクラウドの概念を学ぶのではなく、Terraformを使ったインフラ構築やCI/CDパイプラインの自動化、IAMポリシーの設定など、実戦レベルの知識を短期間で身につけることができました。転職経験者よりも先にクラウドスキルを身につけたことで、社内の評価はもちろん転職市場でも大いに役立ちました。技術力を早く伸ばしたいなら、SESは手っ取り早い選択肢です。ただし、その分自分で勉強する意欲も必要になる点は忘れないでください。
【メリットその3:多様な業界知識が身につく】
SESは金融、製造、小売、医療など、幅広い業界のクライアントと関わることができます。業界に特化したエンジニアリングを学ぶことで、自分自身の専門性を見極めることができるのも大きなメリットです。例えばあるときは金融システムのバッチ開発を経験し、別のときは製造業向けIoTプラットフォームの構築に携わるなど、多様な業界知識を短期間で手に入れられます。さらに、医療系のプロジェクトではセキュリティ要件が非常に厳しく、コンプライアンス意識を徹底的に学ぶ機会にも恵まれました。新卒1年目で自分の適性や興味を見極めるには絶好のフィールドです。将来のキャリア選択の幅を広げたい人には大きなメリットといえます。
【メリットその4:人脈が広がる】
SESで現場を転々とすると、さまざまなクライアント企業のエンジニアやプロジェクトマネージャーと出会う機会が増えます。人脈が広がることで、将来的に転職活動をする際のネットワークにもつながりますし、プロジェクトで困ったときに相談できる仲間や先輩ができるのは大きなメリットです。僕もSES時代に出会った先輩エンジニアから誘われて勉強会に参加し、そこで得た情報をもとに自分のキャリアプランを見直すきっかけをもらいました。その後もSNSでつながったエンジニアとスタートアップ立ち上げの相談をしたり、実際にフリーランスの案件紹介を受けたりと、人脈が広がる恩恵は計り知れません。
【メリットその5:仕事とプライベートの選択肢が広がる】
SESはプロジェクトによってはリモートワークが可能であったり、勤務時間がある程度柔軟であったりするケースがあります。特にリモート前提のプロジェクトでは、自宅で作業できる環境が整備されており、通勤時間をスキルアップ学習に充てることができます。プライベートを重視しつつ、技術力も磨きたいという新卒には嬉しいメリットです。僕はSESでリモート案件に入ったとき、通勤がなくなったぶん朝からプログラミング学習の時間を確保でき、2カ月でエンジニアとして格段に成長しました。ただし、リモート環境は孤独感とも背中合わせなので、自分でスケジュールをしっかり管理しないとサボり癖がつく危険性もあります。
【メリットその6:早期キャリアチェンジもしやすい】
SESを経験すると、複数の業界や技術に触れた結果、自分の得意分野や興味がより明確になります。例えば僕は最初Java案件ばかり担当していましたが、途中からフロントエンド開発にも興味を持つようになり、Reactを深掘りするチャンスを得ました。SESでは案件を自分で選びにくい一面もありますが、上司に「次はフロント案件が希望」と要望を伝えやすいポジションでもあります。早期にキャリアの方向性を修正したい場合、SESからのジョブチェンジは比較的スムーズです。経験の浅い新卒こそ、いろんな技術に触れるメリットを最大限に活用すべきだと思います。
【デメリットその1:プロジェクトの質がピンキリ】
SESのデメリットで一番厄介なのが、プロジェクトの質に大きなばらつきがあることです。優良案件に当たれば最先端技術に触れられますが、しょぼい案件に配属されると単純作業のテスト業務や保守運用を延々と任される危険性があります。新卒はまだ見極めが難しいため、SES企業に入社しても配属されるプロジェクトによって天国と地獄を味わいます。僕の同期も、はじめの3カ月はひたすらエクセルでテストケースを手動入力するだけの現場に配属され、「なんでSES選んだんだ…」と毎日後悔していました。プロジェクトが変われば担当業務も大きく変わるため、当たりプロジェクトに出会うまで辛抱が必要です。
【デメリットその2:スキルが偏りやすい】
SESでは「現場で必要なスキルのみを求められる」という環境になりがちです。たとえばJavaプロジェクトに配属されたらJavaばかりやらされ、インフラやフロントエンドの経験を積むチャンスが少なくなります。いわゆる「スキルの偏り」は数年後に他の業務領域にチャレンジするときに致命的です。僕は最初に入ったプロジェクトでC#のバッチ開発ばかりをやり続けたせいで、Web開発の知識がほとんど身につかず、後から苦労しました。その反省から、次の配属では必ず「フロントエンドやインフラも経験させてほしい」と要望し、経験幅を広げる努力をしました。SESを選ぶ場合は、「この企業はジョブローテーションがあるか」「複数案件を組み合わせて経験幅を広げられるか」を事前に確認しなければなりません。
【デメリットその3:キャリアプランが曖昧になりやすい】
SESでは次々とプロジェクトを渡り歩くため、一つの企業や部署に腰を据えてキャリアを積む機会が少ない場合があります。その結果、「自分は何者なのか」「将来どんなスペシャリストになりたいのか」が見えづらくなる危険性があります。特に新卒3年目くらいまでに明確なキャリアプランを立てていないと、30代を迎えたときに「転職市場で戦えるスキル」が何もないまま年齢だけが上がってしまいます。SESを選ぶなら、入社後すぐにキャリアプランを自分なりに描き、必要なスキルセットを明確にすることを強くおすすめします。僕は毎月キャリアノートを作り、半年ごとの目標を設定することで漠然とした不安を減らしました。
【デメリットその4:給与が抑えられる傾向】
SES企業はクライアントへの請求単価とエンジニアの給料の差分で利益を得ています。そのため同じスキルレベルでも、客先常駐型のSESでは自社サービス開発企業に比べて給与水準が低めになりがちです。新卒のときは「まずは経験だ」と割り切れても、数年働いた後に「給料が上がらない」「このままじゃ貯金も老後資金も足りない」と気づくことがあります。SESを選ぶ際には、入社時の給与だけでなく、昇給制度やボーナス、資格手当なども含めてトータルの待遇を確認しないと痛い目を見ます。僕もSES3年目で「あれ?他社に比べて給料が全然違うな…」と気づき、転職活動を始めた経験があります。給与だけでなく福利厚生や教育支援制度も合わせてチェックするのが賢明です。
【デメリットその5:帰属意識が薄まりやすい】
SESでは個々人が常駐先にいる期間が長く、自社オフィスで働く機会が少ないため、会社への帰属意識が薄れやすい傾向にあります。自社のエンジニアコミュニティや勉強会に参加する時間も限られ、会社しか見ていない同期と疎遠になることも少なくありません。自分の所属する組織がわからなくなると、モチベーション低下や孤独感につながります。特に新卒は社会人としての土台を築くために会社の文化や価値観を吸収する時期です。SESで常駐先中心の生活になると、「自分は本当にここに所属しているのか?」という気持ちに陥る危険があります。自社イベントやコミュニケーションの場を自ら探す努力が必要です。
【デメリットその6:クライアント依存リスク】
SESはクライアント先の案件がなくなると、自社で待機期間が発生するケースがあります。待機期間中は給料が保証されていても、スキルアップの機会が失われがちです。最悪の場合、次の案件がなかなか決まらず給与が減額されたり、最終的には解雇されるリスクもあります。クライアント依存の構造を理解しないままSESを選ぶと、会社の業績や顧客動向に振り回されてキャリアが一気に停滞する可能性があります。案件の安定性を、自分の目で確かめることが重要です。僕は待機時に独学でプログラミング学習を進めましたが、それでもメンタル的には辛かったです。
【SESが向いている人の特徴】
では、SESを選ぶべき人はどんな人かをまとめると、「まずは経験値を積みたい」「最新技術や業界知識を早く身につけたい」「人脈を広げたい」という意欲が強い人です。SESではコミュニケーション能力が求められるため、人と話すのが好きな人や、学ぶ意欲が人一倍ある人ほど成長しやすいです。逆に「給与を最優先」「一つの企業で腰を据えてキャリアを積みたい」という人にはあまり向いていません。自分の価値観やライフスタイルに合わせて、SESか自社開発かを判断しましょう。
【SESを選ぶときにチェックすべきポイント】
SESを選ぶ際には、
①案件の種類と平均稼働期間、
②研修やフォローアップ体制、
③昇給・昇格制度、
④社内コミュニケーションの仕組み、
⑤待機時の給与保証とサポート体制、
⑥希望案件に参画できる自由度、
⑦客先常駐後のキャリアパス、
⑧社内の雰囲気や価値観、
⑨上司や先輩の経験値、
⑩テックコミュニティへの参加支援の有無、
といった10項目を確認するべきです。求人票だけではわからない情報が多いので、説明会や面談の場で遠慮せずに質問し、企業文化が自分に合うかを見定めてください。
【成功するSES新人の心得】
SES新人として成功するには、まずはとにかく自己学習を続けることです。現場で教えてもらうだけでは限界があるので、休日や仕事終わりに自宅でオンライン教材や書籍で勉強を進めることが重要です。次に、問題が起きたらすぐに相談する姿勢を持つこと。SES現場はクライアント先の文化やルールがあり、独りよがりで突っ走るとトラブルになります。僕は初めてバグ対応で詰まったとき、現場の先輩エンジニアに夜遅くまで付き合ってもらい、その後の対応方法を学びました。最後に、キャリアプランを明確にし、半年から1年ごとに振り返りを行うこと。何も考えずに流されると、いつの間にか「自分は何のスキルが身についているんだろう…」と後悔します。目標を常に見える形で持ち、達成できていない部分を洗い出して改善する習慣が不可欠です。
【実際に直面したトラブル事例】
僕がSESで2年目のときに入ったプロジェクトでは、テストフェーズで致命的なデータ不整合が発覚し、大規模な仕様変更が発生しました。開発リソースは限られており、クライアントから「納期が絶対に遅れられない」と言われ、急遽設計からやり直しを命じられました。現場常駐のSESエンジニアとして、深夜までバグ修正に追われ、休日返上で調整作業を行いました。この経験から学んだのは、要件定義の段階でクライアント側と緻密に確認し、テスト計画や想定リスクを早期に共有しなければならないということです。SES現場では「認識齟齬」がトラブルの根本原因となることが多いので、入念な事前確認と継続的なコミュニケーションが不可欠です。
【SESからの転職成功のコツ】
SES経験を次のキャリアに活かすには、まず自分のSES期間中に担当した具体的なプロジェクト内容や成果を整理しましょう。例えば「某大手ECサイトの注文管理システム移行をリードし、運用コストを20%削減した」といった実績は、転職活動で強力な武器になります。また、SESではチームでのコミュニケーションや顧客折衝の経験を通じてビジネススキルも磨かれますが、転職先では「どのフェーズでどんな役割を果たしたのか」を定量的に示せるように準備してください。自己PRで曖昧に「お客様と話しました」ではなく、「週3回、PMとして顧客との要件調整を実施し、スムーズな開発進行を実現した」と具体的に伝えることが大切です。
【SES選択の最終判断ポイント】
最後に、新卒がSESを選ぶかどうかを最終判断するポイントは、「自分が何を最優先するか」を具体的に言語化できるかどうかです。テクノロジーに集中したいという気持ちが強いならSESは適していますが、プロダクト開発に深く関わりたいなら自社開発企業を選んだ方が近道です。また、早い段階でマネジメントに興味があるなら、SESよりも大手ITコンサルやSIerを検討した方がキャリアパスが見えやすい場合があります。友人や先輩の意見に流されず、自分の価値観やライフプランをしっかり考えたうえで選びましょう。将来のキャリアにとって、SESでの経験が宝になるか、ただの苦労話に終わるかは自分次第です。
【まとめ】
新卒でSESを選ぶあなたへ、最後に伝えたいのは「SESは道具に過ぎない」ということです。SESが向いているかどうかは人それぞれであり、SESそのものをゴールにしてはいけません。SESで得られる経験を自己投資と捉え、常に次のキャリアを見据えた行動を心がけてください。SESのメリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑える努力ができる人だけが、IT業界で生き抜く強さを身につけます。甘い幻想は捨てて、現実を直視しながら挑戦し続けましょう。
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