
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- コンサルから事業会社への転職(ポストコンサル)を考えている方
- 鳴り物入りで入社した元コンサルの同僚が、なぜか活躍できていないと感じている方
- コンサル出身者を採用しようとしている企業の人事・経営者
- コンサル業界のリアルなキャリアパスに興味がある方
戦略コンサル、ITコンサル…。華々しい経歴と高い年収を引っ提げ、事業会社に「鳴り物入り」で転職してくるエリートたち。彼らなら、きっと自社の課題をバッサバッサと解決し、会社を新たなステージに導いてくれる…。そんな風に、期待しますよね。
しかし、現実は甘くありません。入社して数ヶ月もすると、「あの人、口は動かすけど手は動かさない」「パワポは綺麗だけど、現場を全く分かっていない」と囁かれ、いつしか孤立。そして1年も経たずに、静かに会社を去っていく…。そんな“ポストコンサル”の失敗事例が、驚くほど多くの企業で繰り返されています。
この記事では、なぜ優秀なはずのコンサル出身者が事業会社でつまずいてしまうのか、その典型的な失敗パターンを3つに絞って、その背景とともに徹底解説します。これは、コンサル業界を目指す人、受け入れる企業、双方にとって他人事ではない、重要な教訓となるはずです。
失敗パターン1:評論家で終わる。「手を動かせない」病
コンサルタントの仕事は、例えるなら「名医」です。企業の課題を正確に「診断」し、最適な「処方箋(戦略)」を作成するのが主な役割。しかし、実際に薬を飲んだり、リハビリをしたりするのは、患者であるクライアント自身です。
この感覚が抜けきらないまま事業会社に転職すると、恐ろしい「評論家病」を発症します。「御社の課題は〇〇ですね」「この戦略を実行すべきです」と、客観的な分析や正論を提示するだけで、自ら手を動かして実行しようとしないのです。
しかし、事業会社で求められるのは、「正解を提示する人」ではありません。泥臭くても現場に下りていき、関係者を巻き込み、時には頭を下げながら、物事を前に進める「実行者」です。分析や提案だけで給料がもらえるのはコンサルまで。現場の社員からは「口だけの人」という最も不名誉なレッテルを貼られ、急速に信頼を失っていきます。
失敗パターン2:正論で人を殴る。「人間関係を築けない」病
コンサルティングファームは、ロジックとファクトが支配する世界です。「正しいこと」を、誰に対しても臆さず伝えることが評価されます。
しかし、その“正義の剣”をそのまま事業会社に持ち込むと、ただの人を傷つける凶器になります。「そのやり方は非効率なので、今すぐやめるべきです」「データ上、あなたの意見は間違っています」。そんな正論を振りかざし、古くからの慣習や、現場の人間関係をズタズタにしてしまうのです。
転職理由の上位に常に「人間関係」が入ることからも分かる通り、会社という組織は、ロジックだけでは動きません。そこには、部署間の力学や、社員一人ひとりの感情といった、非合理的な要素が渦巻いています。この「組織の体温」を理解せず、正論だけを武器に戦おうとする元コンサルは、やがて四面楚歌の状態に陥り、孤立していきます。
失敗パターン3:短期決戦に慣れすぎ。「花火師」で終わる病
コンサルティングのプロジェクトは、通常3ヶ月から半年程度の「短期決戦」です。その期間内に、圧倒的なアウトプットを出すことが求められます。
この働き方に慣れきった彼らは、事業会社でもすぐに目に見える成果を出そうと、派手で短期的な施策、いわば「大きな花火」を打ち上げたがります。
しかし、事業会社の仕事の多くは、日々の地道な改善や、お客様との長期的な信頼関係の構築といった、マラソンのようなものです。派手な花火を打ち上げた後は、途端にモチベーションを失い、日々の泥臭い運用や改善業務に耐えられなくなってしまう。あるいは、短期的な成果が出ないと「この会社はスピード感が遅い」と一方的に見切りをつけ、1年足らずで次の職場を探し始めるのです。
コンサル時代の「成功体験」を一度捨て、プライドを脇に置き、事業会社のゲームのルールを謙虚に学び直す。その覚悟がない限り、コンサルで得た優秀なスキルも、宝の持ち腐れとなってしまうのです。
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