
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- これからERPの導入を検討している企業のプロジェクトマネージャーや情報システム担当者
- ERP導入プロジェクトで、ベンダーからの高額なカスタマイズ見積もりに悩んでいる方
- パラメータ設定の重要性を理解し、プロジェクトを成功に導きたいコンサルタントやエンジニア
- 「アドオン開発」と「パラメータ設定」の違いを正しく理解したい方
ERP導入プロジェクト。要件定義を進めていくと、必ずと言っていいほど現場からこんな声が上がります。「今の業務のやり方を、1ミリも変えたくない」「この機能は、うちの会社独自のやり方だから絶対に必要だ」。
そして、その声に応えるために、安易に「カスタマイズ(アドオン開発)」という選択をしていませんか?実は、それがプロジェクトのコストと期間を膨張させ、将来のバージョンアップを困難にする“地獄への入り口”なのです。
しかし、ご安心ください。多くのERPには、プログラムの追加開発なしで、システムの動きを自社の業務に合わせるための、強力な「パラメータ設定」機能が備わっています。この記事では、このパラメータ設定を最大限に活用し、無駄なカスタマイズ工数を劇的に削減するための3つのコツを徹底解説します。アドオン開発という“劇薬”に頼る前に、ERPが持つ本来の力を引き出す方法を学びましょう。
コツ1:「業務を、ERPに合わせる」という覚悟を持つ
ERP導入を成功させる上で、最も重要で、そして最も難しいのが、このマインドセットの変革です。日本のERP導入プロジェクトが失敗する最大の原因は、「既存の複雑な業務プロセスを絶対視し、システムを無理やり業務に合わせようとする」ことにあります。
しかし、考えてみてください。ERPパッケージとは、世界中の優良企業の業務プロセス、いわゆる「ベストプラクティス」が凝縮されたものです。自社の業務を、このグローバル標準のプロセスに合わせて見直すことで、結果的に業務全体の効率化・標準化が図れるのです。
「なぜ、この業務はこの手順でなければならないのか?」を徹底的に問い詰め、「昔からこうだったから」という理由しかない業務は、勇気を持って捨てる・変える。この強い意志と経営判断こそが、プロジェクトの成否を分けます。ある調査では、ERP導入に成功した企業の約7割が、業務プロセスの見直し(BPR)を同時に行ったと報告されています。
コツ2:パラメータシートは“設計図”。業務の言葉で記述する
パラメータ設定は、単なるIT担当者の地味な設定作業ではありません。これは、会計、販売、生産といった、各業務の担当者が主体的に関わるべき「業務設計」そのものです。
数千から数万項目にも及ぶERPのパラメータの一つひとつが、あなたの会社の業務ルールを定義しています。例えば、「消費税の計算方法を内税にするか外税にするか」「どの役職の人間が、いくらまでの稟議を承認できるか」「在庫を先入先出法で評価するか、移動平均法で評価するか」など、すべてパラメータで制御されています。
この膨大なパラメータ一覧(パラメータシート)は、まさに会社の業務の“設計図”。この設計図を、ITの言葉ではなく、「自社の業務がどうあるべきか」という業務の言葉で記述し、ベンダーと合意形成していくプロセスが極めて重要です。この工程をベンダーに丸投げした瞬間に、プロジェクトは失敗へと舵を切ります。
コツ3:どうしても必要な時だけ。「アドオン開発」は伝家の宝刀
もちろん、カスタマイズ(アドオン開発)が全て悪というわけではありません。企業の競争力の源泉となっている、本当にユニークで差別化された業務プロセスに関しては、アドオン開発を選択せざるを得ないケースもあるでしょう。
しかし、それはあくまで「最後の手段」であり、「伝家の宝刀」であるべきです。
安易なアドオン開発は、将来にわたって大きな負債となります。開発・保守コストが増大するのはもちろん、ERP本体がバージョンアップした際に、アドオン部分が動かなくなり、膨大な改修コストが発生するリスクを常に抱えることになります。また、開発した担当者が退職すると、そのプログラムは誰も触れない「ブラックボックス」と化します。
「この機能を追加するために数千万円を投資する価値は、本当にあるのか?」その厳しい問いを、必ず経営レベルで判断するプロセスを設けるべきです。
ERP導入の成功は、技術力ではなく、いかに「標準機能を使い倒すか」という思想にかかっています。パラメータ設定は、その思想を体現する、最も地味で、しかし最も重要な工程なのです。
#ERP #基幹システム #DX #カスタマイズ #パラメータ設定
文字数:1100字
メタディスクリプション ERP導入で「カスタマイズ地獄」に陥っていませんか?安易なアドオン開発を避け、パラメータ設定を最大限に活用して工数を8割削減する3つのコツを解説。「業務をERPに合わせる」覚悟の重要性から、具体的な進め方まで、プロジェクト成功の鍵がここにあります。
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