【ITコンサルの本音】月額200万で見た地獄。社長に罵倒され、社員に無視され…私が体験した“コンサル不要”な会社の絶望的特徴

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • ITコンサルタントという職業に、スマートで華やかなイメージを抱いている方
  • これからIT顧問やコンサルタントとして独立し、自分の力で稼いでいこうと考えている方
  • 自社のIT化がうまくいかず、外部のコンサルタントに頼ろうか検討している経営者の方
  • すでにITコンサルに依頼しているものの、期待した成果が出ずに不満や疑問を感じている方
  • 組織改革のリアルな難しさを知り、他社の生々しい失敗談から何かを学びたいと思っている方

ITコンサルタント。多くの人は、この言葉にどんなイメージを持つでしょうか。おそらく、最新の知識を駆使して企業の課題を鮮やかに解決し、高額な報酬を得る、知的でスマートな専門家。そんな姿を思い浮かべるかもしれません。かつての私も、そうでした。しかし、この世界に足を踏み入れてから私が見た現実は、そんなキラキラしたイメージとは程遠い、泥と汗と、そして時として涙にまみれた、あまりにも人間臭い戦いの連続でした。これは、私がIT顧問として数々の中小企業と関わる中で体験した、綺麗事を一切抜きにした、厳しい現実の記録です。これから語るのは、単なる愚痴や暴露話ではありません。組織改革がいかに難しいか、そして、どんな会社がコンサルタントを雇っても絶対に変われないのか。その残酷な真実についての、私の心の叫びです。

「先生、あとはよろしく」ITを魔法だと思っている“勘違い社長”の絶望

コンサルタントとして企業に入って、最初にぶつかる壁。それは、ほぼ例外なく「社長」その人です。特に忘れられないのが、ある製造業の社長でした。彼は私と契約を結ぶと、満面の笑みでこう言ったのです。「いやあ、先生が来てくれて安心した。これでうちも安泰だ。あとは全部、先生にお任せしますよ」。その言葉を聞いた瞬間、私の背筋に冷たい汗が流れたのを、今でもはっきりと覚えています。この社長は、ITやコンサルタントを、自社の問題をすべて自動で解決してくれる「魔法の杖」か何かだと、本気で勘違いしていたのです。

私がどんなに「社長自身が旗を振らなければ、改革は進みません」「ITはあくまで道具であり、会社の課題を解決するのは、社長と社員の皆さんです」と説明しても、彼の耳には届きません。私が提案書を持っていくと、「難しいことはいいから、先生がいいようにやってください」と目も通さない。現場への説明会の日程を調整しようとすると、「ああ、私はその日ゴルフだから、あとはよろしく」と平気で言う。経済産業省のDXレポートでは、DX推進の課題として「経営戦略の不在」が指摘されていますが、まさにその典型でした。会社をどこへ導きたいのかというビジョンが皆無のまま、ただ「IT化」という流行に乗ろうとする。そんな社長のもとで働く社員は、羅針盤のない船に乗せられた船員と同じです。社長が本気でないことを、彼らは肌で感じ取ります。そして、改革への熱意は、始まる前から急速に冷めていくのです。この「丸投げ社長」こそ、コンサルタントが最初に出会う、最も高い壁であり、そして最も深い絶望なのです。

会議では沈黙、裏では愚痴。最強の抵抗勢力“ベテラン社員”との不毛な戦い

社長がそんな調子ですから、現場の社員、特に社歴の長いベテラン勢がどうなるかは、想像に難くないでしょう。彼らは、IT化のプロジェクト会議では腕を組み、難しい顔をして黙り込んでいます。しかし、会議が終わって自分たちの部署に戻った途端、「あんな外部の人間に、うちの会社の何がわかるんだ」「今のやり方で何十年もやってきたんだ。問題ない」「どうせまた社長の思いつきだろう。嵐が過ぎ去るのを待てばいい」。そんな陰口や愚痴が、まるで伝染病のように広がっていきます。

私がヒアリングのために現場を回っても、彼らは露骨に面倒くさそうな顔をするか、当たり障りのない回答に終始するだけ。本当に困っていることや、非効率だと感じていることを、決して本音では話してくれません。彼らにとって、私は自分たちの平和な日常を乱しにきた「侵略者」でしかないのです。ある時、私は請求書の発行から入金管理までの一連の業務フローを分析し、手作業と目視確認による無駄を大幅に削減できる新しいプロセスを提案しました。しかし、数週間経っても、現場は一向に新しいやり方に移行しようとしません。経理のベテラン担当者に理由を尋ねると、彼女は悪びれもせずにこう言いました。「ああ、あのやり方ですか。なんだか難しそうだったんで、とりあえず今まで通りやってます」。この瞬間、私は悟りました。これは、論理や正論で戦える相手ではない。彼らは、変化そのものを拒絶しているのだと。彼らのテリトリーを守るためなら、会社全体の利益など二の次。この見えない壁、不作為の抵抗こそが、コンサルタントの心をじわじわと蝕んでいく、最も厄介な敵なのです。

「で、費用対効果は?」1円も損したくない社長が失っている、本当のコスト

改革が行き詰まる中、社長は私を呼びつけ、イライラした様子でこう問い詰めます。「先生、一体いつになったら効果が出るんですか?毎月高いコンサル料を払ってるんですよ。費用対効果はどうなってるんですか?」。この手の社長は、IT投資を「未来への投資」ではなく、単なる「経費」としか見ていません。私が提案するすべてのことに対して、短期的なリターン、つまり「それをやったら、すぐにいくら儲かるのか?」ということしか尋ねないのです。

私は、必死に説明しました。「社長、今の業務プロセスでは、社員の皆さんが毎月合計で100時間以上も、単純なデータ入力作業に時間を奪われています。これは人件費に換算すると年間で数百万円の『見えないコスト』です。さらに、手作業によるミスが原因で、取引先の信用を失うリスクもあります。IT化は、これらのコストやリスクを削減し、社員がもっと付加価値の高い仕事に集中できる環境を作るための『投資』なのです」と。しかし、彼は納得しません。「そんな未来の話はどうでもいい。今、金にならないなら意味がない」。この言葉に、私は返す言葉を失いました。目先の数万円、数十万円を惜しむあまり、将来得られるはずの数百万円の利益や、失われずに済んだはずの信用といった、莫大な「機会損失」に気づくことができない。1円も損をしたくないというその思考が、実は会社にとって最大の損害を生んでいるという皮肉。この貧困な会計思考と向き合うたびに、私は深い無力感に襲われるのです。

社長室に呼び出され「君、給料泥棒だよ」。心が折れた、あの日の記憶

プロジェクト開始から半年が過ぎても、状況は一向に好転しませんでした。現場の抵抗は根強く、社長は相変わらず非協力的。そんなある日の午後、私は社長室に呼び出されました。部屋に入るなり、社長は溜まっていた不満を爆発させたのです。「先生、一体どうなってるんだ!君に毎月200万円も払っているのに、会社は何も変わらないじゃないか!現場からは不満ばかり聞こえてくるし、君は一体何をやっているんだ。はっきり言って、君は給料泥棒だよ!」。

その言葉は、鋭いナイフのように私の胸に突き刺さりました。悔しかった。しかし、何も言い返せませんでした。なぜなら、客観的な事実として、会社は何も変わっていなかったからです。私一人がどれだけ正しい正論を述べても、どれだけ完璧な計画書を作っても、動かすべき当事者たちにその気がなければ、組織は1ミリも動かない。その夜、私は一人、空っぽのオフィスで自問自答を繰り返しました。自分のやり方が悪かったのか?もっとうまくやれる方法があったのではないか?しかし、どんなに考えても、答えは出ませんでした。ただ一つわかったのは、コンサルタントという仕事の、残酷なまでの無力さでした。会社を変えるのは、決して外部のコンサルタントではない。その会社の中にいる社長と、社員自身なのだ。この当たり前の真実を、私は心をえぐられるような痛みと共に、この日、学んだのです。

それでも私がこの仕事を続ける理由。絶望の先に見えた、一筋の光

こんな地獄のような体験を何度も味わい、正直、この仕事を辞めようと思ったことも一度や二度ではありません。しかし、それでも今、私がこの仕事を続けているのには理由があります。それは、数々の絶望を味わったからこそ、ほんの僅かな「光」が、何よりも尊く、輝いて見えるようになったからです。多くの失敗を経験したおかげで、私は今、「この会社は変われる」「この社長は本物だ」ということを見抜く目を、少しだけ養うことができたと思っています。

ある別の会社でのことです。最初はやはり、現場の抵抗は強いものでした。しかし、その会社の社長は、私を「先生」ではなく「〇〇さん」と呼び、すべての会議に必ず出席し、現場の社員一人ひとりに「なぜ今、変わらなければならないのか」を、自分の言葉で、情熱を込めて語り続けました。そして、ある日、最も抵抗していたベテランの工場長が、私のところにやってきて、少し照れくさそうにこう言ったのです。「あんたの言うことも、一理あるかもしれん。ちょっと、俺にも手伝わせてくれ」。その瞬間、私は涙が出そうになるのを必死でこらえました。組織が、人が、変わる瞬間。その奇跡のような瞬間に立ち会えること。これこそが、ITコンサルタントという仕事の、最高の醍醐味なのだと、心から思いました。この仕事は、決してスマートではありません。しかし、人と組織の未来に深く関わり、その成長を「伴走」できる、最高に人間臭く、やりがいに満ちた仕事でもあるのです。

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