【転売ヤー歓喜のワケ】エルメスは、なぜあなたにバーキンを“売らない”のか?『品切れ』の残酷なカラクリ

この記事は約4分で読めます。

【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 高級ブランドの店で「在庫がありません」と言われ、モヤモヤした経験のある方
  • なぜ、エルメスのバーキンやロレックスの時計が、定価で手に入らないのか不思議な方
  • 「限定品」や「入手困難」という言葉に、つい心が躍ってしまう方
  • ビジネスにおける、人間の心理を巧みに利用した、高度なマーケティング戦略を知りたい方

「申し訳ございません。こちらの商品は大変人気でして、現在、国内に在庫がございません」

高級ブランドのブティックで、美しい店員さんに、完璧な笑顔でそう言われた経験はありませんか? 欲しいのに。お金なら、ここにあるのに。それでも、売ってくれない。 この理不尽とも思える状況に、あなたは「馬鹿にしているのか!」と腹を立てるかもしれません。

しかし、その「品切れ」こそが、彼らが莫大な利益を生み出し続けるための、極めて巧妙に設計された“罠”なのです。 今日は、なぜ高級ブランドは、商品を「売らない」ことで、逆に儲かるのか。その残酷で、悪魔的なカラクリを、一切の忖度なく解き明かします。

「誰でも手に入る」ようになった瞬間、ブランドは“死ぬ”

まず、高級ブランドが、この世で最も恐れていることは何か。 それは、自社の製品が、誰でも簡単に手に入ってしまう「ブランドの大衆化」です。

想像してみてください。 もし、エルメスのバーキンが、近所のイオンのワゴンで山積みになっていたら? もし、フェラーリが、トヨタのカローラのように、そこら中を走っていたら? その瞬間、人々がそのモノに感じていた「特別な価値」は、跡形もなく消え失せます。

高級ブランドの価値とは、製品そのものの品質やデザインだけで決まるのではありません。むしろ、それを「所有している」という“優越感”や、限られた人間しか持てないという“希少性”こそが、価値の本質なのです。 だから、彼らは意図的に供給量を絞り、「欲しくても、簡単には買えない」状況を作り出す。この「手に入らない」という事実こそが、ブランドの神聖性を保つための、最も重要な生命線なんです。

「ヴェブレン効果」という名の、人間の“見栄”を刺激する魔法

この「手に入らないほど、欲しくなる」という、人間の抗いがたい欲望。 その背後には、「ヴェブレン効果」という経済学の理論が存在します。

これは、普通の消費行動とは真逆の現象で、「商品の価格が高いほど、また、手に入りにくいほど、かえって需要が増加する」というもの。なぜなら、それを所有することが「自分は、これほどの対価を払える特別な人間だ」という、ステータスや自己顕示欲(見栄)を満たすことに直結するからです。

高級ブランドは、このヴェブレン効果を最大化するために、「売らない」戦略を取ります。 店頭に在庫がないことで、その商品の希少価値はさらに高まる。人々はさらにそれを熱望し、中古市場では、定価をはるかに超える異常なプレミア価格で取引される(これが、転売ヤーが儲かるカラクリです)。そして、その熱狂がまた、新品の価値をさらに押し上げる…という、無限の価値創造ループが生まれるのです。

事実、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)グループなどのラグジュアリー企業の業績は、コロナ禍以降も絶好調を維持しています。彼らは、不況に強い。なぜなら、彼らが売っているのは、生活必需品ではなく、人間の根源的な“欲望”そのものだからです。

あなたは“選ばれている”のか?顧客を育てる残酷なゲーム

では、一体どうすれば、バーキンのような特別な商品を手に入れることができるのか。 答えは、シンプルです。 あなたが商品を選ぶのではなく、「ブランドに、あなたという顧客を“選んで”もらう」しか、道はありません。

彼らは、一見の客に、いきなり最高峰の商品を売りたいとは考えていません。 彼らが探しているのは、ブランドの歴史や世界観を深く理解し、長く、そして太く付き合ってくれる「上客」、すなわちブランドの“パートナー”です。

プレタポルテ(既製服)や靴、食器といった他の商品を購入し、ブランドへの忠誠心と貢献度、すなわち「実績」を積む。その誠意が認められた者だけが、特別な部屋に通され、「たまたま、本日、お客様にぴったりのバッグが入荷いたしまして…」という、魔法の言葉を聞くことができる。

これは、顧客をふるいにかけ、ブランドの価値を維持するための、非常に残酷で、しかし、極めて合理的な「入学試験」なのです。

高級ブランドが「売らない」のは、意地悪をしているわけではありません。 それは、人間の本能を巧みに操り、ブランドの神話を維持するための、計算され尽くした、最高のマーケティング戦略なのです。

彼らが本当に売っているのは、バッグや時計という「モノ」ではない。 「選ばれた者だけが手にできる」という“特別な体験”と、その先にある“優越感”という「コト」なのです。

次にあなたが、ブティックで「品切れです」と言われたとき。 それは、本当に品切れでしょうか? それとも、あなたはまだ、そのブランドが仕掛ける、壮大なゲームに参加する“資格”がないだけなのでしょうか?

コメント

タイトルとURLをコピーしました