
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 漠然とした不安や焦りを抱えているが、その原因がまったく分からない方
- 自分のキャリアや会社の将来について、何をすべきか分からず途方に暮れている方
- 問題解決の第一歩を、どこから踏み出せばいいのか見当もつかない方
- 「考える」ことから逃げている自分に、薄々気づいている全ての方
「とにかく、何かマズい気がするんです」「言葉にできないんですけど、漠然とした不安があって…」「何に困っているのかすら、もう分からないんです」。分かります。まるで、出口のない濃い霧の中を、コンパスも持たずに一人で歩いているような感覚ですよね。
ですが、専門家として、私は最初にこう言わざるを得ません。「あなたが何に困っているか分からないのなら、私にも分かりません。そして、それはこの地球上の誰にも分かりません」と。これは、決してあなたを見捨てるための冷たい言葉ではありません。思考停止という名の深い霧を無理やり晴らすための、最初の雷鳴です。今回は、その霧の中で自分の足で立つための、極めて実践的で、少し厳しい思考トレーニングを始めます。
なぜ「何に困っているか分からない」状態に陥るのか
この、正体不明のモヤモヤ。その本質は、多くの場合「思考の怠慢」であり、一種の「現実逃避」です。
具体的な問題、例えば「売上が落ちている」「人間関係が最悪だ」といった課題と向き合うのは、苦痛を伴います。だから、私たちの脳は無意識に、それらの個別の問題を「漠然とした不安」という大きなゴミ袋に全部詰め込んで、見えないフリをしようとするのです。特に、情報だけは無限に入ってくる現代社会では、インプット過多で自分自身の頭でじっくり「考える」時間が絶対的に不足し、この思考停止の状態に陥りやすいのです。
最初のステップ:「感情」と「事実」をゴミ分別する
では、どうすればいいか。最初のステップは、そのゴミ袋を破り、中身を一つひとつ分別することです。用意するのは、一枚の紙とペンだけ。紙の左側に「感情」、右側に「事実」と書きます。
そして、「ヤバい」「不安だ」「モヤモヤする」「つらい」といった、あなたの心の叫びを、全て「感情」の側に書き出してください。次に、頭を冷やして、「売上が3ヶ月連続で前年同月比マイナス10%」「主要取引先からの発注が半減した」「部下のAさんが先月退職した」といった、具体的で、誰が見ても否定できない「事実」だけを、右側に書き出すのです。この2つを切り離すだけで、霧は少し晴れるはずです。これは、感情的な脳の働きを一旦停止させ、論理的な脳を強制的に起動させるためのスイッチです。
次のステップ:「理想」と「現実」のギャップを見つめる
事実のリストアップができたら、次のステップです。その紙の下半分に、今度は「理想の状態」を、できるだけ具体的に書き出してください。「本当はどうなっていたいのか?」「3ヶ月後、どうなっていれば『最高!』と叫べるか?」を、遠慮なく書くのです。
例えば、「現実:売上が前年割れ」に対して、「理想:売上が前年比120%を達成し、利益で海外旅行に行く」。これで準備は整いました。あなたが向き合うべき「課題」とは、この「現実」と「理想」の間に横たわる、巨大な「ギャップ」そのものです。このギャップこそが、あなたが解決すべき問題の正体なのです。
結論:痛みを感じる場所こそが「課題」である
「何に困っているか分からない」のではありません。本当は、分かっているはずです。ただ、その「理想と現実のギャップ」を直視した時に感じる「痛み」や「不快感」から、目をそらしているだけではないですか。
課題とは、常に痛みを伴うものです。その痛みから逃げている限り、あなたは永遠に霧の中を彷徨い続けることになります。専門家とは、その痛みを直視する覚悟を決めた人間を手助けする存在です。霧の中を代わりに歩いてあげる便利屋ではありません。
さあ、紙とペンは用意できましたか?あなたが最初に書き出すべき「事実」は、何ですか?
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