【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 会社の「DX推進」という掛け声に、正直うんざりしている現場社員の方
- DX担当に任命されたものの、ITベンダーの言いなりになりそうで不安な方
- 高額なコンサル費用を払ったのに、導入されたのは使えないツールだけだった…という経験を持つ経営者の方
- 日本のDXがなぜ進まないのか、キレイごと抜きのリアルな本音を知りたいすべての方
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、新たな価値を創造する」
今や、どんな会社の経営計画にも書かれている、耳にタコができるほど聞いた言葉だろう。
だが、あなたの職場で胸に手を当ててみてほしい。
「DX推進」の結果、一体、何がどう変わっただろうか?
聞こえてくるのは、「よくわからない横文字のツールが導入されただけ」「会議がオンラインになっただけ」「結局、現場の仕事は何も楽になっていない」そんな空虚な声ばかりではないだろうか。
これは、単なるあなたの会社の失敗談ではない。日本中の企業で繰り返されている、壮大な悲喜劇だ。
この記事では、なぜ多くのDXプロジェクトが“詐欺案件”とまで揶揄される無残な結果に終わるのか。その構造的な病巣に、IT業界の内部に身を置く人間として、一切の忖度なくメスを入れる。
目的は「変革」のはずが、いつの間にか「ツール導入」にすり替わる罠
DXが失敗する最大の原因。それは、プロジェクトが始まった瞬間に、その目的がすり替えられてしまうことにある。
いいか、よく聞いてほしい。
DXの本来の目的は、「デジタル技術を使って、ビジネスモデルや業務プロセス、ひいては組織文化そのものを根本から“変革”すること」だ。
決して、「特定のITツールを導入すること」ではない。
しかし、現実はどうだ。
「DX=新しいSaaSを入れること」「DX=AIという言葉を使うこと」「DX=ペーパーレス化すること」
このように、本来は変革のための「手段」でしかないはずのツール導入が、いつの間にか「目的」そのものに成り下がってしまう。
情報処理推進機構(IPA)が発行する「DX白書」を見ても、多くの企業がDXの課題として「ビジョンや戦略の欠如」を挙げている。
つまり、「何のためにDXをやるのか」という根本的な目的意識が、経営層ですら曖昧なままプロジェクトがスタートしているのだ。
目的が曖昧なまま進むプロジェクトは、必ず失敗する。
これは、行き先を決めずに航海に出るようなもの。コンパスも海図もなければ、ただ漂流し、やがて座礁するのは当たり前の話だ。
「DXごっこ」に群がるハイエナたち
そして、この「目的が曖昧な船」には、格好の獲物を狙うハイエナたちが群がってくる。
ハイエナとは、ITベンダーやコンサルティングファームの一部だ。
彼らは、「DX」という魔法の言葉を巧みに使い、経営者の漠然とした不安を煽り立てる。
「このままでは時代に乗り遅れますよ」 「競合他社は、もうこんなツールを使っています」 「弊社の最新AIソリューションなら、御社の課題をすべて解決できます」
彼らの甘い言葉に、目的意識のない経営者はコロッと騙される。
そして、数百万円、数千万円という大金を払い、自社の課題に全くフィットしない高価なツールや、中身のないコンサルティング報告書を掴まされることになる。
彼らの目的は、あなたの会社のビジネスを変革することではない。
彼らの目的は、いかにして「DX」という名のパッケージ商品を高く、そして長く売りつけ、自社の売上を立てるか、だ。
現場の課題も、組織の文化も無視して導入されたツールは、誰にも使われることなく放置される。
こうして、多額の投資が無駄に終わる「DXごっこ」が完成する。
残るのは、使いこなせないツールのライセンス料と、現場の深い失望感だけだ。
結局、悪いのはITベンダーか?いや、丸投げする「あなた」だ
ここまで、ITベンダーやコンサルをハイエナ呼ばわりしてきた。
だが、最後に最も厳しい真実を突きつけなければならない。
DXが失敗する本当の戦犯は、彼らではない。
思考停止し、自社の未来を外部業者に「丸投げ」した、経営者であり、担当者である「あなた」自身だ。
厳しい言い方だが、DXは、決して外注できるものではない。
あなたの会社の業務プロセスを、あなたの会社の顧客を、あなたの会社の文化を、外部の人間があなた以上に理解できるはずがないだろう。
「何に困っているのか」「どうなりたいのか」「そのために、どんな変革が必要なのか」
この血の通ったビジョンを描けるのは、現場で日々汗をかいている、あなたたち自身しかいない。
その一番大事な部分を放棄して、外部のコンサルに「ウチのDX、いい感じにやっといて」と丸投げする。
それこそが、詐欺師に「どうぞ、私をカモにしてください」と自己紹介しているようなものだ。
ITベンダーは、あくまで変革の「パートナー」であり、道具を提供してくれる存在だ。
船の行き先を決めるのは、船長であるあなた自身の仕事なのだ。
DX推進は、まず「業者選び」から始めるな。
まず、自分たちの「ありたい姿」を、血が滲むほど議論することから始めろ。
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