
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 最近、部下とのコミュニケーションに「壁」を感じている全ての管理職の方
- 部下のモチベーションが低いのは、部下自身の問題だと思い込んでいる上司
- 良かれと思ってやっている自分の指導が、なぜか裏目に出てしまうと感じている方
- 部下から本当に信頼され、尊敬されるリーダーになりたいと心から願う方
最近、部下が自分から報告や相談をしてこなくなった。会議で意見を求めても、当たり障りのないことしか言わない。「はい、分かりました」と素直に言うけれど、その目にどこか光がない…。そんな、ヒヤリとするような違和感を覚えたことはありませんか。
もし、少しでも心当たりがあるなら、事態はあなたが思うより、ずっと深刻です。それは、部下があなたを上司として信頼し、期待することを、静かに諦めてしまったサインかもしれません。つまり、あなたは部下から、とっくの昔に「見切りをつけられた」のです。今回は、部下が上司を見限る時に発する“静かなサイン”と、そうなる上司の致命的な共通点、そして、手遅れになる前に関係を修復するための最後の処方箋について、厳しくお話しします。
サイン①:「相談」がなくなり「報告」だけになる
最も危険な兆候の一つがこれです。部下が「〇〇の件、どうすればいいでしょうか?」という「相談」をしてこなくなり、代わりに「〇〇の件、このように処理しました」という「事後報告」だけになった。一見すると、部下が自立して仕事を進めているようで、喜ばしいことのように思えるかもしれません。
しかし、その裏側を想像したことはありますか。これは、部下があなたに対して「この人に相談しても、的確なアドバイスは期待できない」「マイクロマネジメントされて、逆に仕事が増えるだけだ」「結局、自分で考えた方が早い」と、完全に見切りをつけた結果なのです。部下は、あなたを頼れる上司ではなく、単なる「承認スタンプを押す機械」としか見ていません。
サイン②:「反論」がなくなり「同意」だけになる
会議の場で、あなたがどんなに無茶な提案をしても、部下は一切の反論をせず、「おっしゃる通りです」「承知いたしました」と、完璧なイエスマンを演じる。これもまた、末期的な症状です。
あなたは「自分の意見が浸透している」と悦に入っているかもしれませんが、大きな間違いです。部下は、心の中では「また始まったよ…」と冷めきっています。「この人に何を言っても無駄だ」「正論を述べても感情的に返されるだけだ」と、議論そのものを放棄してしまっているのです。離職理由の上位に、常に「上司との人間関係」が挙げられるのは周知の事実。部下は会社を辞めるのではなく、議論する価値もない「あなた」を辞めているのです。健全な反論がなくなったチームは、もはや成長もイノベーションも望めません。ただ、ゆっくりと沈んでいくだけの泥舟です。
あなたが部下の「成長の機会」を奪っている
ではなぜ、部下はあなたを見限るのでしょうか。その根本原因は、驚くほどシンプルです。それは、あなたが部下を信頼せず、良かれと思って、彼らの「成長の機会」を奪い続けているからです。
部下が困っていると見るや、すぐに「答え」を教えていませんか。失敗させないようにと、業務の進め方を細かく指示するマイクロマネジメントをしていませんか。その「親切」な行為が、部下自身が「頭に汗をかいて考え、試行錯誤し、そして失敗する」という、成長過程で最も重要な経験を、根こそぎ奪っているのです。あなたは、部下を育てているつもりで、実は「自分で考えられない、指示待ち人間」へと飼いならしているだけ。そのことに、部下自身が一番先に気づくのです。
結論:部下を信じ、そして“放置”せよ
もう手遅れかもしれない。それでも、もし関係を修復したいと願うのなら、処方箋は一つしかありません。それは、「部下を信じ、仕事を任せ、そして“放置”する勇気を持つこと」です。
もちろん、責任まで丸投げしろというのではありません。最終的な責任は全て自分が取るという覚悟を明確に示した上で、部下に裁量権を与え、そのプロセスに口出ししない。失敗を許容し、その失敗から何を学んだかを一緒に振り返る。「どうやるんだ?」ではなく「君はどうしたい?」と問いかける。
部下を一人の未熟な手足としてではなく、対等なプロフェッショナルとして扱い、その可能性を心から信じる。その痛みを伴う覚悟を、あなたが行動で示した時、初めて部下の凍りついた心は、少しずつ溶け始めるのかもしれません。
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