
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 会社の変革や成長が、なぜか上手くいかないと感じている全ての経営者の方
- 「ウチの社員は当事者意識が低い」と、本気で嘆いている管理職の方
- 社長の口先だけの号令や、コロコロ変わる方針に、心底ウンザリしている社員の方
- 組織を本当に動かす「本物のリーダーシップ」とは何かを知りたい方
「ウチの社員は、どうも主体性がなくて…」「新しいビジョンを示しても、現場がなかなか動いてくれないんだよ」。経営者の方々とお話ししていると、そんな嘆きを本当によく耳にします。まるで、自分はやる気に満ち溢れているのに、社員の意識が低いせいで、会社が変われないのだ、と言わんばかりの口ぶりで。
しかし、長年さまざまな会社を見てきた専門家として、私はいつも心の中でこう断じています。「いや、社長。原因は100%、あなたにありますよ」と。会社という船は、船長であるあなたが本気で舵を切らない限り、たとえ嵐が来ようとも、1ミリたりとも動くことはありません。今回は、なぜ経営者の「本気」が全てなのか、そして、あなたのその「本気」が社員に全く伝わっていない悲しい理由について、厳しくお話しします。
会社は「社長の器」以上にはならない
まず、この残酷な事実を受け入れてください。あなたの会社で起きている問題は、すべて、あなた自身の問題の投影です。会社は、良くも悪くも「社長の器」以上には、絶対にならないのです。
「社員が挑戦しない」と嘆く前に、胸に手を当てて考えてみてください。あなたは、社員の失敗を本当に許容していますか?一度の失敗で、評価を下げたり、厳しい叱責をしたりしていませんか?「社員が変化を嫌う」のではありません。「社長自身が、心の底では現状維持を望み、変化に伴う痛みを恐れている」だけではないですか。社員は、社長という名の鏡に映った、あなた自身の姿なのです。
なぜ、あなたの「本気」は伝わらないのか
「いや、私は本気だ!」と、あなたは反論するかもしれません。素晴らしいビジョンを描き、熱意のこもったメッセージを全社に発信している、と。しかし、社員はそんな言葉を信じていません。なぜなら、あなたの「言行が一致していない」からです。
「コスト意識を持て!」と朝礼で叫びながら、自分は会社の経費で高級車を乗り回す。「無駄な残業はするな!」と指示しながら、自分は深夜まで目的の分からない会議をダラダラと続ける。こうした日々の小さな矛盾を、社員は驚くほど敏感に感じ取っています。そして、「ああ、社長の言葉は、また口だけか」と、静かに見切りをつけているのです。
社員が見ているのは「言葉」ではなく「行動」
では、どうすればあなたの「本気」は伝わるのでしょうか。答えは一つしかありません。「行動で示す」ことです。
社員は、あなたが語る美辞麗句のスローガンには、もはや何の興味もありません。彼らが見ているのは、もっと生々しい現実です。あなたが「何に時間を使い、何にお金を使い、そして、誰を評価しているか」。この3つだけです。
本気でDXを進めたいのなら、まずあなた自身が誰よりも新しいツールを使いこなし、その学習に時間を割くべきです。本気で新しい事業を育てたいのなら、その事業部に、会社の最も優秀な人材と潤沢な予算を投入すべきです。そして、会社の変革のためにリスクを取って挑戦した社員を、たとえ失敗したとしても、その行動を正当に評価し、称賛するべきです。その具体的な「行動」だけが、あなたの本気度を証明する唯一の証拠なのです。
結論:覚悟を決め、孤独な道を行け
「会社を変える」とは、聞こえはいいですが、実際には、過去の成功体験を自ら否定し、時には長年会社に貢献してくれた功労者に非情な判断を下すことも伴う、極めて「孤独」な道です。
その孤独と痛みを、全て引き受ける覚悟が、あなたにはありますか。社員のせいにし、評論家のように嘆くのは、今日で終わりにしませんか。船長であるあなたが腹を括り、会社の未来のために、たった一人でもその茨の道を行くと決意する。社員たちが本当に見たいのは、その鬼気迫る後ろ姿なのです。その姿を見た時、初めて社員の中に「この船長となら、嵐の中へも漕ぎ出そう」と思う者が出てくるのですから。
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