その戦略、自己満です。マーケティングが“ドブ金”と化す、致命的な3つの勘違い

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 多額の予算をマーケティングに投じているのに、全く成果に繋がらず頭を抱えている経営者・責任者の方
  • 最新のWeb広告やSNS運用を試しているが、一向に手応えを感じられないマーケティング担当者の方
  • 「戦略」という言葉は使うものの、実際には思いつきの「施策」を繰り返しているだけだと薄々感じている方
  • これからマーケティングの世界で生き抜くために、小手先のテクニックではなく、本質的な思考法を身につけたい方

Web広告、SNSマーケティング、コンテンツSEO、インフルエンサー施策…。あなたの会社でも、これらの「今どき」のマーケティング活動に、多額の予算と人員を投入していることでしょう。しかし、胸に手を当てて正直に答えてください。その投資、本当に見合った成果を生んでいますか?CPAは高騰し、フォロワーは増えても売上は伸びず、作ったコンテンツは誰にも読まれない。その結果、貴重な予算がまるで“ドブ金”のように消えていく…。そんな悪夢のような現実に、あなたは気づかないフリをしていませんか?

はっきり言いますが、問題は、あなたが選んだ広告媒体やツール、あるいは担当者の能力にあるのではありません。真の病巣は、もっと根深いところにあります。それは、あなたの会社が「戦略」と信じて実行しているものが、そもそも戦略としての体をなしていない、単なる「自己満足の作業」に成り下がっているという、極めて残酷な事実です。

この記事では、そんな成果の出ないマーケティング活動に終止符を打つため、なぜあなたの戦略が機能しないのか、その致命的な勘違いを白日の下に晒し、本物の「戦略」を構築するための思考法を、一切の忖度なく、あなたの脳に直接叩き込みます。

あなたがやっているのは戦略ではない。単なる「施策ごっこ」だ

まず、最も厳しい現実からお伝えします。あなたの会社に「マーケティング戦略」は、存在しません。存在しているのは、場当たり的で、一貫性がなく、検証もされない「施策の羅列」だけです。これを、私は「施策ごっこ」と呼んでいます。

「最近、TikTokが流行っているらしいから、うちもやってみよう」 「競合がWeb広告の予算を増やしたみたいだから、うちも負けずに投入しよう」 「とりあえずブログ記事をたくさん書けば、いつかアクセスが増えるだろう」

心当たりはありませんか?これらは全て、戦略的思考が欠如した、典型的な「施策ごっこ」の症状です。戦略とは、暗闇の海を渡るための「羅針盤」であり「海図」です。どこに目的地(ゴール)があり、そのためにはどの航路(ルート)を通り、どんな嵐(リスク)を避けるべきか。それらを明確に定義し、組織全体の行動を一つの方向に向かわせるものこそが戦略です。

羅針盤も海図も持たずに、ただ流行りの船に乗り換えたり、やみくもにオールを漕いだりしているだけの「施策ごっこ」では、目的地にたどり着けるはずがありません。それどころか、貴重な燃料(予算)と船員の体力(人員)を無駄に消耗し、やがて遭難するのは、火を見るより明らかなのです。日本の多くの企業がマーケティングのROI(投資対効果)を正確に測定できていないという調査データもありますが、それは当然です。そもそも目的地が定まっていなければ、投資が効果的だったかどうかを判断する基準すら存在しないのですから。

致命的な勘違い①:「みんな」に届けようとして、誰にも届かない

では、なぜあなたのマーケティングは「施策ごっこ」から抜け出せないのか。その根源にある一つ目の致命的な勘違いは、メッセージを届けたい相手、つまり「顧客」の解像度が、絶望的に低いことです。

あなたの会社のターゲット顧客は誰ですか?と聞かれて、「20代から40代の女性です」「中小企業の経営者です」などと答えているとしたら、それは「ターゲットなど設定していません」と言っているのと同じです。そんな輪郭のぼやけた幽霊のような相手に、心に突き刺さるメッセージが届けられるはずがありません。

考えてみてください。あなたは、道端で「若者の皆さん!」と叫ばれても、足を止めますか?止めませんよね。しかし、「〇〇大学に通う、就職活動に悩む3年生のあなたへ」と呼びかけられたら、思わず振り返ってしまうはずです。メッセージとは、絞れば絞るほど、その対象者にとっての「自分ごと」となり、強力な引力を持ち始めるのです。

成果を出すマーケターは、顧客のことを、まるで親友かのように語ることができます。彼らがどんな仕事をしていて、毎朝何時に起き、通勤中にどんな情報に触れ、何に悩み、何に怒り、そして夜、ベッドの中で何を考えているのか。そのレベルまで顧客を理解し、たった一人の「あなた」に向けて、手紙を書くようにメッセージを紡いでいるのです。

「みんな」に届けようとするメッセージは、誰の心にも響かない、ただのノイズです。それは、大海原に向かって、ただ大声で叫んでいるのと同じ。誰にも届かないばかりか、広告費という名の弾薬を、無駄にばらまいているだけの愚かな行為なのです。

致命的な勘ö違い②:顧客はあなたの製品(ドリル)に1ミリも興味がない

二つ目の勘違いは、さらに残酷な真実かもしれません。それは、あなたが伝えたいことと、顧客が聞きたいことの間に、絶望的なまでの深い溝があるという事実です。

あなたは、自社の製品やサービスがいかに素晴らしいかを、熱を込めて語りたがります。「この製品には、最新のAI技術が搭載されていて…」「我々のサービスは、業界No.1の実績を誇り…」。しかし、はっきり言います。顧客は、あなたの製品やサービスそのものには、1ミリたりとも興味がありません。

有名なマーケティングの格言に、「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」という言葉があります。これを理解しているつもりになっているマーケターは多い。しかし、その本質を本当に理解し、実践できている人は、驚くほど少ないのです。

顧客が求めているのは、あなたの製品が持つスペックや機能(ドリル)ではありません。彼らが喉から手が出るほど欲しているのは、その製品を使うことで、自分の抱える深刻な悩みや課題が解決され、理想の未来(穴)が手に入ることだけです。

「この化粧品は、ノーベル賞受賞成分を配合しています!(ドリル)」ではなく、「この化粧品を使えば、朝のたった5分で、10歳若く見られる自信が手に入ります(穴)」。「この会計ソフトは、クラウド連携機能が充実しています!(ドリル)」ではなく、「このソフトを使えば、毎月3日間もかかっていた経費精算の地獄から解放され、あなたはもっと創造的な仕事に集中できます(穴)」。

あなたが語るべきは、あなたの製品の自慢話ではない。顧客の悩みに寄り添い、彼らがどんな「穴」を求めているのかを誰よりも深く理解し、その穴を開ける最高の手段がこれなのだと、指し示してあげることなのです。

致命的な勘違い③:「なぜ、あなたから買うべきか?」に1秒で答えられるか

最後の勘違いは、競合との差別化、つまり「ポジショニング」の欠如です。世の中には、あなたの製品やサービスと似たようなものが、星の数ほど存在します。その中で、顧客が「なぜ、競合ではなく、わざわざあなたから買う必要があるのか?」という、この極めてシンプルな問いに、あなたは1秒で答えることができるでしょうか。

もし、答えに詰まるようなら、あなたのマーケティングは致命的な病にかかっています。「品質が良いからです」「価格が安いからです」といった答えは、答えになっていません。品質の良し悪しなど顧客には簡単には分かりませんし、価格競争は、体力のある大企業以外を疲弊させ、やがて死に至らしめる、最も愚かな戦略です。

あなたに必要なのは、顧客の心の中に、「〇〇といえば、この会社」という、独自の、そして強力な旗を立てることです。それは、機能や価格といった土俵ではなく、あなたの会社が持つ独自の哲学やビジョン、ストーリー、あるいは他社には真似のできない圧倒的な専門性といった、もっと情緒的で、本質的な価値です。

例えば、「安全な車」といえばボルボ。「究極の顧客体験」といえばリッツ・カールトン。「デザイン性の高い家電」といえばバルミューダ。彼女たちは、自社が何者であり、何者でないかを明確に定義し、その旗の下に集う熱狂的なファンを創造しています。あなたの商品を選ぶことは、単なる消費ではなく、その価値観に共感し、その物語に参加するという「自己表現」になっているのです。

「なぜ、あなたなのか?」この問いに答えられないままでは、あなたは価格比較サイトのその他大勢の一覧に埋もれるだけであり、顧客にとっては、いつでも乗り換え可能な、どうでもいい選択肢の一つでしかあり続けられないのです。

「施策ごっこ」を卒業し、成果を生む「本当の戦略」を構築する思考法

ここまで、あなたのマーケティングを失敗に導く3つの致命的な勘違いを指摘してきました。では、どうすればこの「施策ごっこ」を卒業し、本物の戦略を構築できるのか。その答えは、これまで指摘してきた勘違いを、一つ一つ丁寧な作業で覆していくことに他なりません。

まず、「誰に」届けるのかを、徹底的に再定義してください。アンケートや顧客インタビュー、営業担当者へのヒアリング、データ分析。あらゆる手段を使って、顧客の生々しい声に耳を傾け、彼らの痛みや願望を、解像度高く理解するのです。そして、その中から、あなたが最も価値を提供でき、かつ、あなたの会社のファンになってくれる可能性のある、理想の顧客像(ペルソナ)を、たった一人に絞り込むレベルで描き出してください。

次に、そのたった一人に向けて、「何を」提供するのかを、研ぎ澄ませてください。あなたが売りたいものではなく、彼らが本当に求めている「解決策」と「理想の未来」を、彼らの言葉で語るのです。自社の製品やサービスの持つ特徴を全て書き出し、それが顧客のどんな課題を、どのように解決するのかを、一つ一つ翻訳していく作業です。

そして最後に、「なぜ」あなたから買うべきなのか、その揺るぎない理由を構築してください。競合を徹底的に分析し、彼らが提供できていない、あなただけの独自の価値(UVP)を見つけ出すのです。それは、あなたの会社の歴史の中にあるかもしれませんし、創業者の情熱の中にあるかもしれません。あるいは、既存の技術の、全く新しい組み合わせ方かもしれません。

「誰に」「何を」「なぜ」。この3つの問いに対する、一貫性のある、力強い答え。それこそが、マーケティング戦略の骨格です。この骨格さえしっかりと構築できれば、TikTokを使うべきか、Facebook広告を打つべきかといった「施策」の選択は、もはや些末な問題でしかありません。

マーケティングとは、顧客へのラブレターだ。あなたは、誰に、どんな愛を叫ぶのか

結局のところ、優れたマーケティング戦略とは、小手先のテクニックや分析フレームワークを振り回すことではありません。それは、突き詰めれば、「顧客に対する、深く、そして誠実な愛情表現」なのです。

あなたが本当に愛するたった一人の相手に、ラブレターを書くことを想像してみてください。あなたは、その人のことを徹底的に考え、何に悩み、何を喜ばせるのかを想像し、自分のどんな言葉が最も心に響くのかを、真剣に考えるはずです。「みんな」に向けたありきたりの言葉など、書くはずがありませんよね。

あなたのマーケティングは、そんな熱い想いの込もった、ラブレターになっていますか?それとも、誰が書いても同じ、定型文だらけのダイレクトメールになってしまってはいませんか?

戦略なきマーケティングは、愛のないラブレターと同じです。誰の心も動かすことなく、ただ虚しく捨てられるだけ。今日この瞬間から、「施策ごっこ」に別れを告げ、あなたが本当に価値を届けたい相手は誰なのか、そして、その相手にどんな愛を叫びたいのかを、改めて問い直すところから、全てを始めてみてください。

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