「とりあえずRPA」が会社を潰す。情シス担当が語る、9割の企業がハマる自動化の地獄と鉄則3選

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • 社内の業務効率化を命じられたが、何から手をつけていいか分からない担当者の方
  • RPAツールを導入したものの、全く活用できずにホコリをかぶっている方
  • 「自動化」という言葉の響きだけで、全てが解決すると思っている経営者・管理職の方
  • 非効率なExcel作業やデータ入力に、人生の貴重な時間を奪われている全ての方

「RPAを導入すれば、単純作業から解放される」 「AIとロボットが、面倒な仕事を全て片付けてくれる」 …そんなバラ色の未来を、あなたは信じていませんか?

残念ながら、それは全くの幻想です。 僕は情報システム部門の人間として、多くの企業が「とりあえずRPA」に飛びつき、数百万、数千万円をドブに捨ててきた地獄を、この目で見てきました。

管理不能な「野良ロボット」が社内に溢れ、かえって業務がブラックボックス化し、担当者が辞めたら誰も触れない…なんて悲劇は日常茶飯事です。

今日は、そんな地獄にハマる9割の企業が犯している、致命的な勘違い。そして、社内自動化を成功させるために絶対に守るべき、泥臭い「3つの鉄則」について、綺麗事一切なしでお話しします。

鉄則1:クソな業務を自動化するな。まず業務を“殺せ”

これが、最も重要で、そして最も多くの企業がすっ飛ばす鉄則です。 いきなりですが、汚くて散らかった部屋を、そのままルンバ(お掃除ロボット)にかける人はいませんよね?まずは床に落ちている服を拾い、不要な雑誌を捨てるはずです。

業務の自動化も、全く同じ。 そもそも無駄で、非効率で、意味のない業務プロセス(僕らはこれを“クソな業務”と呼びます)を、そのままRPAで自動化しても、何が生まれると思いますか? …そうです。「高速で動く、クソなロボット」が生まれるだけです。

RPAは、あくまで既存のPC操作をなぞるだけのツール。自動化の前にやるべきは、徹底的な「業務プロセスの見直し」です。 「そのExcel資料、本当に必要?」 「その承認フロー、ハンコ多すぎない?」 「そのデータ入力、そもそも発生させない方法はない?」

このように、業務そのものを「そもそも、やる必要があるのか?」という視点で疑い、「やめる」「減らす」「単純化する」というステップを踏む。この地味で面倒な“業務の棚卸し”こそが、自動化プロジェクトの成否の9割を決めると断言します。

鉄則2:現場に丸投げするな。推進チームは“独裁者”であれ

自動化プロジェクトが失敗する、鉄板のパターン。 それは、「現場の各部署で、それぞれ自動化を進めてください」という、無責任な丸投げです。

現場の担当者は、日々の業務で手一杯。全体最適の視点など持てるはずもありません。 結果、何が起きるか。 A部署はA部署のやり方で、B部署はB部署のやり方で、それぞれが自分勝手なロボットを作り始める。管理ルールも、開発基準もバラバラ。管理不能な「野良ロボット」が大量発生し、作った本人しか仕様が分からない、究極の属人化マシーンが生まれるんです。

これを防ぐためには、経営層から強力な権限を与えられた、専門の「推進チーム」が不可欠です。 そして、このチームは、ただの調整役ではいけません。 各部署の「ウチのやり方は特別だ」という抵抗を、時には権限を盾に押し切ってでも、全社標準のルールやプロセスを強制する。「愛のある独裁者」になる覚悟が必要なんです。民主主義で進める自動化は、ほぼ100%失敗します。

鉄則3:小さな成功に酔うな。“スケール”から逆算しろ

「経理部の請求書処理、月10時間の工数を削減できました!」 …素晴らしい。でも、それで満足していたら、あなたの会社の自動化はそこでおしまいです。

RPAツールのライセンス費用は、安くても年間100万円以上します。月10時間、時給2000円としても、年間で削減できる人件費は24万円。全く元が取れていませんよね。

これは、ただの「自己満足なデジタル内職」です。 本当の自動化とは、その成功をいかにして「全社にスケール(拡大)させるか」を考えること。 最初から、「このロボットの処理は、他の部署でも再利用できるな」「全社で使うなら、エラーが出たときの運用ルールを決めておこう」というように、スケールさせることから逆算して設計しなければなりません。

一つの部署の小さな成功に酔いしれるのではなく、全社で数千、数万時間という工数を削減する。その大きな絵を描けないプロジェクトは、始める前から失敗しているのと同じです。

RPAは、魔法の杖ではありません。ただの、道具です。 優れた道具も、使う人間が無能なら、ただのガラクタに過ぎません。

「業務を殺し、独裁者となり、スケールから逆算する」

この3つの鉄則を守れないのなら、悪いことは言いません。 RPAなんて、今すぐやめなさい。その金と時間で、社員と飲みに行った方が、よっぽど有意義ですから。

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