【警告】そのPM、現場を殺します。進捗管理という名の“管理ごっこ”がチームを崩壊させる5つの兆候

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【この記事はこんな方に向けて書いています】

  • プロジェクトマネージャー(PM)の存在が、逆に仕事のボトルネックになっていると感じる現場メンバーの方
  • 進捗報告や意味のない会議に追われ、本来の業務に集中できず疲弊している方
  • PMに任命されたはいいが、具体的に何をすべきか分からず、「管理すること」が目的化してしまっている方
  • 教科書通りの「管理ごっこ」から脱却し、本当に価値のあるプロジェクトマネジメントとは何かを知りたい全ての方

「プロジェクトマネジメント」― この言葉に、あなたはどういう印象を抱きますか?複雑なプロジェクトを成功に導く、華麗で知的な仕事。PMBOKを片手に、ガントチャートを駆使して全体を俯瞰し、リスクを予見して先手を打つ。そんな理想像を思い浮かべるかもしれません。

しかし、現実はどうでしょう。あなたの現場を、もう一度よく見渡してください。PMと名乗る人物の存在そのものが、チームの創造性を奪い、士気を下げ、静かにプロジェクトをデスマーチへと誘っていませんか?

はっきりと言いましょう。多くのプロジェクトは、「プロジェクトマネジメントの欠如」によってではなく、「間違ったプロジェクトマネジメントの横行」によって失敗します。それは、教科書をなぞるだけの「偽物のPM」が繰り広げる、自己満足の「管理ごっこ」に他なりません。この記事では、あなたのチームを崩壊させる“有害なPM”に共通する5つの危険な兆候を、一切の容赦なく暴き出します。もし、あなたのPMに一つでも当てはまるなら…それは、プロジェクトにとっての非常事態宣言です。

兆候1:進捗率90%という“幻想”に踊るExcel職人

「このタスク、進捗率何パーセント?」

あなたのPMがこの言葉を口にした瞬間、危険信号が灯ります。特に、ソフトウェア開発のような、成果物が見えにくい知的労働において、「進捗率」ほど無意味で、現場を惑わせる指標はありません。

考えてみてください。コーディングの8割が終わっていても、残りの2割で解決困難なバグが見つかり、そこから数週間停滞する。設計書の9割が書けていても、最後の1割で致命的な矛盾が発覚し、全てが手戻りになる。現場では日常茶飯事です。いわゆる「進捗率90%の罠」と呼ばれる現象であり、この数字が何の保証にもならないことを、現場の人間は肌で知っています。

にもかかわらず、偽物のPMは、この数字に異常なまでに固執します。彼らは、メンバーから聞き取った進捗率をWBS(作業分解構成図)やガントチャートにせっせと入力し、グラフを綺麗に色分けすることに悦びを見出す「Excel職人」と化します。そして、そのグラフが順調な右肩上がりを描いているのを見て、「プロジェクトは順調だ」と偽りの安心感に浸るのです。

Standish Groupが発表しているCHAOSレポートによれば、ITプロジェクトが完全に成功する割合は、長年にわたり30%台で推移しています。多くのプロジェクトが失敗する根源の一つが、こうした「数字の罠」による問題発見の遅れなのです。

本物のPMは、数字の裏に隠された「質的な現実」に目を向けます。「進捗率」などという曖昧なものではなく、「今、何に一番困っているか?」「想定外の事態は起きていないか?」「このまま進めて、本当に品質は担保できるか?」といった、具体的な問いを投げかけます。彼らの仕事は、グラフを美しく見せることではなく、チームの前進を阻む障害物を、一つひとつ丁寧に取り除いていくことなのです。

兆候2:“伝書鳩”と“課題管理表の番人”に成り下がる

プロジェクトには問題がつきものです。その問題を管理するために、「課題管理表」は確かに有効なツールの一つでしょう。しかし、偽物のPMは、このツールを使うこと自体を仕事だと勘違いしています。

メンバー:「〇〇の仕様について、営業部と認識がズレていて進められません」 偽物のPM:「分かった。課題管理表に書いておくね」

…以上。これが、あなたの現場で起きていることではありませんか?

右から来た情報を左のセルに転記するだけの「伝書鳩」。課題管理表のステータスを「起票」から「対応中」に変えるだけの「番人」。これが、彼らの提供する価値の全てです。課題は「記録」されただけで、解決に向けて1ミリも前進していません。そして、その課題は塩漬けにされ、数週間後に「なぜ、まだ解決していないんだ!」と騒ぎ出すのです。

本物のPMは、課題を聞いた瞬間に動きます。上記の例であれば、即座に営業部の担当者とエンジニアを会議室に呼び出し、あるいはオンラインミーティングを開始します。「認識がズレている点はどこか」「本来の目的は何か」「どうすれば両者が納得する着地点を見つけられるか」。その場で議論をファシリテートし、対立を解消し、最終的には「今日の17時までに、この件は〇〇さんが最終決定し、関係者全員に共有する」という、具体的で、責任者が明確なネクストアクションを引き出すまで、絶対にその場を離れません。

プロジェクトマネジメントとは、「管理(Manage)」ではありません。「推進(Drive)」です。課題管理表を最新化することに給料が支払われているのではなく、課題そのものを撲滅することにこそ、PMの存在価値があるのです。

兆候3:チームを守らず、上層部の“イエスマン”と化す

「クライアントから、急な仕様変更の依頼が来た。明日までに対応してくれ」 「役員から、納期を1週間早めろと指示があった。なんとかしろ」

プロジェクトにおける外部からの無茶な要求。こんな時こそ、PMの腕の見せ所です。しかし、有害なPMは、チームを守る「盾」になるどころか、上層部の理不尽な要求をそのまま現場に投げつける「拡声器」と化します。

彼らは、経営層やクライアントに反論し、自分の評価が下がることを極度に恐れています。そのため、要求の背景や妥当性を吟味することなく、「はい、分かりました」と安請け合いし、そのしわ寄せの全てを現場に押し付けるのです。

その結果、現場は疲弊します。度重なる手戻りでモチベーションは下がり、深夜残業と休日出勤が常態化し、品質は低下の一途をたどる。そしてチームは、自分たちを守ってくれないPMへの信頼を完全に失い、内側から崩壊していきます。

PMI(プロジェクトマネジメント協会)の調査でも、プロジェクトが失敗する主要な原因として、「要求仕様の明確化の失敗」や「不十分な変更管理」が常に上位に挙げられています。

本物のPMは、決して単なるイエスマンではありません。彼らは、あらゆる要求に対して、その影響を冷静に分析し、トレードオフを明確にして交渉します。「その仕様変更を受け入れるのであれば、追加で〇〇円の予算と2週間の期間が必要です。それが不可能であれば、当初予定していた△△の機能をスコープから外すことになりますが、どちらを選択されますか?」と。

彼らは、無謀な要求からチームを守る防波堤であり、プロジェクトを健全な状態に保つための交渉人なのです。上司の顔色を伺うことしかできない人物に、PMを名乗る資格はありません。

兆候4:プロセスへの固執。思考停止した“ルール原理主義者”

PMBOK、スクラム、XP…世の中には、プロジェクトを成功に導くための、様々なフレームワークや方法論が存在します。これらは先人たちの知恵の結晶であり、強力な武器となり得ます。しかし、偽物のPMは、この武器の使い方を根本的に誤解しています。彼らは、フレームワークの「型」を守ること自体を目的にしてしまうのです。

「スクラムガイドに書いてあるから、デイリースクラムは15分厳守だ。たとえ重要な議論が途中でも打ち切れ」 「PMBOKのプロセスに従って、全てのドキュメントを完璧に作成しろ。一つでも欠けていたら先に進むな」

彼らは、ルールに準拠することに安心感を覚える「ルール原理主義者」です。なぜそのルールが存在するのか、そのルールは今の自分たちのチームにとって本当に有益なのか、という本質的な問いを放棄し、思考停止に陥っています。

しかし、思い出してください。例えば、アジャイルソフトウェア開発宣言の第一の価値は、「プロセスやツールよりも個人と対話を」です。あらゆるルールやプロセスは、チームのパフォーマンスを最大化するために存在する「手段」であって、「目的」ではありません。もし、そのルールがチームの足枷になっているのなら、躊躇なくそのルールを疑い、チームで話し合い、より良い方法に改善していくべきです。

本物のPMは、方法論の奴隷にはなりません。彼らは、チームの状況やプロジェクトの特性を深く理解し、必要であれば大胆にプロセスをカスタマイズします。彼らにとって重要なのは、「正しいプロセス」を実践することではなく、「正しい成果」を生み出すことなのです。

兆候5:失敗を恐れ、全ての権限を抱え込む“マイクロマネージャー”

最もタチが悪く、そして最も現場を破壊するのが、このマイクロマネージャー型のPMです。彼らは、チームのメンバーを心の底から信用していません。そのため、あらゆる権限を自分のもとに集め、全ての意思決定を自分で行い、メンバーの仕事のやり方にまで、いちいち細かく口を挟みます。

「そのコードの書き方は非効率だ。俺の言う通りに直せ」 「そのデザイン、ボタンの色は赤じゃなくて青にしてくれ。理由は聞くな」

この有害な管理スタイルは、プロジェクトに二つの致命的なダメージを与えます。

第一に、PM自身がプロジェクト全体の「ボトルネック」になります。全ての判断をPM一人に仰がなければならないため、開発のスピードは劇的に低下します。 第二に、より深刻なのが、チームメンバーの「主体性」と「モチベーション」を完全に破壊することです。何をしても否定され、自分で考える機会を奪われたメンバーは、やがて指示待ちのロボットと化します。リスクを冒して新しい挑戦をすることも、より良い方法を提案することもなくなります。

Googleが生産性の高いチームの秘訣を解き明かした「プロジェクト・アリストテレス」で、最も重要な要素だと結論づけられたのが「心理的安全性」でした。チームの中で、誰もが安心して自分の意見を言え、失敗を恐れずに挑戦できる環境。マイクロマネジメントは、この心理的安全性を根こそぎ破壊する最悪の行為なのです。

本物のPMは、「管理」しようとはしません。彼らは、明確なビジョンとゴールをチームと共有した上で、それを達成するための「How(どうやるか)」は、現場のプロフェッショナルであるメンバーに完全に任せます。彼らは支配者(Controller)ではなく、チームに奉仕するサーバント・リーダー(Servant Leader)なのです。

あなたの現場を蝕む病の正体が見えてきたでしょうか。真のプロジェクトマネジメントとは、管理表を埋める機械的な作業ではありません。それは、プロジェクトの目的という北極星を常に見据え、チームという船の前進を阻む流氷を砕き、乗組員たちが最高のパフォーマンスを発揮できるよう鼓舞し続ける、極めて人間的で、創造的な航海術なのです。もし、あなたのPMが羅針盤も持たずに、ただ船のペンキの色に口を出しているだけなら、今すぐその座から引きずり下ろすべきです。手遅れになる前に。

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